30,651
回編集
(同じ利用者による、間の5版が非表示) | |||
38行目: | 38行目: | ||
=== カルビタン(牛カルビのスープ/갈비탕) === | === カルビタン(牛カルビのスープ/갈비탕) === | ||
:カルビタン([[갈비탕]])は、牛カルビのスープ(「[[カルビタン(牛カルビのスープ/갈비탕)]]」の項目も参照)。郡北西部に位置する安義面(アニミョン、안의면)の名物料理であり、地名を冠して安義カルビタン(アニガルビタン、[[안의갈비탕]])、またはそれを略してアンガルタン([[안갈탕]])とも呼ぶ。ごろごろと大きな牛カルビ(소갈비)がたくさん入っていることや、牛肉本来の旨味を重視して塩気を抑えた淡い味わいを特徴とする。また、近年は輸入肉を用いることの多い料理だが、安義面の専門店では韓牛([[한우]])にこだわるところが多い。 | :カルビタン([[갈비탕]])は、牛カルビのスープ(「[[カルビタン(牛カルビのスープ/갈비탕)]]」の項目も参照)。郡北西部に位置する安義面(アニミョン、안의면)の名物料理であり、地名を冠して安義カルビタン(アニガルビタン、[[안의갈비탕]])、またはそれを略してアンガルタン([[안갈탕]])とも呼ぶ。ごろごろと大きな牛カルビ(소갈비)がたくさん入っていることや、牛肉本来の旨味を重視して塩気を抑えた淡い味わいを特徴とする。また、近年は輸入肉を用いることの多い料理だが、安義面の専門店では韓牛([[한우]])にこだわるところが多い。 | ||
+ | |||
+ | *安義カルビタンの由来 | ||
[[ファイル:24041204.jpg|thumb|300px|安義伝統市場]] | [[ファイル:24041204.jpg|thumb|300px|安義伝統市場]] | ||
− | 安義面はかつては安義郡(アニグン、안의군)と呼ばれる独立した地域であった。1914年に咸陽郡へと統合されるが、1948年に郡内では初めての定期市場として「安義市場(안의시장)」(現在の安義伝統市場)が開設される<ref>[http://www.grandculture.net/hamyang/toc/GC07200917 안의시장] 、デジタル咸陽文化大典、2024年3月27日閲覧</ref>など、交通や物流の要衝地として栄えた。安義市場の近隣には牛市場やと畜場があり、そこで仕入れた牛カルビを利用して、1967年頃に[[ヘジャンクッ(酔い覚ましのスープ/해장국)]]の店を営んでいたキム・マルスン(김말순)氏が[[カルビタン(牛カルビのスープ/갈비탕)|カルビタン]]の提供を始めたところ、人気を得て定着したとされる<ref>[https://www.youtube.com/watch?v=WR48O2xTMzI 지리산에서 키운 청정 한우 집산지 함양 갈비의 다채로운 모습! [한국인의밥상 KBS 20110811 방송]] 、YouTube(KBSドキュメンタリーチャンネル)、2024年3月27日閲覧</ref><ref>[https://www.yeongnam.com/web/view.php?key=20170811.010350815470001 담백하면서 깊고 진한 ‘안의갈비탕’의 뼈대있는 맛]] 、嶺南日報2017年8月11日付記事、2024年3月27日閲覧</ref>。 | + | :安義面はかつては安義郡(アニグン、안의군)と呼ばれる独立した地域であった。1914年に咸陽郡へと統合されるが、1948年に郡内では初めての定期市場として「安義市場(안의시장)」(現在の安義伝統市場)が開設される<ref>[http://www.grandculture.net/hamyang/toc/GC07200917 안의시장] 、デジタル咸陽文化大典、2024年3月27日閲覧</ref>など、交通や物流の要衝地として栄えた。安義市場の近隣には牛市場やと畜場があり、そこで仕入れた牛カルビを利用して、1967年頃に[[ヘジャンクッ(酔い覚ましのスープ/해장국)]]の店を営んでいたキム・マルスン(김말순)氏が[[カルビタン(牛カルビのスープ/갈비탕)|カルビタン]]の提供を始めたところ、人気を得て定着したとされる<ref>[https://www.youtube.com/watch?v=WR48O2xTMzI 지리산에서 키운 청정 한우 집산지 함양 갈비의 다채로운 모습! [한국인의밥상 KBS 20110811 방송]] 、YouTube(KBSドキュメンタリーチャンネル)、2024年3月27日閲覧</ref><ref>[https://www.yeongnam.com/web/view.php?key=20170811.010350815470001 담백하면서 깊고 진한 ‘안의갈비탕’의 뼈대있는 맛]] 、嶺南日報2017年8月11日付記事、2024年3月27日閲覧</ref>。 |
− | 現在の安義面では中心部の光風路(クァンプンノ、광풍로)を中心に[[カルビタン(牛カルビのスープ/갈비탕)|カルビタン]]や、[[ | + | :現在の安義面では中心部の光風路(クァンプンノ、광풍로)を中心に[[カルビタン(牛カルビのスープ/갈비탕)|カルビタン]]や、[[カルビチム(牛カルビの煮物/갈비찜)]]の専門店が集まっており、一帯は「安義カルビタン通り(안의갈비탕골목)」と呼ばれる。代表的な専門店としてキム・マルスン氏から嫁のコン・ユンダル(공윤달)氏へと代を継いだ「イェンナル錦湖食堂(옛날금호식당)」をはじめ、「元祖安義カルビタン(원조안의갈비탕)」「元祖安義カルビタン/三一食堂(원조안의갈비탕/삼일식당)」などがある。 |
*趙貴千の伝説 | *趙貴千の伝説 | ||
− | :安義面新安里(アニミョン シナンニ、안의면 신안리)には、朝鮮時代後期に建てられた碑の「趙貴千孝子旌閭(조귀천 효자 정려)」があり、趙貴千(チョ・グィチョン)の孝行譚が伝説として残されている<ref>[https://www.grandculture.net/hamyang/toc/GC07200532 조귀천 효자 정려] 、デジタル咸陽文化大典、2024年3月28日閲覧</ref>。同碑には父の病気を治すために、指を切断して血をスープに混ぜて飲ませたところ快癒したとの話が刻まれている。建設時期は1855年とあるが、1617年に編纂された『東国新続三綱行実図(동국신속삼강행실도)』に趙貴千のエピソードが記録されている<ref>[http://db.sejongkorea.org/front/detail.do?bkCode=P12_DS_v001&recordId=P12_DS_e01_v001_2_0860 귀천단지(貴千斷指)] 、世宗ハングル古典、2024年3月28日閲覧</ref>ことから、それ以前の人物であると考えられる。また、これとは別に、両班の身分であった趙貴千が、目が不自由な父の治療に牛の肝臓([[간1|간]] | + | :安義面新安里(アニミョン シナンニ、안의면 신안리)には、朝鮮時代後期に建てられた碑の「趙貴千孝子旌閭(조귀천 효자 정려)」があり、趙貴千(チョ・グィチョン)の孝行譚が伝説として残されている<ref>[https://www.grandculture.net/hamyang/toc/GC07200532 조귀천 효자 정려] 、デジタル咸陽文化大典、2024年3月28日閲覧</ref>。同碑には父の病気を治すために、指を切断して血をスープに混ぜて飲ませたところ快癒したとの話が刻まれている。建設時期は1855年とあるが、1617年に編纂された『東国新続三綱行実図(동국신속삼강행실도)』に趙貴千のエピソードが記録されている<ref>[http://db.sejongkorea.org/front/detail.do?bkCode=P12_DS_v001&recordId=P12_DS_e01_v001_2_0860 귀천단지(貴千斷指)] 、世宗ハングル古典、2024年3月28日閲覧</ref>ことから、それ以前の人物であると考えられる。また、これとは別に、両班の身分であった趙貴千が、目が不自由な父の治療に牛の肝臓([[간1|간]])が1000個必要と知り、裕福な家ではなかったことから自ら白丁(ペクチョン、屠畜業に従事する被差別民、백정)となって、牛の肝臓を日々入手して父に届けたとのエピソードもある。牛の肝臓を食べたことで父の病は回復して目が見えるようになったとされ、安義面の名物である[[カルビタン(牛カルビのスープ/갈비탕)|カルビタン]]を語る際に、歴史的な話題として取り上げられることが多い。 |
*居昌郡副郡守のエピソード | *居昌郡副郡守のエピソード | ||
52行目: | 54行目: | ||
:カルビチム([[갈비찜]])は、牛カルビの蒸し煮(「[[カルビチム(牛カルビの煮物/갈비찜)]]」の項目も参照)。下茹でした牛カルビ([[소갈비]])を、タマネギ、ニンジン、キュウリなどの野菜とともに醤油ダレで蒸し煮にして作る。店によっては粉唐辛子を加えたメウンカルビチム(牛カルビの辛煮、[[매운갈비찜]])を用意するところもある。[[カルビタン(牛カルビのスープ/갈비탕)]]と並ぶ、安義面(アニミョン、안의면)の名物料理であり、専門店では両方の料理を提供するところが多い。地名を冠して、安義カルビチム(アニガルビチム、[[안의갈비찜]])とも呼ばれる。 | :カルビチム([[갈비찜]])は、牛カルビの蒸し煮(「[[カルビチム(牛カルビの煮物/갈비찜)]]」の項目も参照)。下茹でした牛カルビ([[소갈비]])を、タマネギ、ニンジン、キュウリなどの野菜とともに醤油ダレで蒸し煮にして作る。店によっては粉唐辛子を加えたメウンカルビチム(牛カルビの辛煮、[[매운갈비찜]])を用意するところもある。[[カルビタン(牛カルビのスープ/갈비탕)]]と並ぶ、安義面(アニミョン、안의면)の名物料理であり、専門店では両方の料理を提供するところが多い。地名を冠して、安義カルビチム(アニガルビチム、[[안의갈비찜]])とも呼ばれる。 | ||
− | === | + | === ソゴギクッパプ(牛肉のスープごはん/소고기국밥) === |
− | :ソゴギクッパプ([[소고기국밥]] | + | :ソゴギクッパプ([[소고기국밥]])は、牛肉のスープごはん。ソゴギ([[소고기]])は牛肉、クッパプ([[국밥]])はスープごはん(クッパ)を意味する。咸陽邑龍坪里(ハミャンウプ ヨンピョンニ、함양읍 용평리)に位置する老舗店「大成食堂(대성식당)」の看板料理として知られ、牛外バラ肉([[양지살]])、牛スネ肉([[사태]])などを煮込んだスープをピリ辛に仕立てて作る。店の開店時期は明確ではないが、2代目店主によると、「朝鮮戦争(1950~53年)の頃には店を開いていた」<ref>[https://www.ohmynews.com/NWS_Web/View/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0002880525 세대교체 이룬 함양 맛집... 소고기국밥의 숨겨둔 비법 공개] 、オーマイニュース2022年11月14日記事、2024年4月10日閲覧</ref>とのこと。 |
=== フッテジグイ(黒豚の焼肉/흑돼지구이) === | === フッテジグイ(黒豚の焼肉/흑돼지구이) === | ||
90行目: | 92行目: | ||
=== 伝統酒 === | === 伝統酒 === | ||
==== ソルソンジュ(ソルソン酒/솔송주) ==== | ==== ソルソンジュ(ソルソン酒/솔송주) ==== | ||
− | : | + | :ソルソンジュ([[솔송주]])は、もち米に松葉、松の芽を加えて造った醸造酒。ソル(솔)は松の固有語、ソン(송)は松の漢字語、ジュ(주)は酒を意味する。ソンスンジュ(松筍酒、[[송순주]])とも呼び、ソンスン([[송순]])は松の芽を指す。14世紀頃から池谷面介坪里(チゴンミョン ケピョンニ、지곡면 개평리)に集住する河東鄭氏(하동정씨)の一族に伝わる酒である。現在は朴興善(パク・フンソン、박흥선)氏が技能保有者であり、[[慶尚南道の料理|慶尚南道]]無形文化財第35号、大韓民国食品名人第27号に指定されている。 |
== 飲食店情報 == | == 飲食店情報 == |