「アグチム(アンコウの蒸し煮/아구찜)」の版間の差分

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== 歴史 ==
 
== 歴史 ==
かつて韓国ではアンコウの利用が盛んではなかったが、1960年代半ばに[[慶尚南道の料理|慶尚南道]][[昌原市の料理|昌原市]]馬山合浦区午東洞(マサンハッポグ オドンドン、마산합포구 오동동)の飲食店「チンチャチョガチプ(진짜초가집)」で、干したアンコウをセリや豆モヤシと辛いタレで蒸し煮にしたアグチムが開発され、これが定着して全国区の料理になった。
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:[[慶尚南道の料理|慶尚南道]][[昌原市の料理|昌原市]]の馬山合浦区午東洞(マサンハッポグ オドンドン、마산합포구 오동동)が発祥地として知られ、1964~65年頃に誕生したと語られることが多い。発祥は諸説あるが、1964年の冬に「こぶおばあさん(혹부리 할머니)」と呼ばれる人物が考案したとする説と、現在も営業を続ける1965年創業の「チンチャチョガチプ(진짜초가집)」を元祖とする説に大きく分かれる。一帯は飲食店街であり同時多発的に生まれたとも見られ、同じく1965年創業の古株店「クガンハルメアグチム(구강할매아구찜)」は2010年代半ばまで営業を続けていたが現在は閉店している。
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;こぶおばあさんの店
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:明確な資料は見当たらないものの、こぶおばあさん(혹부리 할머니)と呼ばれる人物が最初に考案したとの話が伝わる<ref>[http://www.koreatimes.com/article/20061012/342733 김영복과 떠나는 이야기가 있는 음식여행 (19) 아귀어 요리] 、韓国日報(2006年10月13日付記事)、2025年8月17日閲覧</ref>。こぶおばあさんは本名も店名も不明だが、住所は「東城洞(トンソンドン、동성동)186」にあったとされる。現在「午東洞文化広場(오동동문화광장)」のある向かいで、[[アグチム(アンコウの蒸し煮/아구찜)|アグチム]]の専門店が集まる一角である。寒い冬のある日、客のひとりがアンコウを持参して料理を作って欲しいと頼んだが、こぶおばあさんは見た目にグロテスクなので、そのまま店の裏に放っておいた。しばらく忘れていたが、気付いてみるとほどよく水分が抜けて熟成していた。これを蒸し煮にして客に出してみたところ好評を得て、定番のメニューになった。
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;「チンチャチョガチプ」の創業
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:午東洞の「チンチャチョガチプ(진짜초가집)」は1965年にパク・ヨンジャ(박영자)氏が創業した。韓食財団が発行した『韓国人が愛する老舗の韓食堂(한국인이 사랑하는 오래된 한식당)』では、同店の取材をもとにアグチム誕生の経緯を以下のように紹介している。
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:「アンコウは不器量な見た目ではあるが、朝鮮戦争後は避難民の空腹を満たす貴重な魚だった。魚の中ではいちばん安かったが、大根、ネギと一緒に煮るとさっぱりした味が絶品だった。単に茹でたり、汁物としてのみ食べられていたアンコウが、蒸し煮料理に発展したのは1960年代半ばだ。パク・ヨンジャ氏がスープ用の残ったアンコウを洗濯ひもにかけて干しておいたところ、ある朝、スープを食べに来たお客さんが「迎え酒をしたいので干したアンコウでつまみを作ってくれ」と頼んだ。突然の注文ではあったが、副菜用に買っておいた豆モヤシと干したアンコウを、粉唐辛子とネギ、ニンニクで和え、味噌で味を調えて蒸し煮にしたところ、これがアグチムの始まりになった」【原文1】<ref>(재)한식재단, 2012, 『한국인이 사랑하는 오래된 한식당』, 한국외식정보, P224-225</ref>
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:【原文1】아귀는 못난 외양과 달리 6.25 전쟁 이후 피란민들의 배고픔을 달래주던 귀한 생선이었다. 생선 가운데 가장 저렴했지만 무와 파를 넣고 끓이면 시원한 맛이 일품이었다. 단순하게 수육이나 국으로만 끓여먹었던 아귀가 찜으로 발전한 것은 1960년 중반쯤이다. 박영자 씨가 어느 날 생선국으로 팔다 남은 아귀를 빨래줄에 걸어 말려 놓았는데, 아침에 생선국을 먹으러 온 손님이 '해장술 한 잔 하고 싶으니 말린 아귀로 안주를 만들어 달로'고 요청했다. 갑작스러운 주문에 마침 찬거리로 사다놓은 콩나물에 말린 아귀를 넣고 고춧가루와 파, 마늘로 버무려 된장으로 간을 해 쪄 냈는데 그것이 바로 아귀찜의 시초가 된 것이다.
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;『朝鮮日報』(1973年)の記述
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:1973年8月28日の朝鮮日報に「別味珍味 馬山『アグチム』」という記事があり、「馬山の午東洞料亭通りで飲食店を営んでいた『クガンチプ(구강집)』の女性主人、ク・ボンアクさん(59)が8年前から愛酒家の好みに合うようマッコリの肴にしたのがきっかけ。いまは広く知られるようになり、アグチムを売る店は馬山市内だけでも50ヵ所あまり。釜山、大邱、ソウルなどでも、「馬山アグチム」専門という看板を見ることができる」【原文2】と紹介されている<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1973082800239105013 別味珍味(27)馬山「아구찜」] 、NAVERニュースライブラリー、2025年8月17日閲覧</ref>。記事にある「クガンチプ」は1965年創業を掲げる古株店で、2010年代半ばまでは営業が確認できるが現在は閉店。
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:【原文2】「마산의 오동동 요정골목에서 음식집을 해오던 『구강집』여주인 구봉악씨(59)가 8년전부터 애주가들의 기호에 맞도록 막걸리 안주로 만든 것이 동기. 지금은 널리 퍼져 아구찜 파는 집은 마산시내만도 50여곳. 부산 대구 서울 등지까지 『마산아구찜』전문이란 간판을 볼 수 있다.」
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;『馬山夜話』(1973年)の記述
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:1973年に刊行された『馬山夜話』は、1970年10月より『馬山市史』を編纂中であった金亨潤(キム・ヒョンユン、김형윤)が執筆途中の1973年8月に亡くなったことから、その遺稿をまとめて出版されたものである。同書には「馬山の味覚」と題された項目があり、「最近、新しい食べ物が登場した。それが『アグ』というもので、3~4年前までは漁網にかかると漁師は海に捨てていたが、突然ごはんのおかずや酒肴として大衆の寵愛を受けている。これはひどく辛い薬味ダレで味付けがされていて、それがかえって魅力だとされる。 これを食べるときはティッシュやタオルを持っていかねば汗、鼻水、涙を拭うことができない。とても辛い」【原文3】と記している<ref>[https://nl.go.kr/NL/contents/search.do?#viewKey=CNTS-00113705567&viewType=C 金亨潤, 1973『馬山野話: 金亨潤遺稿集』, 태화출판사, P84-85、327] 、韓国国立中央図書館(コマ番号85-86、328/332)、2024年9月21日閲覧</ref>。3~4年前がどの時点で書かれたものかは不明だが、1960年代後半には人気の料理であったことが推測される。
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:【原文3】「최근 새로운 음식이 나타났다. 즉 『아구』라는 것인데 三、四년 전만 해도 漁網에 걸리면 어부는 이걸 바다에 버리던 것이 갑자기 밥 반찬과 술 안주로 대중의 총애를 받고 있다. 이게 지독하게 매운 약념으로 만들어져서 도리어 口味에 매력이 있다는 것이다. 이것을 먹을 땐 휴지나 수건을 갖고 있어야 땀, 콧물, 눈물을 닦을 수가 있다. 아주 맵다.」
  
 
== 地域 ==
 
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