「大邱市の料理」の版間の差分

 
(同じ利用者による、間の14版が非表示)
1行目: 1行目:
 
{{Notice}}
 
{{Notice}}
 +
[[ファイル:17081401.JPG|400px|thumb|大邱薬令市の西門]]
 
'''大邱市'''(テグシ、대구시)は韓国の中東部に位置する地域。本ページでは大邱市の料理、特産品について解説する。
 
'''大邱市'''(テグシ、대구시)は韓国の中東部に位置する地域。本ページでは大邱市の料理、特産品について解説する。
  
[[ファイル:17081401.JPG|thumb|400px|大邱薬令市の西門]]
+
== 地域概要 ==
 +
[[ファイル:17081412.JPG|300px|thumb|大邱国際空港]]
 +
大邱市(テグシ、대구시)は韓国の中東部に位置する広域市(韓国に6ヶ所ある上級地方自治体)。北部、東部、西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]と接し、南部は[[慶尚南道の料理|慶尚南道]]と接する。人口は236万0493人(2025年3月)で、韓国の市としては[[ソウル市の料理|ソウル市]]、[[釜山市の料理|釜山市]]、[[仁川市の料理|仁川市]]に次いで4番目に多い<ref>[https://jumin.mois.go.kr/ 행정동별 주민등록 인구 및 세대현황] 、行政安全部ウェブサイト、2023年8月25日閲覧</ref>。面積は1498平方キロ(2023年7月)で、特別市、広域市の中ではもっとも広い<ref>[https://www.hani.co.kr/arti/area/yeongnam/1070787.html 군위군, 내년 7월부터 대구시로 편입…법안 본회의 통과] 、ハンギョレ新聞(2022年12月8日記事)、2023年8月25日閲覧</ref>。
  
== 地域概要 ==
+
1981年に直轄市(その後、1995年に広域市)として独立するまでは[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]に属し、は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]庁も2016年2月までは大邱市に置かれていた(現在は[[安東市の料理|安東市]]に位置)。慶尚道全体の中間的な位置にあって交通の利便性に富むことから、1601年に慶尚監営(当時の道庁)が置かれるなど、地域の要衝として発展した。地理的には太白山脈(テベクサンメク、태백산맥)、小白山脈(ソベクサンメク、소백산맥)に東西を挟まれた位置にあり、北部に八公山(パルゴンサン、팔공산)、南部に最頂山(チェジョンサン、최정산)、琵瑟山(ピスルサン、비슬산)がそびえる盆地型の地形である。一帯を大邱盆地(テグブンジ、대구분지)とも呼び、大邱市の西部には洛東江(ナクトンガン、낙동강)が北から南へと流れる。
[[ファイル:17081412.JPG|thumb|300px|大邱国際空港]]
+
 
大邱市(テグシ、대구시)は韓国の中東部に位置する広域市(韓国に6ヶ所ある上級地方自治体)。北部、東部、西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]と接し、南部は[[慶尚南道の料理|慶尚南道]]と接する。人口は237万9086人(2023年7月)で、韓国の市としては[[ソウル市の料理|ソウル市]]、[[釜山市の料理|釜山市]][[仁川市の料理|仁川市]]に次いで4番目に多い<ref>[https://jumin.mois.go.kr/ 주민등록 인구통계] 、行政安全部ウェブサイト、2023年8月25日閲覧</ref>。面積は1498平方キロ(2023年7月)で、特別市、広域市の中ではもっとも広い<ref>[https://www.hani.co.kr/arti/area/yeongnam/1070787.html 군위군, 내년 7월부터 대구시로 편입…법안 본회의 통과] 、ハンギョレ新聞(2022年12月8日記事)、2023年8月25日閲覧</ref>。1981年に直轄市(その後、1995年に広域市)として独立するまでは[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]に属し、は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]庁も2016年2月までは大邱市に置かれていた(現在は[[安東市の料理|安東市]]に位置)。慶尚道全体の中間的な位置にあって交通の利便性に富むことから、1601年に慶尚監営(当時の道庁)が置かれるなど、地域の要衝として発展した。地理的には太白山脈(テベクサンメク、태백산맥)、小白山脈(ソベクサンメク、소백산맥)に東西を挟まれた位置にあり、北部に八公山(パルゴンサン、팔공산)、南部に最頂山(チェジョンサン、최정산)、琵瑟山(ピスルサン、비슬산)がそびえる盆地型の地形である。一帯を大邱盆地(テグブンジ、대구분지)とも呼び、大邱市の西部には洛東江(ナクトンガン、낙동강)が北から南へと流れる。20世紀初頭からは綿花の栽培が盛んであったことから近代的な繊維産業で栄え、1905年に京釜線が全線開通したことで[[ソウル市の料理|ソウル市]]、[[釜山市の料理|釜山市]]と結ばれると、経済や物流の中心としても大きな役割を担うに至った。人口こそ1999年7月以降、[[仁川市の料理|仁川市]]へ抜かれて4番手ではあるものの、大邱市を指して「韓国第3の都市」と表現することは珍しくない。主要な観光地には、韓方市場の大邱薬令市(대구약령시)、繊維製品の販売で大きく発展した西門市場(서문시장)、20世紀初頭の歴史を現代に残す大邱近代通り(대구근대골목)、代表的な繁華街の東城路(동성로)、北部にそびえる八公山などがある。ソウルから大邱市までのアクセスは、ソウル駅から高速鉄道のKTXで東大邱駅まで1時間40分前後。ソウル高速バスターミナル、東ソウル総合ターミナルから高速バスで東大邱まで3時間30分程度。大邱国際空港から中心部の東大邱駅までは4kmほどの距離と近く、また東大邱駅に隣接する東大邱複合乗換センター(동대구 복합환승센터)からは慶尚道地域を中心とした各地域への市外バスが集まるため、地方都市への新たな玄関口といった役割も注目されている。
+
20世紀初頭からは綿花の栽培が盛んであったことから近代的な繊維産業で栄え、1905年に京釜線が全線開通したことで[[ソウル市の料理|ソウル市]]、[[釜山市の料理|釜山市]]と結ばれると、経済や物流の中心としても大きな役割を担うに至った。人口こそ1999年7月以降、[[仁川市の料理|仁川市]]へ抜かれて4番手ではあるものの、大邱市を指して「韓国第3の都市」と表現することは珍しくない。
 +
 
 +
主要な観光地には、韓方市場の大邱薬令市(テグヤンニョンシ、대구약령시)、繊維製品の販売で大きく発展した西門市場(ソムンシジャン、서문시장)、20世紀初頭の歴史を現代に残す大邱近代通り(テグ クンデコルモク、대구근대골목)、代表的な繁華街の東城路(トンソンノ、동성로)、北部にそびえる八公山などがある。
 +
 
 +
[[ソウル市の料理|ソウル市]]から大邱市までのアクセスは、ソウル駅から高速鉄道のKTXで東大邱駅まで1時間40分前後。ソウル高速バスターミナル、東ソウル総合ターミナルから高速バスで東大邱まで3時間30分程度。大邱国際空港から中心部の東大邱駅までは4kmほどと近く、また東大邱駅に隣接する東大邱複合乗換センター(동대구 복합환승센터)からは慶尚道地域を中心とした各地域への市外バスが集まるため、地方都市への玄関口としての機能も備える。
  
 
*大邱薬令市
 
*大邱薬令市
:大邱薬令市(テグヤンニョンシ、대구약령시)は大邱市中区南城路一帯に位置する韓方市場。ヤクチョンコルモク(薬廛通り、약전골목)とも呼ぶ。市場の開設は朝鮮時代中期の1658年頃で、全国から集められた韓方材を効率的に流通させるため、春と秋に1ヶ月ずつ大邱邑城(대구읍성)の北門近くに市を立てた。その後、1908年に大邱邑城の城壁が撤去されると現在の南城路一帯へと中心が移り、全長715mの道路に沿ってたくさんの韓方材店や韓医院が集まるようになった<ref>[http://www.herbfestival.org/ 약령시소개] 、大邱薬令市韓方文化祭りウェブサイト、2017年8月8日閲覧</ref>。一帯には韓方茶を提供するカフェや、[[サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)]]、ハンバンペクスク(鶏の韓方水炊き、[[한방백숙]])といった韓方材を使った料理を提供する飲食店もある。
+
:大邱薬令市(テグヤンニョンシ、대구약령시)は中区南城路(チュング ナムソンノ、중구 남성로)一帯に位置する韓方市場。ヤクチョンコルモク(薬廛通り、약전골목)とも呼ぶ。市場の開設は朝鮮時代中期の1658年頃で、全国から集められた韓方材を効率的に流通させるため、春と秋に1ヶ月ずつ大邱邑城(テグウプソン、대구읍성)の北門近くに市を立てた。その後、1908年に大邱邑城の城壁が撤去されると現在の南城路一帯へと中心が移り、全長715mの道路に沿ってたくさんの韓方材店や韓医院が集まるようになった<ref>[http://www.herbfestival.org/ 약령시소개] 、大邱薬令市韓方文化祭りウェブサイト、2017年8月8日閲覧</ref>。一帯には韓方茶を提供するカフェや、[[サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)]][[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)|ハンバンペクスク(丸鶏の韓方煮/한방백숙)]]といった韓方材を使った料理を提供する飲食店もある。
  
 
*西門市場
 
*西門市場
[[ファイル:17081402.JPG|thumb|300px|西門市場]]
+
[[ファイル:17081402.JPG|300px|thumb|西門市場]]
:西門市場(ソムンシジャン、서문시장)は中区大新洞に位置する常設市場。1601年に慶尚道の監営が大邱に置かれると人々の往来が盛んになり、1669年頃にそれまで大邱邑城の北門にあった機能を西門の外に移すと、これが西門市場の前身となった<ref name="market">[http://terms.naver.com/entry.nhn?docId=1285441&cid=40942&categoryId=32164 서문시장] 、斗山百科、2017年8月14日閲覧</ref>。その規模は慶尚道地域最大であり、朝鮮時代には平安道の平壌場(평양장)、忠清道の江景場(강경장)と並んで、大邱場(대구장)は朝鮮3大市場と称された<ref name="market"></ref>。1924年に朝鮮総督府が編纂した『朝鮮の市場』という書籍にも「古来平壌、大邱、江景の市場は朝鮮の三大市場と称せられ」との記述があり、同書内ではこれら3ヶ所の市場が主要市場として章立てて紹介されている<ref>[http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/983970/91?viewMode= 朝鮮の市場] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号91、P129)、2017年10月27日閲覧</ref>。その後、1920年代に入って市街地が拡大したことで現在の中区大新洞へと再度移り、1922年に公設市場としての許可を受けた。綿花の栽培が盛んだった大邱では繊維産業が栄えたため、西門市場においても衣類、寝具などの扱いが多く、現在もこれらの店が多く営業している。また、後述するように西門市場は麺([[국수]])の生産でも中心的な役割を担い、現在も市場内には[[チャンチグクス(にゅうめん/잔치국수)]]や、[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)]]といった麺料理を提供する屋台、飲食店が多い([[大邱市の料理#麺(국수)|代表的な特産品/麺(국수)]]参照)。2016年6月には夜市場が始まり、大勢の観光客で賑わっている<ref>[http://www.nightseomun.com/html/base.php?url=html_04 야시장소개] 、西門市場夜市場ウェブサイト、2017年8月14日閲覧</ref>。
+
:西門市場(ソムンシジャン、서문시장)は、中区大新洞(チュング テシンドン、중구 대신동)に位置する常設市場。1601年に慶尚道の監営が置かれると人々の往来が盛んになり、1669年頃にそれまで大邱邑城の北門にあった機能を西門の外に移すと、これが西門市場の前身となった<ref name="market">[http://terms.naver.com/entry.nhn?docId=1285441&cid=40942&categoryId=32164 서문시장] 、斗山百科、2017年8月14日閲覧</ref>。その規模は慶尚道地域最大であり、朝鮮時代には平安道の平壌場(평양장)、忠清道の江景場(강경장)と並んで、大邱場(대구장)は朝鮮3大市場と称された<ref name="market"></ref>。1924年に朝鮮総督府が編纂した書籍『朝鮮の市場』には「古来平壌、大邱、江景の市場は朝鮮の三大市場と称せられ」との記述があり、同書内ではこれら3ヶ所の市場が主要市場として章立てて紹介されている<ref>[http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/983970/91?viewMode= 朝鮮の市場] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号91、P129)、2017年10月27日閲覧</ref>。その後、1920年代に入って市街地が拡大したことで現在の中区大新洞へと再度移り、1922年に公設市場としての許可を受けた。綿花の栽培が盛んだった大邱市では繊維産業が栄えたため、西門市場においても衣類、寝具などの扱いが多く、現在もこれらの店が多く営業している。また、後述するように西門市場は麺([[국수]])の生産でも中心的な役割を担い、現在も市場内には[[チャンチグクス(にゅうめん/잔치국수)]]や、[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)]]といった麺料理を提供する屋台、飲食店が多い([[大邱市の料理#麺(국수)|代表的な特産品/麺(국수)]]参照)。2016年6月には夜市場が始まり、大勢の観光客で賑わっている<ref>[http://www.nightseomun.com/html/base.php?url=html_04 야시장소개] 、西門市場夜市場ウェブサイト、2017年8月14日閲覧</ref>。
  
 
=== 達城郡の料理 ===
 
=== 達城郡の料理 ===
25行目: 32行目:
  
 
*牛市場と牛肉料理
 
*牛市場と牛肉料理
:近代に入って大邱は牛市場が栄えた。1910年に当時の統監府が出版した『大日本帝国朝鮮写真帖 : 日韓併合紀念』には朝鮮半島全土のさまざまな写真が収録されているが、その中で大邱を紹介するものは「大邱市場」「大邱牛市場」の2点である。大邱牛市場については説明書きもあり、「韓国有数の牛市場にして毎月例市を開きて盛に畜牛の売買を行ふ。牛は韓国名産の一なり。体躯偉大なるを以て其名あり」(原文に句点を追加、漢字は新字に変更)と記述されている<ref>[http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/766880/93?viewMode= 大日本帝国朝鮮写真帖 : 日韓併合紀念] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号93)、2017年8月14日閲覧</ref>。また、1924年に朝鮮総督府が編纂した『朝鮮の市場』では、1年に2万頭以上を扱う最大規模の畜産市場を9ヶ所と記述しており、そのひとつが大邱の牛市場である(9ヶ所のうち6ヶ所は現在の北朝鮮にあり、韓国は大邱のほか水原と釜山が2万頭以上となっている)<ref>[http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/983970/115?viewMode= 朝鮮の市場] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号115)、2017年10月27日閲覧</ref>。現在も隣接する[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]は韓牛([[한우]])の飼育頭数が全国1位であり(2018年7~9月期)<ref>[http://kosis.kr/statHtml/statHtml.do?orgId=101&tblId=DT_1EO200 축종별 시도별 가구수 및 마리수] 、統計庁「家畜動向調査」、2018年10月19日閲覧</ref>、後述する大邱市の代表的な料理にも牛肉や、牛の内臓を使ったものが多くある([[大邱市の料理#代表的な料理|代表的な料理]]参照)。
+
:近代に入って大邱市は牛市場が栄えた。1910年に当時の統監府が出版した『大日本帝国朝鮮写真帖 : 日韓併合紀念』には朝鮮半島全土のさまざまな写真が収録されているが、その中で大邱市を紹介するものは「大邱市場」「大邱牛市場」の2点である。大邱牛市場については説明書きもあり、「韓国有数の牛市場にして毎月例市を開きて盛に畜牛の売買を行ふ。牛は韓国名産の一なり。体躯偉大なるを以て其名あり」(原文に句点を追加、漢字は新字に変更)と記述されている<ref>[http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/766880/93?viewMode= 大日本帝国朝鮮写真帖 : 日韓併合紀念] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号93)、2017年8月14日閲覧</ref>。また、1924年に朝鮮総督府が編纂した『朝鮮の市場』では、1年に2万頭以上を扱う最大規模の畜産市場を9ヶ所と記述しており、そのひとつが大邱市の牛市場である(9ヶ所のうち6ヶ所は現在の朝鮮民主主義人民共和国にあり、韓国は大邱市のほか[[水原市の料理|水原市]]と[[釜山市の料理|釜山市]]が2万頭以上となっている)<ref>[http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/983970/115?viewMode= 朝鮮の市場] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号115)、2017年10月27日閲覧</ref>。現在も隣接する[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]は韓牛([[한우]])の飼育頭数が全国1位であり(2018年7~9月期)<ref>[http://kosis.kr/statHtml/statHtml.do?orgId=101&tblId=DT_1EO200 축종별 시도별 가구수 및 마리수] 、統計庁「家畜動向調査」、2018年10月19日閲覧</ref>、後述する大邱市の代表的な料理にも牛肉や、牛の内臓を使ったものが多くある([[大邱市の料理#代表的な料理|代表的な料理]]参照)。
  
*華僑と中華料理
+
*華僑と中国料理
:1905年に京釜線が開通すると大邱には大勢の外国人が居住を始めた。中国人も多く含まれており、現在も中区の鍾路(チョンノ、종로)地区には小規模ながらもチャイナタウンがあって、華僑協会、華僑小学校、老舗の中華料理店などが点在する。こうした背景から大邱では中華料理の人気が高く、1970年代にヤキウドン(辛口の海鮮焼きうどん、[[야끼우동]])という新しい中華料理が生まれて広まったり([[大邱市の料理#ヤキウドン(야끼우동)|代表的な料理/ヤキウドン(야끼우동)]]参照)、チンギョス(蒸し餃子、[[찐교스]])、ケランパン(砂糖の入った中国パン、계란빵 ※目玉焼き入りの今川焼きとは別物)といった、他地域では聞き慣れないメニューも存在している。韓国のインターネット上で話題になった全国5大チャンポンの一角、「チヌン飯店(진흥반점)」が南区梨泉洞にある。
+
:1905年に京釜線が開通すると大邱には大勢の外国人が居住を始めた。中国人も多く含まれており、現在も中区の鍾路(チョンノ、종로)地区には小規模ながらもチャイナタウンがあって、華僑協会、華僑小学校、老舗の中華料理店などが点在する。こうした背景から大邱市では中国料理の人気が高く、1970年代にヤキウドン(辛口の海鮮焼きうどん、[[야끼우동]])という新たな料理が生まれて広まったほか([[大邱市の料理#ヤキウドン(야끼우동)|代表的な料理/ヤキウドン(야끼우동)]]参照)、チンギョス(蒸し餃子、[[찐교스]])、ケランパン(砂糖の入った中国パン、[[계란빵]] ※目玉焼き入りの今川焼きとは別物)といった、他地域では聞き慣れないメニューも見かける。韓国のインターネット上で話題になった全国5大[[チャンポン(激辛スープの海鮮麺/짬뽕)]]の一角、「チヌン飯店(진흥반점)」が南区梨泉洞(ナムグ イチョンドン、남구 이천동)にある。
  
 
*フランチャイズの本場
 
*フランチャイズの本場
35行目: 42行目:
 
== 代表的な料理 ==
 
== 代表的な料理 ==
 
[[ファイル:23010242.JPG|300px|thumb|ナプチャクマンドゥ]]
 
[[ファイル:23010242.JPG|300px|thumb|ナプチャクマンドゥ]]
大邱地域を代表する料理は「大邱10味(대구십미)」として選定されている。2006年に大邱市が専門家らの意見を総合して作成したもので、[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]、マクチャングイ(ギアラ焼き、豚の直腸焼き、[[막창구이]])、ムンティギ(牛刺身、[[뭉티기]])、[[チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비)]]、ノンメギメウンタン(ナマズの辛口鍋、[[논메기매운탕]])、[[ポップルコギ(フグの炒め焼き/복불고기)|ポゴプルコギ(フグの炒め焼き/복어불고기)]]、[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)|ヌルングクス(韓国式の手打ちうどん、누른국수)]]、ムチムフェ(刺身和え、[[무침회]])、ヤキウドン(辛口焼きうどん、[[야끼우동]])、[[ナプチャクマンドゥ(平焼きの餃子/납작만두)]]の10種類である<ref>[http://tour.daegu.go.kr/PageLink.do?ret=home/kor/sleepneat/sleepneat 대구가 자랑하는 10가지 별미] 、大邱観光案内ウェブサイト、2017年8月8日閲覧</ref>。
+
大邱地域を代表する料理は「大邱10味([[대구십미]])」として選定されている。2006年に大邱市が専門家らの意見を総合して作成したもので、[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)]]([[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)|大邱式ユッケジャン]])、[[テジマクチャン(豚の直腸焼き/돼지막창)|マクチャングイ(ギアラ焼き、豚の直腸焼き/막창구이)]][[ユクサシミ(牛刺身/육사시미)|ムンティギ(牛刺身/뭉티기)]][[チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비)]][[メギタン(ナマズ鍋/메기탕)|ノンメギメウンタン(ナマズの辛口鍋/논메기매운탕)]][[ポップルコギ(フグの炒め焼き/복불고기)|ポゴプルコギ(フグの炒め焼き/복어불고기)]]、[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)|ヌルングクス(韓国式の手打ちうどん、누른국수)]][[フェムチム(刺身和え/회무침)|ムチムフェ(刺身和え/무침회)]]、ヤキウドン(辛口焼きうどん、[[야끼우동]])、[[ナプチャクマンドゥ(平焼きの餃子/납작만두)]]の10種類である<ref>[https://tour.daegu.go.kr/index.do?menu_id=00002947 대구가 자랑하는 10가지 별미] 、大邱観光案内ウェブサイト、2025年4月25日閲覧</ref>。[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)|タロクッパプ]]は、大邱式の[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]と説明される場合もあり、店によって微差はあるものの、基本的には同じ料理として考えられる。
  
 
=== ユッケジャン(牛肉の辛口スープ/육개장) ===
 
=== ユッケジャン(牛肉の辛口スープ/육개장) ===
[[ファイル:17081403.JPG|thumb|300px|大邱式ユッケジャン]]
+
[[ファイル:17081403.JPG|300px|thumb|大邱式ユッケジャン]]
:ユッケジャンは牛肉を煮込んだ辛口のスープ。他地域のユッケジャンとは異なり、大きく切った牛肉と、とろとろになるまで煮込んだ長ネギの2種が具材の大半を占める。少量の芋茎や大根を入れることもあるが、牛肉のうま味と長ネギから出る甘味が味の要となる。ごはんを添えて提供するのが一般的だが、かわりに麺を入れて食べるユッククス([[육국수]])という派生メニューもある。
+
:ユッケジャン([[육개장]])は、牛肉の辛口スープ(「[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]」の項目も参照)。他地域の[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)|ユッケジャン]]が細く裂いた牛肉にワラビ、豆モヤシ、溶き卵などの具を加えて作るのに対し、ごろんと大きく切った牛肉と、とろとろになるまで煮込んだ長ネギの2種だけで作る。少量の芋茎や大根を入れることもあるが、牛肉の旨味と長ネギから出る甘味が味の要となる。慶尚道(キョンサンド、경상도)式の[[ソゴギクッパプ(牛肉のスープごはん/소고기국밥)]]ともほぼ共通する。スープにごはんを添えて提供するのが一般的だが、かわりに麺を入れて食べるユッククス(牛肉の辛口スープ麺、[[육국수]])という派生メニューもある。
  
 
*テグタンバン(大邱湯飯)
 
*テグタンバン(大邱湯飯)
:大邱式のユッケジャンは20世紀初めにテグタン(大邱湯、[[대구탕]])、またはテグタンバン(大邱湯飯、[[대구탕반]])という名前でも親しまれた。ソウルにもテグタンバンを出す店ができて流行料理となったが、現在はほぼ名称としては残っていない。日本の焼肉店で牛肉の辛いスープをテグタンと呼ぶのはテグタンバンがルーツである(詳細は[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)#1920年代(テグタンバンの流行)]]の項目を参照)。
+
:大邱式の[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)|ユッケジャン]]は20世紀初めにテグタン(大邱湯、[[대구탕]])、またはテグタンバン(大邱湯飯、[[대구탕반]])の名前でも親しまれた。[[ソウル市の料理|ソウル市]]にもテグタンを出す店ができて流行料理となったが、現在はほぼ名称としては残っていない。日本の焼肉店で牛肉の辛いスープをテグタンと呼ぶのはテグタンバンがルーツである(詳細は「[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)#1920年代(テグタンバンの流行)]]」の項目を参照)。
  
*タロクッパプ
+
=== タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥) ===
:大邱ではユッケジャンから派生した料理として[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)]]を位置づけている。牛肉のスープにごはんを入れた状態で提供していたものを、客の要望によってごはんを分けて出したのが始まりとされる。現在の大邱におけるタロクッパプは牛肉や牛骨スープでダシを取り、長ネギ、芋がらなどの野菜と一緒に煮込んだ辛いスープという点で共通するが、多くの店でソンジ(牛の血、[[선지]])を具として加えており、その点でユッケジャンと異なる。
+
:タロクッパプ([[따로국밥]])は、別盛のスープごはん(「[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)]]」の項目も参照)。スープにごはんを入れた料理を[[クッパプ(クッパ/국밥)]]と総称するが、そのごはんとスープを別々に盛り付けたものを[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)|タロクッパプ]]と呼ぶ。大邱式の[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)|ユッケジャン]]から派生した料理として解釈され、牛肉のスープにごはんを入れた状態で提供していたものを、客の要望によってごはんを分けて出したのが始まりとされる。傾向として[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)|タロクッパプ]]にはソンジ(牛の血、[[선지]])を加えることが多く、その点で[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)|ユッケジャン]]との差異を見出すこともできる。
  
 
=== マクチャングイ(豚の直腸焼き/막창구이) ===
 
=== マクチャングイ(豚の直腸焼き/막창구이) ===
[[ファイル:17081404.JPG|thumb|300px|マクチャングイ]]
+
[[ファイル:17081404.JPG|300px|thumb|マクチャングイ]]
:マクチャングイはギアラ(牛の第4胃)焼き、または豚の直腸焼き。マクチャン([[막창]])とはマジマクチャン(最後の腸、마지막창)という意味で、牛の場合はギアラ、豚の場合は直腸を表す。いずれも練炭や炭火で網焼きにして味わう。
+
:マクチャングイ([[막창구이]])は、ギアラ(牛の第4胃、[[소막창]])、または豚の直腸([[돼지막창]])を焼いたもの(「[[テジマクチャン(豚の直腸焼き/돼지막창)]]」の項目も参照)。マクチャン([[막창]])とはマジマクチャン(最後の腸、[[마지막창]])を意味し、牛の場合はギアラ、豚の場合は直腸を表す。いずれも練炭や炭火で網焼きにして味わう。
  
 
*アンジランコプチャン通り
 
*アンジランコプチャン通り
55行目: 62行目:
  
 
=== ムンティギ(牛刺身/뭉티기) ===
 
=== ムンティギ(牛刺身/뭉티기) ===
[[ファイル:17081405.JPG|thumb|300px|ムンティギ]]
+
[[ファイル:17081405.JPG|300px|thumb|ムンティギ]]
:ムンティギは牛肉の刺身。[[ユッケ(牛刺身/육회)]]のように味付けはせず、鮮度のよい赤身肉をひと口大に切り、コチュジャン([[고추장]])や、タデギ(唐辛子ペースト、[[다대기]])などの辛味ダレにつけて味わう。地方によってはセンゴギ([[생고기]])、[[ユクサシミ(牛刺身/육사시미)]]とも呼ばれるが、ムンティギははざくざくと切ることを表す擬音語のムントンムントン([[뭉텅뭉텅]])から来ている<ref>[http://tour.daegu.go.kr/PageLink.do?ret=home/kor/sleepneat/sleepneat03 뭉티기] 、大邱観光案内ウェブサイト、2017年8月8日閲覧</ref>。もともとはチョジゲサル([[처지개살]])と呼ばれるモモ肉の内側にある希少部位を用いたが、現在はモモの赤身部位全般を扱う。
+
:ムンティギ([[뭉티기]])は、牛刺身(「[[ユクサシミ(牛刺身/육사시미)]]」の項目も参照)。[[ユッケ(牛刺身/육회)]]のように味付けはせず、鮮度のよい赤身肉をひと口大に切り、コチュジャン([[고추장]])や、タデギ(唐辛子ペースト、[[다대기]])などの辛味ダレにつけて味わう。同様の料理をセンゴギ([[생고기]])、[[ユクサシミ(牛刺身/육사시미)|ユクサシミ]]とも呼ぶが、ムンティギははざくざくと切ることを表す擬音語のムントンムントン([[뭉텅뭉텅]])から来ている<ref>[http://tour.daegu.go.kr/PageLink.do?ret=home/kor/sleepneat/sleepneat03 뭉티기] 、大邱観光案内ウェブサイト、2017年8月8日閲覧</ref>。もともとはチョジゲサル([[처지개살]])と呼ばれるモモ肉の内側にある希少部位を用いたが、現在はモモの赤身部位全般を用いる。
  
 
*その他の希少部位
 
*その他の希少部位
62行目: 69行目:
  
 
=== チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비) ===
 
=== チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비) ===
[[ファイル:22122827.JPG|thumb|300px|チムカルビ]]
+
[[ファイル:22122827.JPG|300px|thumb|チムカルビ]]
:チムカルビは辛い牛カルビの辛い煮物(「[[チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비)]]」の項目も参照)。ぶつ切りにした牛カルビを甘辛く煮込んだもので、調理法としては[[カルビチム(牛カルビの煮物/갈비찜)]]ともほぼ共通するが、みじん切りのニンニクや粉唐辛子のたくさん入る刺激的な味付けが特徴的である。1972年創業の元祖店「鳳山チムカルビ(봉산찜갈비)」によれば、1970年代の初めに地下鉄工事が行われた際、近隣で働いていた労働者のリクエストに応える形で、辛く濃厚な味付けに仕上がっていったという(八田靖史の取材記録より、2011年12月11日)。アルマイトのチゲ用鍋([[양은 냄비]])で調理、提供され、残ったタレにはごはんを入れて混ぜて食べるのも定番である。
+
:チムカルビ([[찜갈비]])は、カルビの辛い煮物(「[[チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비)]]」の項目も参照)。ぶつ切りにした牛カルビ([[소갈비]])を甘辛く煮込んだもので、調理法は[[カルビチム(牛カルビの煮物/갈비찜)]]ともほぼ共通するが、みじん切りのニンニクや粉唐辛子をたっぷりと加えた刺激的な味付けが特徴的である。1972年創業の元祖店「鳳山チムカルビ(봉산찜갈비)」によれば、1970年代の初めに地下鉄工事が行われた際、近隣で働いていた労働者のリクエストに応える形で、辛く濃厚な味付けに仕上がっていったという(八田靖史の取材記録より、2011年12月11日)。アルマイトのチゲ用鍋([[양은 냄비]])で調理、提供され、残ったタレにはごはんを入れて混ぜて食べるのも定番である。
  
 
*東仁洞チムカルビ通り
 
*東仁洞チムカルビ通り
:大邱市中区東仁洞の東仁洞チムカルビ通り(동인동 찜갈비골목)には2017年6月現在、12軒のチムカルビ専門店が営業する。
+
:中区東仁洞(チュング トンインドン、중구 동인동)の東仁洞チムカルビ通り(동인동 찜갈비골목)には2017年6月現在、12軒のチムカルビ専門店が営業する。
  
 
*西門市場のテジチムカルビ
 
*西門市場のテジチムカルビ
:西門市場(서문시장)内には豚カルビを使用したテジチムカルビ(豚カルビの辛い煮物、[[돼지찜갈비]])を提供する飲食店の集まる一角がある。
+
:西門市場(ソムンシジャン、서문시장)内には豚カルビ([[돼지갈비]])を使用したテジチムカルビ(豚カルビの辛い煮物、[[돼지찜갈비]])を提供する飲食店の集まる一角がある。
  
 
=== ヤキウドン(辛口焼きうどん/야끼우동) ===
 
=== ヤキウドン(辛口焼きうどん/야끼우동) ===
[[ファイル:17081407.JPG|thumb|300px|ヤキウドン]]
+
[[ファイル:17081407.JPG|300px|thumb|ヤキウドン]]
:ヤキウドンは辛口の海鮮焼きうどん。韓国式の[[チャンポン(激辛スープの海鮮麺/짬뽕)]]を汁なしに仕立てたアレンジ料理で、大邱を発祥とする中華料理として位置付けられる。名称こそ日本料理の「焼きうどん」と共通するが、もともと韓国の中華料理店には日本語が多く浸透しており、例えば焼き餃子のことはヤキマンドゥとも表現する(「[[マンドゥ(餃子/만두)]]」の項目も参照)。また、野菜や魚介を具とした温かいスープの麺料理を、日本式の麺料理とは別途、ウドン([[우동]])と称するため、この両者を総合してヤキウドンという名称に至った。中区南一洞に位置する「中和飯店(중화반점)」にて、1970年代に新メニューとして開発されたとされる。
+
:ヤキウドン([[야끼우동]])は、辛口の海鮮焼きうどん。韓国式の[[チャンポン(激辛スープの海鮮麺/짬뽕)]]を汁なしに仕立てたアレンジ料理で、大邱市を発祥とする中国料理として位置付けられる。名称こそ日本料理の「焼きうどん」と共通するが、もともと韓国の中国料理店には日本語が多く浸透しており、焼き餃子をヤキマンドゥ([[야끼만두]])、ダールー麺をウドン([[우동2|우동]])と呼ぶことから、両者を総合してヤキウドンという名称に至った。中区南一洞(チュング ナミルトン、중구 남일동)に位置する「中和飯店(중화반점)」にて、1970年代に新メニューとして開発されたとされる。
  
 
=== 大邱10味以外の料理 ===
 
=== 大邱10味以外の料理 ===
 
:大邱10味として選定された料理以外にも大邱名物とされる料理は多い。
 
:大邱10味として選定された料理以外にも大邱名物とされる料理は多い。
;タットンチプ(닭똥집)
+
;タットンチプ
:タットンチプは砂肝揚げ(「[[タットンチプ(砂肝炒め/닭똥집)]]」の項目も参照)。トンチプとも呼ぶ。東区新岩洞の平和市場(평화시장)を発祥とし、専門店の集まる一帯は「平和市場タットンチプ通り(평화시장 닭똥집 골목)」と呼ばれ、2017年6月現在、26軒の店がタットンチプを提供する(八田靖史の取材記録より、2017年6月25日)。1972年創業の元祖店「サマトンダク(삼아통닭)」によれば、当初はマッコリを専門とする居酒屋として営んでおり、おつまみとして砂肝を揚げて出したところ好評だったため、そちらが専門になって広まったという。砂肝だけでなく拍子切りにしたサツマイモも一緒に揚げ、味付けは塩味のほか、ヤンニョム(辛味ダレ、[[양념]])味、醤油味、ニンニク味などのバリエーションもある。
+
:タットンチプ([[닭똥집]])は、砂肝揚げ(「[[タットンチプ(砂肝炒め/닭똥집)]]」の項目も参照)。トンチプ([[똥집]])とも呼ぶ。東区新岩洞(トング シナムドン、동구 신암동)の平和市場(ピョンファシジャン、평화시장)を発祥とし、専門店の集まる一帯は「平和市場タットンチプ通り(평화시장 닭똥집 골목)」と呼ばれ、2017年6月現在、26軒の店がタットンチプを提供する(八田靖史の取材記録より、2017年6月25日)。1972年創業の元祖店「サマトンダク(삼아통닭)」によれば、当初は[[マッコリ(韓国式の濁酒/막걸리)|マッコリ]]を専門とする居酒屋を営んでおり、おつまみとして砂肝を揚げて出したところ好評だったため、そちらが専門になって広まったという。砂肝だけでなく拍子切りにしたサツマイモも一緒に揚げ、味付けは塩味のほか、ヤンニョム(辛味ダレ、[[양념]])味、醤油味、ニンニク味などのバリエーションがある。
  
;ヤンニョムオデン(양념오뎅)
+
;ヤンニョムオデン
:ヤンニョムオデンは辛口のオデン(「[[オデン(おでん/오뎅)]]」の項目も参照)。パルガンオデン(赤いオデン、[[빨간오뎅]])とも呼ぶ。ワタリガニなどを加えた魚介ダシで、串に刺したオムク(魚の練り物、[[어묵]])を煮込んで作る。このとき大量の大豆モヤシも一緒に煮込み、オムクと併せて皿に盛り付けて提供する。同様の料理は[[忠清北道の料理|忠清北道]][[堤川市の料理|堤川市]]でも名物として知られる。
+
:ヤンニョムオデン([[양념오뎅]])は、辛口のオデン(「[[オデン(おでん/오뎅)]]」の項目も参照)。パルガンオデン(赤いオデン、[[빨간오뎅]])とも呼ぶ。ワタリガニなどを加えた魚介ダシで、串に刺したオムク(魚の練り物、[[어묵]])を煮込んで作る。このとき大量の大豆モヤシも一緒に煮込み、オムクと併せて皿に盛り付けて提供する。同様の料理は[[忠清北道の料理|忠清北道]][[堤川市の料理|堤川市]]でも名物として知られる。
  
;ネンミョン(냉면)
+
;ネンミョン
:ネンミョンは冷麺(「[[ネンミョン(冷麺/냉면)]]」の項目も参照)。大邱市内には老舗の[[ネンミョン(冷麺/냉면)|ネンミョン]]専門店が点在し、朝鮮戦争によって北部から避難してきた人たちによってその歴史が始まっている。1950年6月に朝鮮戦争が始まると、当初は北側が大きく南へと戦線を押し下げ、南側では大邱市の西方および北方を流れる洛東江を最終的な防御線と定めるに至る。[[ソウル市の料理|ソウル]]を失ったことから首都機能は一時、[[大田市の料理|大田市]]を経て大邱市へと移り、1950年7月16日~8月17日まで大邱市が臨時首都となった後、さらに[[釜山市の料理|釜山市]]へ移った。この前後、大邱市へは北部からの避難民が多く移り住んでおり、[[ネンミョン(冷麺/냉면)|ネンミョン]]の本場である[[北朝鮮の料理|平壌]]の出身者も多く含まれた。1951年に創業した中区校洞(チュング キョドン、중구 교동)の「江山麺屋(강산면옥)」と、1953年に[[釜山市の料理|釜山市]]で創業したのち1969年に大邱市へと移転した中区公平洞(チュング コンピョンドン、중구 공평동)の「釜山安麺屋(부산안면옥)」はいずれも創業者が[[北朝鮮の料理|平壌]]出身であり、これに「釜山安麺屋」から分かれて1960年代後半に創業した中区桂山洞(チュング ケサンドン、중구 계산동)の「大同麺屋(대동면옥)」を加えて、3店舗を「大邱3大冷麺」と称することも多い。
+
:ネンミョン([[냉면]])は、冷麺(「[[ネンミョン(冷麺/냉면)]]」の項目も参照)。大邱市内には老舗の[[ネンミョン(冷麺/냉면)|ネンミョン]]専門店が点在し、朝鮮戦争によって北部から避難してきた人たちによってその歴史が始まっている。1950年6月に朝鮮戦争が始まると、当初は北側が大きく南へと戦線を押し下げ、南側では大邱市の西方および北方を流れる洛東江を最終的な防御線と定めるに至る。[[ソウル市の料理|ソウル]]を失ったことから首都機能は一時、[[大田市の料理|大田市]]を経て大邱市へと移り、1950年7月16日~8月17日まで大邱市が臨時首都となった後、さらに[[釜山市の料理|釜山市]]へ移った。この前後、大邱市へは北部からの避難民が多く移り住んでおり、[[ネンミョン(冷麺/냉면)|ネンミョン]]の本場である[[北朝鮮の料理|平壌]]の出身者も多く含まれた。1951年に創業した中区校洞(チュング キョドン、중구 교동)の「江山麺屋(강산면옥)」と、1953年に[[釜山市の料理|釜山市]]で創業したのち1969年に大邱市へと移転した中区公平洞(チュング コンピョンドン、중구 공평동)の「釜山安麺屋(부산안면옥)」はいずれも創業者が[[北朝鮮の料理|平壌]]出身であり、これに「釜山安麺屋」から分かれて1960年代後半に創業した中区桂山洞(チュング ケサンドン、중구 계산동)の「大同麺屋(대동면옥)」を加えて、3店舗を「大邱3大冷麺」と称することも多い。
  
 
== 代表的な特産品 ==  
 
== 代表的な特産品 ==  
大邱市は日本統治時代以降に製麺業で栄え、現在も麺料理の人気が高い。リンゴの産地としても有名である。
+
大邱市は日本統治時代以降に製麺業で栄え、現在も麺料理の人気が高い。リンゴ([[사과]])の産地としても有名である。
  
 
=== 麺(국수) ===  
 
=== 麺(국수) ===  
:大邱市は韓国でも小麦粉や麺類の消費が多い地域として知られ、[[チャンチグクス(にゅうめん/잔치국수)]]や、[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)|ヌルングクス(韓国式の手打ちうどん、누른국수)]]の人気が高い。1933年に中区大新洞(チュング テシンドン、중구 대신동)で創業した「豊国麺(풍국면)」をはじめ<ref>[http://www.pkmnoodle.com/history.php 풍국면의 역사] 、豊国麺ウェブサイト、2017年8月10日閲覧</ref>、日本統治時代から多くの製麺工場が作られた。そのひとつに1938年に中区仁橋洞(チュング インギョドン、중구 인교동)で創業した「三星商会(삼성상회)」があり、これが韓国最大の財閥企業である後のサムソングループへと成長していった。三星商会では当時、社名にちなんだピョルピョグクス(星印麺、별표국수)を製造販売していた<ref>[http://hoamprize.samsungfoundation.org/kor/hoam/hoam_history03.asp 삼성의 싹. 삼성상회 인근 지방에서 더 인기 좋았던 별표국수] 、湖岩財団ウェブサイト、2017年8月10日閲覧</ref>。
+
:大邱市は韓国でも小麦粉や麺類の消費が多い地域として知られ、[[チャンチグクス(にゅうめん/잔치국수)]]や、[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)|ヌルングクス(韓国式の手打ちうどん、누른국수)]]の人気が高い。1933年に中区大新洞(チュング テシンドン、중구 대신동)で創業した「豊国麺(풍국면)」をはじめ<ref>[http://www.pkmnoodle.com/history.php 풍국면의 역사] 、豊国麺ウェブサイト、2017年8月10日閲覧</ref>、日本統治時代から多くの製麺工場が作られた。そのひとつに1938年に中区仁橋洞(チュング インギョドン、중구 인교동)で創業した「三星商会(삼성상회)」があり、これが韓国最大の財閥企業である後のサムソングループへと成長していった。三星商会では当時、社名にちなんだピョルピョグクス(星印麺、[[별표국수]])を製造販売していた<ref>[http://hoamprize.samsungfoundation.org/kor/hoam/hoam_history03.asp 삼성의 싹. 삼성상회 인근 지방에서 더 인기 좋았던 별표국수] 、湖岩財団ウェブサイト、2017年8月10日閲覧</ref>。
  
 
*ヌルングクス
 
*ヌルングクス
:大邱10味のひとつに数えられるヌルングクス([[누른국수]])とは、いわゆる[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)|カルグクス]]を指す。ヌルンは、「ヌルダ(押さえる、누르다)」を語源とし、小麦粉の生地を押さえつけながら伸ばしたことに由来するという説と、生地にきな粉([[콩가루]])を混ぜる慶尚道式の製法から、「ノラン(黄色い、노란)」が転化したとの説がある。グクス(=ククス、[[국수]])は麺の意。煮干しでダシを取ったスープで、小麦粉ときな粉を混ぜた生地の麺を茹でて作る。
+
:大邱10味のひとつに数えられるヌルングクス([[누른국수]])は、いわゆる[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)|カルグクス]]を指す。ヌルンは、「ヌルダ(押さえる、누르다)」を語源とし、小麦粉の生地を押さえつけながら伸ばしたことに由来するという説と、生地にきな粉([[콩가루]])を混ぜる慶尚道式の製法から、「ノラン(黄色い、노란)」が転化したとの説がある。グクス(=ククス、[[국수]])は麺の意。煮干しでダシを取ったスープで、小麦粉ときな粉を混ぜた生地の麺を茹でて作る。
  
 
*カルジェビ
 
*カルジェビ
103行目: 110行目:
  
 
=== リンゴ(사과) ===
 
=== リンゴ(사과) ===
:朝鮮半島では東洋種のリンゴが古くから栽培されてきたが、19世紀後半になると大邱には宣教師らが移り住んで、自らの邸宅に西洋リンゴの木を植えた。これが20世紀初頭にかけて広まったことで、大邱はリンゴの名産地として有名になった。現在は温暖化が進んだこともあり、リンゴの主産地は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の北部へと移っているが、東区坪広洞(トング ピョングァンドン、동구 평광동)には1935年に植えられた紅玉([[홍옥]])の木がいまも残っている。リンゴの木としては韓国でもっとも樹齢が古く、2009年には大邱市の保護樹2-24号に指定されている<ref name="apple">[http://www.daegu.go.kr/icms/cmm/fms/FileDown.do?atchFileId=FILE_000000000138225&fileSn=0 보호수 현행화자료] 、大邱市ウェブサイト(hwpファイル)、2017年8月14日閲覧</ref>。大邱市において保護樹に指定されたリンゴの木はもう1本あり、宣教師によって19世紀末に植えられた2世の木が中区東山洞(チュング トンサンドン、중구 동산동)の東山病院(동산병원)敷地内にある(保護樹1-1号、2000年指定)<ref name="apple"></ref>。
+
:朝鮮半島では東洋種のリンゴが古くから栽培されてきたが、19世紀後半になると大邱市には宣教師らが移り住んで、自宅の敷地内に西洋リンゴの木を植えた。これが20世紀初頭にかけて広まったことで、大邱市はリンゴの名産地として有名になった。現在は温暖化が進んだこともあり、リンゴの主産地は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の北部へと移っているが、東区坪広洞(トング ピョングァンドン、동구 평광동)には1935年に植えられた紅玉([[홍옥]])の木がいまも残っている。リンゴの木としては韓国でもっとも樹齢が古く、2009年には大邱市の保護樹2-24号に指定されている<ref name="apple">[http://www.daegu.go.kr/icms/cmm/fms/FileDown.do?atchFileId=FILE_000000000138225&fileSn=0 보호수 현행화자료] 、大邱市ウェブサイト(hwpファイル)、2017年8月14日閲覧</ref>。大邱市において保護樹に指定されたリンゴの木はもう1本あり、宣教師によって19世紀末に植えられた2世の木が中区東山洞(チュング トンサンドン、중구 동산동)の東山病院(동산병원)敷地内にある(保護樹1-1号、2000年指定)<ref name="apple"></ref>。
  
 
== 代表的な酒類・飲料 ==
 
== 代表的な酒類・飲料 ==
 
=== マッコリ ===
 
=== マッコリ ===
[[ファイル:17081409.jpg|thumb|300px|日本で販売されている不老どんどん酒]]
+
[[ファイル:17081409.jpg|300px|thumb|日本で販売されている不老どんどん酒]]
 
:1970年に49ヶ所(後に56ヶ所)の醸造場をまとめて作られた大邱濁酒合同(대구탁주합동)の規模がもっとも大きい。代表銘柄には不老生マッコリ(불로생막걸리)、不老生米マッコリ(불로생쌀막걸리)、八公山不老生マッコリ(팔공산불로생막걸리)がある。同社製の不老どんどん酒(불로동동주)は日本向けに輸出されている<ref>[http://www.daegutakju.co.kr/sub/sub02_3.htm 불로どんどん酒] 、大邱濁酒合同ウェブサイト、2017年8月11日閲覧</ref>。
 
:1970年に49ヶ所(後に56ヶ所)の醸造場をまとめて作られた大邱濁酒合同(대구탁주합동)の規模がもっとも大きい。代表銘柄には不老生マッコリ(불로생막걸리)、不老生米マッコリ(불로생쌀막걸리)、八公山不老生マッコリ(팔공산불로생막걸리)がある。同社製の不老どんどん酒(불로동동주)は日本向けに輸出されている<ref>[http://www.daegutakju.co.kr/sub/sub02_3.htm 불로どんどん酒] 、大邱濁酒合同ウェブサイト、2017年8月11日閲覧</ref>。
  
 
=== 大邱チメクフェスティバル ===
 
=== 大邱チメクフェスティバル ===
:大邱チメクフェスティバル(대구치맥페스티벌)は2013年に始まった[[チキン(韓国チキン/치킨)]]とビールの祭典。毎年7月に開催される。チメク([[치맥]])とは、チキン([[치킨]])とメクチュ(ビール、[[맥주]])の合成語である。大邱市は盆地地形のため夏は非常に暑く、冷えたビールが美味しいことに加え、韓国内で人気を集める多くの[[チキン(韓国チキン/치킨)|チキン]]専門フランチャイズが大邱から誕生していることにちなむ。主なブランドとしては、1978年に東区孝睦洞からスタートした「メキシカンチキン(맥시칸치킨)」<ref>[http://www.mexican.co.kr/2016/inner.php?sMenu=G3000 연혁] 、メキシカンチキンウェブサイト、2017年8月11日閲覧</ref>、1978年に寿城区で創業しカンジャンチキン(醤油味のチキン、[[간장치킨]])の元祖とされている「ホデグ大邱トンダク(허대구 대구통닭)」<ref>[http://www.dgchicken.com/sub01/sub03.php 연혁] 、ホデグ大邱トンダクウェブサイト、2017年8月15日閲覧</ref>、1985年に[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[安東市の料理|安東市]]で創業し、1989年に大邱市でフランチャイズ事業を開始した「メキシカーナチキン(맥시카나치킨)」<ref>[http://month.foodbank.co.kr/section/section_view.php?secIndex=4314&page=4&section=004&back=S&section_list=people.php (주)멕시카나 최광은 대표이사 회장] 、月刊食堂、2017年8月11日閲覧</ref><ref>[http://news.tf.co.kr/read/economy/1023828.htm '처갓집, 멕시카나'···원조 치킨집들 '다 어디 갔어?'] 、BizFACT、2017年8月11日閲覧</ref>、1999年に達西区でオープンした「ホシギトゥマリチキン(호식이두마리치킨)」<ref>[https://kbmaeil.com/news/articleView.html?idxno=239743 대구 토종 브랜드 `호식이 두마리` 치킨] 、慶北毎日、2017年8月11日閲覧</ref>、2004年に西区飛山洞でオープンした「タンタンチキン(땅땅치킨)」などがあげられる<ref>[http://www.codd.co.kr/site/bbs/content.php?co_id=2_1 회사소개] 、タンタンチキンウェブサイト、2017年8月11日閲覧</ref>。
+
:大邱チメクフェスティバル(대구치맥페스티벌)は2013年に始まった[[チキン(韓国チキン/치킨)]]とビールの祭典。毎年7月に開催される。チメク([[치맥]])とは、チキン([[치킨]])とメクチュ(ビール、[[맥주]])の合成語である。大邱市は盆地地形のため夏は非常に暑く、冷えたビールが美味しいことに加え、韓国内で人気を集める多くの[[チキン(韓国チキン/치킨)|チキン]]専門フランチャイズが大邱から誕生していることにちなむ。主なブランドとしては、1978年に東区孝睦洞(トング ヒョモクトン、동구 효목동)からスタートした「メキシカンチキン(맥시칸치킨)」<ref>[http://www.mexican.co.kr/2016/inner.php?sMenu=G3000 연혁] 、メキシカンチキンウェブサイト、2017年8月11日閲覧</ref>、1978年に寿城区(スソング、수성구)で創業しカンジャンチキン(醤油味のチキン、[[간장치킨]])の元祖とされている「ホデグ大邱トンダク(허대구 대구통닭)」<ref>[http://www.dgchicken.com/sub01/sub03.php 연혁] 、ホデグ大邱トンダクウェブサイト、2017年8月15日閲覧</ref>、1985年に[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[安東市の料理|安東市]]で創業し、1989年に大邱市でフランチャイズ事業を開始した「メキシカーナチキン(맥시카나치킨)」<ref>[http://month.foodbank.co.kr/section/section_view.php?secIndex=4314&page=4&section=004&back=S&section_list=people.php (주)멕시카나 최광은 대표이사 회장] 、月刊食堂、2017年8月11日閲覧</ref><ref>[http://news.tf.co.kr/read/economy/1023828.htm '처갓집, 멕시카나'···원조 치킨집들 '다 어디 갔어?'] 、BizFACT、2017年8月11日閲覧</ref>、1999年に達西区(タルソグ、달서구)でオープンした「ホシギトゥマリチキン(호식이두마리치킨)」<ref>[https://kbmaeil.com/news/articleView.html?idxno=239743 대구 토종 브랜드 `호식이 두마리` 치킨] 、慶北毎日、2017年8月11日閲覧</ref>、2004年に西区飛山洞でオープンした「タンタンチキン(땅땅치킨)」などがあげられる<ref>[http://www.codd.co.kr/site/bbs/content.php?co_id=2_1 회사소개] 、タンタンチキンウェブサイト、2017年8月11日閲覧</ref>。
  
 
=== コーヒー ===
 
=== コーヒー ===
:大邱市では1990年代より本格的なカフェが増加し、全国的なコーヒーチェーンよりも、大邱市で生まれた独自のブランドが広く展開をしている。1990年に北区の慶北大学後門付近で創業した「コーヒー名家(커피명가)」や<ref>[http://www.myungga.com/sub05/main02.html 연혁] 、コーヒー名家ウェブサイト、2017年8月15日閲覧</ref>、2000年に中区公平洞で創業した「DAVINCI COFFEE(더빈치커피)」<ref>[http://www.edavinci.co.kr/source/menu1/menu1_1_2.html 회사연혁] 、DAVINCI COFFEEウェブサイト、2017年8月15日閲覧</ref>、2004年に寿城区上洞で創業した「SLEEPLESS IN SEATTLE(시애틀의 잠 못 이루는 밤)」<ref>[https://www.siscoffee.com/about/store.html OUR STORE] 、SLEEPLESS IN SEATTLEウェブサイト、2017年8月15日閲覧</ref>、2006年に寿城区寿城洞4街で創業した「HANDS COFFEE(핸즈커피)」<ref>[http://handscoffee.com/new_company/sub2.php?m_no=2&s_no=1 STORY] 、HANDS COFFEEウェブサイト、2017年8月15日閲覧</ref>などが代表的なブランドである。こうした背景から大邱ではカフェ文化が発展し、市民のみならず観光客からも注目を集めている。毎年12月には「大邱コーヒー博覧会(대구커피박람희)」も開催される<ref>[http://www.coffeefair.co.kr/ 대구커피박람희] 、大邱コーヒー博覧会ウェブサイト、2017年8月15日閲覧</ref>。
+
:大邱市では1990年代より本格的なカフェが増加し、全国的なコーヒーチェーンよりも、大邱市で生まれた独自のブランドが広く展開をしている。1990年に北区(プック、북구)の慶北大学(경북대학교)後門付近で創業した「コーヒー名家(커피명가)」や<ref>[http://www.myungga.com/sub05/main02.html 연혁] 、コーヒー名家ウェブサイト、2017年8月15日閲覧</ref>、2000年に中区公平洞(チュング コンピョンドン、중구 공평동)で創業した「DAVINCI COFFEE(더빈치커피)」<ref>[http://www.edavinci.co.kr/source/menu1/menu1_1_2.html 회사연혁] 、DAVINCI COFFEEウェブサイト、2017年8月15日閲覧</ref>、2004年に寿城区上洞(スソング サンドン、수성구 상동)で創業した「SLEEPLESS IN SEATTLE(시애틀의 잠 못 이루는 밤)」<ref>[https://www.siscoffee.com/about/store.html OUR STORE] 、SLEEPLESS IN SEATTLEウェブサイト、2017年8月15日閲覧</ref>、2006年に寿城区寿城洞4街(スソング スソンドンサガ、수성구 수성동4가)で創業した「HANDS COFFEE(핸즈커피)」<ref>[http://handscoffee.com/new_company/sub2.php?m_no=2&s_no=1 STORY] 、HANDS COFFEEウェブサイト、2017年8月15日閲覧</ref>などが代表的なブランドである。こうした背景から大邱ではカフェ文化が発展し、市民のみならず観光客からも注目を集めている。毎年12月には「大邱コーヒー博覧会(대구커피박람희)」も開催される<ref>[http://www.coffeefair.co.kr/ 대구커피박람희] 、大邱コーヒー博覧会ウェブサイト、2017年8月15日閲覧</ref>。
  
 
=== 焼酎 ===
 
=== 焼酎 ===
 
*マシンヌンチャム
 
*マシンヌンチャム
:マシンヌンチャム([[맛있는참]])は達西区壮洞に本社を置く金福酒の製品。大邱市、および[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]における焼酎の代表銘柄であり、チャムソジュ([[참소주]])と呼ばれることも多い。金福酒は1957年創業で、ほかに慶州法酒([[경주법주]])や、花郎([[화랑]])といった銘柄も製造販売する。
+
:マシンヌンチャム([[맛있는참]])は達西区壮洞(タルソグ チャンドン、달서구 장동)に本社を置く大手酒造会社「金福酒(금복주)」の製品。大邱市、および[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]における焼酎の代表銘柄であり、チャムソジュ([[참소주]])と呼ばれることも多い。金福酒は1957年創業で、ほかに慶州法酒([[경주법주]])や、花郎([[화랑]])といった銘柄も製造販売する。
  
 
=== 寿星高粱酒 ===
 
=== 寿星高粱酒 ===
:寿星高粱酒(수성고량주)は北区助也洞の「寿星酒類(수성주류)」が生産するキビ([[수수]])を原料とした中国式の蒸留酒。創業は1958年。社名の寿星は長寿と明星を意味する。ミミズク(プオンイ、붕엉이)をマスコットキャラクターにしており、プオンイスル(ミミズクの酒、붕엉이술)という愛称でも呼ばれる<ref>[http://www.soosungliquor.com/introduction 회사소개] 、寿星高粱酒ウェブサイト、2017年8月11日閲覧</ref>。
+
:寿星高粱酒([[수성고량주]])は、北区助也洞(プック チョヤドン、북구 조야동)の「寿星酒類(수성주류)」が生産するタカキビ([[수수]])を原料とした中国式の蒸留酒。創業は1958年。社名の寿星は長寿と明星を意味する。ミミズク(プオンイ、붕엉이)をマスコットキャラクターにしており、プオンイスル(ミミズクの酒、[[붕엉이술]])の愛称でも呼ばれる<ref>[http://www.soosungliquor.com/introduction 회사소개] 、寿星高粱酒ウェブサイト、2017年8月11日閲覧</ref>。
  
 
== 老舗 ==
 
== 老舗 ==
 
*クギルタロクッパプ(국일따로국밥)
 
*クギルタロクッパプ(국일따로국밥)
 
[[ファイル:17081411.JPG|thumb|300px|クギルタロクッパプのタロクッパプ]]
 
[[ファイル:17081411.JPG|thumb|300px|クギルタロクッパプのタロクッパプ]]
:1946年創業のタロクッパプ専門店。看板料理であるタロクッパプのほか、ごはんのかわりに麺を提供するタログクス(따로국수)もメニューにある。24時間営業。
+
:1946年創業の[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)]]専門店。看板料理であるタロクッパプのほか、ごはんのかわりに麺を提供するタログクス([[따로국수]])もメニューにある。24時間営業。
  
 
*イェッチプ食堂(옛집식당)
 
*イェッチプ食堂(옛집식당)
:1948年創業のユッケジャン専門店。メニューはユッケジャンひとつしかない。営業時間は11~17時までで、スープがなくなったら終了。
+
:1948年創業の[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]専門店。メニューは[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)|ユッケジャン]]のみ。営業時間は11~17時までで、スープがなくなったら終了。
  
 
*江山麺屋(강산면옥)
 
*江山麺屋(강산면옥)
[[ファイル:17081410.JPG|thumb|300px|江山麺屋のムルネンミョン]]
+
[[ファイル:17081410.JPG|thumb|300px|江山麺屋の[[ネンミョン(冷麺/냉면)|ムルネンミョン]]]]
:1951年創業の冷麺店。創業初代は朝鮮戦争の影響で平壌から避難してきた。そば粉とサツマイモのでんぷんを使った麺を、酸味の効いた韓牛のダシで味わう。冷麺だけでもメニューは多彩で、まかないから生まれた江山職員冷麺(スープと薬味ダレの両方で味わう冷麺、강산직원냉면)といったメニューもある。韓牛と豚肉を混ぜて作った[[トッカルビ(叩いた牛カルビ焼き/떡갈비)]]も自慢のひとつ。
+
:1951年創業の[[ネンミョン(冷麺/냉면)]]専門店。創業初代は朝鮮戦争の影響で平壌(ピョンヤン、평양)から避難してきた。そば粉とサツマイモのでんぷんを使った麺を、酸味の効いた韓牛のダシで味わう。[[ネンミョン(冷麺/냉면)|ネンミョン]]だけでもメニューは多彩で、まかないから生まれた江山職員冷麺(スープと薬味ダレの両方で味わう冷麺、[[강산직원냉면]])といったメニューもある。韓牛と豚肉を混ぜて作った[[トッカルビ(叩いた牛カルビ焼き/떡갈비)]]も自慢のひとつ。
  
 
*サムソンパンチプ(삼송빵집)
 
*サムソンパンチプ(삼송빵집)
:1953年創業の老舗ベーカリー<ref>[http://www.ssbnc.kr/company/01.php 인사말] 、サムソンパンチプウェブサイト、2017年8月14日閲覧</ref>。名物のトンオクススパン(粒トウモロコシパン、통옥수수빵)が有名で、1度食べるとヤミツキになることから「麻薬パン(마약빵)」の愛称で親しまれている。2015年8月には首都圏への進出を果たした。
+
:1953年創業の老舗ベーカリー<ref>[http://www.ssbnc.kr/company/01.php 인사말] 、サムソンパンチプウェブサイト、2017年8月14日閲覧</ref>。名物のトンオクススパン(粒トウモロコシパン、[[통옥수수빵]])が有名で、1度食べるとヤミツキになることから「麻薬パン([[마약빵]])」の愛称で親しまれている。2015年8月には首都圏への進出を果たした。
  
 
== 飲食店情報 ==
 
== 飲食店情報 ==
302行目: 309行目:
  
 
== エピソード ==
 
== エピソード ==
*韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2004年7月に初めて大邱を訪れ、大邱のテグタンは本当にあるのか検証を行った。実際にテグタンと書かれたメニューは発見できなかったものの、ユッケジャン専門店の社長からユッケジャンとテグタンの関連性について説明を聞くことができた。一連の話はメールマガジン「コリアうめーや!!第89号」に掲載されている<ref>[http://www.kansyoku-life.com/2000/02/1987.html コリアうめーや!!第89号 大邱のテグタンは本当にあるのだ!!] 、韓食生活、2017年7月5日閲覧</ref>。
+
*韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2004年7月に初めて大邱市を訪れ、大邱市のテグタン(大邱湯、[[대구탕]])は本当にあるのか検証を行った。実際にテグタンと書かれたメニューは発見できなかったものの、[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]専門店の社長から[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)|ユッケジャン]]とテグタンの関連性について説明を聞くことができた。一連の話はメールマガジン「コリアうめーや!!第89号」に掲載されている<ref>[http://www.kansyoku-life.com/2000/02/1987.html コリアうめーや!!第89号 大邱のテグタンは本当にあるのだ!!] 、韓食生活、2017年7月5日閲覧</ref>。
  
 
== 脚注 ==
 
== 脚注 ==
309行目: 316行目:
 
== 外部リンク ==
 
== 外部リンク ==
 
;関連サイト
 
;関連サイト
*[http://tour.daegu.go.kr/jpn/ 大邱観光案内]
+
*[https://tour.daegu.go.kr/ 大邱観光案内]
 
;制作者関連サイト
 
;制作者関連サイト
 
*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
 
*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
317行目: 324行目:
 
{{DEFAULTSORT:てくしのりようり}}
 
{{DEFAULTSORT:てくしのりようり}}
 
*[[カルビチム(牛カルビの煮物/갈비찜)]]
 
*[[カルビチム(牛カルビの煮物/갈비찜)]]
 +
*[[クッパプ(クッパ/국밥)]]
 
*[[ナプチャクマンドゥ(平焼きの餃子/납작만두)]]
 
*[[ナプチャクマンドゥ(平焼きの餃子/납작만두)]]
 
*[[タットンチプ(砂肝炒め/닭똥집)]]
 
*[[タットンチプ(砂肝炒め/닭똥집)]]
 +
*[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)]]
 
*[[テジプルコギ(豚肉の味付け焼肉/돼지불고기)]]
 
*[[テジプルコギ(豚肉の味付け焼肉/돼지불고기)]]
 +
*[[テジマクチャン(豚の直腸焼き/돼지막창)]]
 
*[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)]]
 
*[[タロクッパプ(別盛のスープごはん/따로국밥)]]
 
*[[トッカルビ(叩いた牛カルビ焼き/떡갈비)]]
 
*[[トッカルビ(叩いた牛カルビ焼き/떡갈비)]]
 +
*[[マッコリ(韓国式の濁酒/막걸리)]]
 
*[[マンドゥ(餃子/만두)]]
 
*[[マンドゥ(餃子/만두)]]
 +
*[[メギタン(ナマズ鍋/메기탕)]]
 
*[[サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)]]
 
*[[サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)]]
 +
*[[ソゴギクッパプ(牛肉のスープごはん/소고기국밥)]]
 
*[[スジェビ(韓国式のすいとん/수제비)]]
 
*[[スジェビ(韓国式のすいとん/수제비)]]
 
*[[ウドン(うどん/우동)]]
 
*[[ウドン(うどん/우동)]]
334行目: 347行目:
 
*[[チキン(韓国チキン/치킨)]]
 
*[[チキン(韓国チキン/치킨)]]
 
*[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)]]
 
*[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)]]
 +
*[[フェムチム(刺身和え/회무침)]]
 
[[Category:韓食ペディア]]
 
[[Category:韓食ペディア]]
 
[[Category:慶尚北道・大邱市の料理]]
 
[[Category:慶尚北道・大邱市の料理]]
32,549

回編集