「オデン(おでん/오뎅)」の版間の差分

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== 概要 ==
 
== 概要 ==
 
[[ファイル:17110302.JPG|thumb|300px|ワタリガニでダシを取っている屋台のオデン]]
 
[[ファイル:17110302.JPG|thumb|300px|ワタリガニでダシを取っている屋台のオデン]]
オデンは魚肉練り製品(揚げかまぼこ)を串に刺し、煮干し、昆布、大根などを煮込んだスープで煮込んで作る。日本料理のおでんにルーツがあるが、韓国では主に屋台料理として発達し、[[キムパプ(海苔巻き/김밥)]]、[[トッポッキ(餅炒め/떡볶이)]]などと並んで、小腹を満たすための軽食として定着している。日本料理のおでんに比べると具の種類が少なく、練り製品を主として、稀に餅やコンニャクが同じく串に刺した状態で加わる程度である。練り製品としてはきりたんぽのような棒状に成形したもの、薄い板状に仕上げたものの2種類が大半であり、板状のものはジグザグに折り畳んで串に刺す。大根、卵、はんぺん、ちくわといった日本で定番の具はまず見かけない。南部の地域を中心にワタリガニでダシを取る屋台もある。
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オデンは魚肉練り製品(揚げかまぼこ)を串に刺し、煮干し、昆布、大根などを煮込んだダシで煮込んで作る。日本料理のおでんにルーツがあるが、韓国では主に屋台料理として発達し、[[キムパプ(海苔巻き/김밥)]]、[[トッポッキ(餅炒め/떡볶이)]]などと並んで、小腹を満たすための軽食として定着している。日本料理のおでんに比べると具の種類が少なく、練り製品を主として、稀に餅([[가래떡]])やコンニャク([[곤약]])が同じく串に刺した状態で加わる程度である。練り製品としてはきりたんぽのような棒状に成形したもの、薄い板状に仕上げたものの2種類が大半であり、板状のものはジグザグに折り畳んで串に刺す。大根、卵、はんぺん、ちくわといった日本で定番の具はまず見かけない。南部の地域を中心にワタリガニでダシを取る屋台もある。
  
 
=== 食べ方 ===
 
=== 食べ方 ===
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[[ファイル:17110305.JPG|thumb|300px|霧吹きに入った薬味醤油をオデンに振りかけるところ]]
 
[[ファイル:17110305.JPG|thumb|300px|霧吹きに入った薬味醤油をオデンに振りかけるところ]]
 
:屋台の店頭には薬味醤油([[양념장]])が用意されており、串に刺したオデンをこれにつけて味わう。薬味醤油には刻んだ青唐辛子も入ってピリ辛に仕上げてある。店によっては薬味醤油を刷毛で塗ったり、スプーンでかけたり、霧吹きに入れてシュッと吹きかけるといった方式を採用しているところもある。
 
:屋台の店頭には薬味醤油([[양념장]])が用意されており、串に刺したオデンをこれにつけて味わう。薬味醤油には刻んだ青唐辛子も入ってピリ辛に仕上げてある。店によっては薬味醤油を刷毛で塗ったり、スプーンでかけたり、霧吹きに入れてシュッと吹きかけるといった方式を採用しているところもある。
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=== 具の種類 ===
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*オムク([[어묵]]):魚肉練り製品(揚げかまぼこ)。棒状のものと、薄い板状のが主流。
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*コニャク([[곤약]]):コンニャク
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*カレトク([[가래떡]]):うるち米で作る棒状の餅
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*ユブチュモニ([[유부주머니]]):春雨を入れた巾着
  
 
=== 食材としての利用 ===
 
=== 食材としての利用 ===
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*『朝鮮料理法』(1939年)の記述
 
*『朝鮮料理法』(1939年)の記述
:趙慈鎬(조자호)によって1939年に書かれた『朝鮮料理法(조선요리법)』という書籍には、テグクソン([[태극선]])という料理が掲載されている<ref>[http://archive.hansik.org/contents_list/oldbook/item/contents_hansik/48/22813/ 조선요리법 朝鮮料理法] 、韓食アーカイブ、2017年11月6日閲覧</ref>。テグク(태극)は「太極」、ソン(선)は蒸し物を意味することから、『謏聞事説』に掲載された太極模様の可麻甫串を原型にした料理と考えられている。
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:趙慈鎬(조자호)によって1939年に書かれた『朝鮮料理法(조선요리법)』という書籍には、テグクソン([[태극선]])という料理が掲載されている<ref>[http://archive.hansik.org/contents_list/oldbook/item/contents_hansik/48/22813/ 조선요리법 朝鮮料理法] 、韓食アーカイブ、2017年11月6日閲覧</ref>。テグク(태극)は太極、ソン(선)は蒸し物を意味することから、『謏聞事説』に掲載された太極模様の可麻甫串を原型にした料理と考えられている。
  
 
;生鮮熟片と生鮮紋殊
 
;生鮮熟片と生鮮紋殊
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*東亜日報の記事
 
*東亜日報の記事
 
:1927年9月25日付けの「東亜日報」には、「優良水産製品に補助金を交付」という記事があり、統営郡の優良水産製品として「蒲鉾」があげられている<ref>[http://newslibrary.naver.com/viewer/index.nhn?articleId=1927092500209204010&editNo=1&printCount=1&publishDate=1927-09-25&officeId=00020&pageNo=4&printNo=2539&publishType=00020 優良水產製品에 補助金을交付] 、NAVERニュースライブラリー、2017年10月28日閲覧</ref>。
 
:1927年9月25日付けの「東亜日報」には、「優良水産製品に補助金を交付」という記事があり、統営郡の優良水産製品として「蒲鉾」があげられている<ref>[http://newslibrary.naver.com/viewer/index.nhn?articleId=1927092500209204010&editNo=1&printCount=1&publishDate=1927-09-25&officeId=00020&pageNo=4&printNo=2539&publishType=00020 優良水產製品에 補助金을交付] 、NAVERニュースライブラリー、2017年10月28日閲覧</ref>。
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*釜山日報の記事
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:1928年1月21日付けの紙面には、「麗水の火事 蒲鉾屋から焼き出す」という記事が掲載されており、この時点で現在の[[全羅南道の料理|全羅南道]][[麗水市の料理|麗水市]]にも蒲鉾の製造業者があったとわかる<ref>[http://db.history.go.kr/item/imageViewer.do?levelId=npbs_1928_01_21_x0004_0630 麗水の火事 蒲鉾屋から焼き出す] 、韓国史データベース、2017年11月6日閲覧</ref>。
  
 
;ソウルのコンニャク売り
 
;ソウルのコンニャク売り
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日本統治時代まで魚肉練り製品の製造業者は日本人が多かったが、終戦後は韓国人の経営へと移行した。1953年創業の「サムジンオムク」をはじめ、現在まで営業を続ける老舗メーカーもある。
 
日本統治時代まで魚肉練り製品の製造業者は日本人が多かったが、終戦後は韓国人の経営へと移行した。1953年創業の「サムジンオムク」をはじめ、現在まで営業を続ける老舗メーカーもある。
 
*サムジンオムクの創業
 
*サムジンオムクの創業
:[[釜山市の料理|釜山市]]影島区蓬莱洞に本社を置く「サムジンオムク(삼진어묵)」は、1950年に蓬莱市場にて練り製品の製造を始めた。創業者のパク・ジェドク(박재덕)氏は日本で練り製品(オムク)の技術を学んでおり、市場の露店から事業を始めて、1953年には「サムジン食品」という名前で会社として立ち上げた。現在の韓国に残る練り製品のメーカーとしてはもっとも古い。
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:[[釜山市の料理|釜山市]]影島区蓬莱洞に本社を置く「サムジンオムク(삼진어묵)」は、1950年頃に蓬莱市場にて練り製品の製造を始めた。創業者のパク・ジェドク(박재덕)氏は日本で練り製品(オムク)の技術を学んでおり、市場の露店から事業を始めて、1953年には「サムジン食品」という名前で会社として立ち上げた<ref>[http://www.samjinfood.com/shop/service/company.php 회사소개] 、サムジンオムクウェブサイト、2017年11月6日閲覧</ref>。現在の韓国に残る練り製品のメーカーとしてはもっとも古い。
  
 
=== 1960年代 ===
 
=== 1960年代 ===
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;釜山における日本式オデンの台頭
 
;釜山における日本式オデンの台頭
*マラトンチプの新メニュー
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*「マラトンチプ」の新メニュー
 
:1959年に[[釜山市の料理|釜山市]]釜山鎮区釜田洞で開店した居酒屋「マラトンチプ(마라톤집)」は、店名でもありマラソンを意味する「マラトン(海鮮チヂミ、마라톤)」と、再建を意味する「チェゴン(海鮮野菜炒め、재건)」というユニークなネーミングの料理を創業からの看板メニューとしている。現在の場所に移転した1963年より大皿料理のオデンを新メニューとして追加し、こちらも現在まで人気料理のひとつとして支持を受けている<ref>[http://news20.busan.com/controller/newsController.jsp?newsId=20110412000235 [부산의 老鋪] ⑥ 마라톤] 、釜山日報、2017年10月29日閲覧</ref>。
 
:1959年に[[釜山市の料理|釜山市]]釜山鎮区釜田洞で開店した居酒屋「マラトンチプ(마라톤집)」は、店名でもありマラソンを意味する「マラトン(海鮮チヂミ、마라톤)」と、再建を意味する「チェゴン(海鮮野菜炒め、재건)」というユニークなネーミングの料理を創業からの看板メニューとしている。現在の場所に移転した1963年より大皿料理のオデンを新メニューとして追加し、こちらも現在まで人気料理のひとつとして支持を受けている<ref>[http://news20.busan.com/controller/newsController.jsp?newsId=20110412000235 [부산의 老鋪] ⑥ 마라톤] 、釜山日報、2017年10月29日閲覧</ref>。
  
*白光商会の開店
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*「白光商会」の開店
 
:[[釜山市の料理|釜山市]]中区南浦洞に位置する居酒屋「白光商会(백광상회)」は大皿料理のオデンを看板料理としている。看板には「60年伝統」の文字があり、1950~60年代の開店と推定される。
 
:[[釜山市の料理|釜山市]]中区南浦洞に位置する居酒屋「白光商会(백광상회)」は大皿料理のオデンを看板料理としている。看板には「60年伝統」の文字があり、1950~60年代の開店と推定される。
  
*ミョンソンフェッチプの開店
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*「ミョンソンフェッチプ」の開店
:1968年に[[釜山市の料理|釜山市]]東区水晶洞にて、刺身店の「ミョンソンフェッチプ(명성횟집)」が開店した。この店ではオデンを自慢料理にしており、オデンタン(おでん鍋/오뎅탕)や、オデンペッパン(おでん定食、오뎅백반)が人気を集めている。
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:1968年に[[釜山市の料理|釜山市]]東区水晶洞にて、刺身店の「ミョンソンフェッチプ(명성횟집)」が開店した。この店ではオデンを自慢料理にしており、[[オデンタン(おでん鍋/오뎅탕)]]や、オデンペッパン(おでん定食、오뎅백반)が人気を集めている。
  
 
;京畿道での事例
 
;京畿道での事例
*オデン食堂の開店
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*「オデン食堂」の開店
 
:1960年に[[京畿道の料理|京畿道]][[議政府市の料理|議政府市]]議政府洞で開店した「オデン食堂(오뎅식당)」は、オデンを販売する屋台としてスタートした。現在は韓国でも元祖格の[[プデチゲ(ソーセージ鍋/부대찌개)]]専門店として有名だが、店名は創業当初のまま「オデン食堂」としている。
 
:1960年に[[京畿道の料理|京畿道]][[議政府市の料理|議政府市]]議政府洞で開店した「オデン食堂(오뎅식당)」は、オデンを販売する屋台としてスタートした。現在は韓国でも元祖格の[[プデチゲ(ソーセージ鍋/부대찌개)]]専門店として有名だが、店名は創業当初のまま「オデン食堂」としている。
  
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=== 2010年代 ===
 
=== 2010年代 ===
 
[[ファイル:17110310.JPG|thumb|300px|オデンコロッケ]]
 
[[ファイル:17110310.JPG|thumb|300px|オデンコロッケ]]
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*ベーカリー型店舗の登場
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:2013年から2014年にかけて、魚肉練り製品をベーカリーのように陳列、販売するスタイルの店が登場して話題となった。1953年創業の「サムジンオムク(삼진어묵)」は、2013年12月に本店を「サムジンオムク体験・歴史館(삼진어묵 체험 역사관)」としてリニューアル<ref>[http://news20.busan.com/controller/newsController.jsp?newsId=20131219000036 [브리핑] 삼진식품 '부산수제어묵체험장·역사관' 개관] 、釜山日報、2017年11月6日閲覧</ref>。自社の製品を店内で販売するとともに、体験プログラムの実施や、オデンの歴史を紹介するスペースを備えた。1963年創業の「古来思オムク(고래사어묵)」は、2014年5月に釜山市釜山鎮区の釜田市場(부전시장)内に販売店をオープンしている<ref>[http://news20.busan.com/controller/newsController.jsp?newsId=20140523000152 [나의 길 나의 삶] 어묵 발명 20년 '미스터 어묵' 김형광 대표 、釜山日報、2017年11月6日閲覧</ref>。
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*オデンコロッケ(オムクコロッケ)のブーム
 
*オデンコロッケ(オムクコロッケ)のブーム
:[[釜山市の料理|釜山市]]影島区蓬莱洞に本社を置く「サムジンオムク(삼진어묵)」は、練り製品の中に具を詰めて揚げた「オムクコロッケ(어묵고로케)」を2014年より発売した。韓国におけるコロッケ([[고로케]])とは日本の芋コロッケなどとは異なり、パン生地に具を詰めて揚げた揚げパンの一種を意味する。韓国では2012年末からコロッケのブームがあり、それがオムクコロッケの背景にもなっている。
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:[[釜山市の料理|釜山市]]影島区蓬莱洞に本社を置く「サムジンオムク(삼진어묵)」は、練り製品の中に具を詰めて揚げた「オムクコロッケ(어묵고로케)」を2013年12月より発売した。韓国におけるコロッケ([[고로케]])とは日本の芋コロッケなどとは異なり、パン生地に具を詰めて揚げた揚げパンの一種を意味する。韓国では2012年末からコロッケのブームがあり、それがオムクコロッケの背景にもなっている。
  
 
== 種類 ==
 
== 種類 ==
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== エピソード ==
 
== エピソード ==
*韓食ペディアの執筆者である八田靖史は留学時代にオデンウドンを食べ、串に刺さったオデンがウドンの具として載って出てくるのを見て大きな衝撃を受けた。また、韓国人が魚の練り製品をオデンと呼ぶことにも違和感を覚え、留学後の2001年3月21日より書き始めたメールマガジン「コリアうめーや!!」の創刊号にて激しくオデンウドンを糾弾している<ref>[http://www.kansyoku-life.com/2000/02/1807.html コリアうめーや!!創刊号] 、韓国伝統知識ポータル、2017年10月28日閲覧</ref>。
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*韓食ペディアの執筆者である八田靖史は留学時代にオデンウドンを食べ、串に刺さったオデンがウドンの具として載って出てくるのを見て大きな衝撃を受けた。また、韓国人が魚の練り製品をオデンと呼ぶことにも違和感を覚え、留学後の2001年3月21日より書き始めたメールマガジン「コリアうめーや!!」の創刊号にて激しくオデンウドンを糾弾している<ref>[http://www.kansyoku-life.com/2000/02/1807.html コリアうめーや!!創刊号] 、韓食生活、2017年10月28日閲覧</ref>。
  
 
== 地域 ==
 
== 地域 ==
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== 外部リンク ==
 
== 外部リンク ==
*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活]
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;制作者関連サイト
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*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
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*[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール)
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*[https://itunes.apple.com/us/app/%E9%9F%93%E5%9B%BD%E8%AA%9E%E9%A3%9F%E3%81%AE%E5%A4%A7%E8%BE%9E%E5%85%B8/id1220010846?l=ja&ls=1&mt=8 韓国語食の大辞典アプリ版](八田靖史制作の韓国料理専門辞典)
  
 
== 関連項目 ==
 
== 関連項目 ==
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*[[オデンタン(おでん鍋/오뎅탕)]]
 
*[[オデンタン(おでん鍋/오뎅탕)]]
 
*[[ウドン(うどん/우동)]]
 
*[[ウドン(うどん/우동)]]
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*[[釜山市の料理]]
 
[[Category:韓食ペディア]]
 
[[Category:韓食ペディア]]
[[Category:屋台料理]]
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[[Category:鍋・スープ料理の一覧]]
[[Category:外国料理]]
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[[Category:魚介料理の一覧]]
[[Category:日本料理]]
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[[Category:屋台料理の一覧]]
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[[Category:外国料理の一覧]]
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[[Category:日本料理の一覧]]
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[[Category:釜山市の料理]]
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