「安東市の料理」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
 
(同じ利用者による、間の17版が非表示)
1行目: 1行目:
 
{{Notice}}
 
{{Notice}}
[[ファイル:25021201.JPG|thumb|400px|河回村で行われている「河回別神グッ仮面劇(하회별신굿탈놀이)」の公演]]
+
[[ファイル:25021202.JPG|400px|thumb|河回村]]
 
'''安東市'''(アンドンシ、안동시)は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の中央部に位置する地域。本ページでは安東市の料理、特産品について解説する。
 
'''安東市'''(アンドンシ、안동시)は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の中央部に位置する地域。本ページでは安東市の料理、特産品について解説する。
  
 
== 地域概要 ==
 
== 地域概要 ==
 
[[ファイル:18112904.JPG|thumb|300px|慶尚北道庁]]
 
[[ファイル:18112904.JPG|thumb|300px|慶尚北道庁]]
安東市は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の道庁所在地。道の中央部に位置し、市の北部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[栄州市の料理|栄州市]]と[[奉化郡の料理|奉化郡]]、東部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[英陽郡の料理|英陽郡]]、南東部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[青松郡の料理|青松郡]]、南部から南西部にかけては[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[義城郡の料理|義城郡]]、西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[醴泉郡の料理|醴泉郡]]と接する。人口は15万2902人(2025年1月)<ref>[https://jumin.mois.go.kr/ 행정동별 주민등록 인구 및 세대현황] 、行政安全部ウェブサイト、2025年2月11日閲覧</ref>。市の面積は1522.3平方キロ(2024年)と[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]ではもっとも大きく、全国の基礎自治団体(市郡)としても[[江原道の料理|江原道]]の[[洪川郡の料理|洪川郡]]、[[麟蹄郡の料理|麟蹄郡]]に次いで3番目に大きい<ref>[https://kosis.kr/statHtml/statHtml.do?orgId=116&tblId=DT_MLTM_2300&conn_path=I2 행정구역별・지목별 국토이용현황_시군구] 、KOSIS(国家統計ポータル)、2026年2月23日閲覧</ref>。
+
安東市は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の道庁所在地。道の中央部に位置し、市の北部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[栄州市の料理|栄州市]]と[[奉化郡の料理|奉化郡]]、東部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[英陽郡の料理|英陽郡]]、南東部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[青松郡の料理|青松郡]]、南部から南西部にかけては[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[義城郡の料理|義城郡]]、西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[醴泉郡の料理|醴泉郡]]と接する。人口は15万1584人(2026年7月)<ref>[https://jumin.mois.go.kr/ 행정동별 주민등록 인구 및 세대현황] 、行政安全部ウェブサイト、2026年8月6日閲覧</ref>。市の面積は1522.3平方キロ(2024年)と[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]ではもっとも大きく、全国の基礎自治団体(市郡)としても[[江原道の料理|江原道]]の[[洪川郡の料理|洪川郡]]、[[麟蹄郡の料理|麟蹄郡]]に次いで3番目に大きい<ref>[https://kosis.kr/statHtml/statHtml.do?orgId=116&tblId=DT_MLTM_2300&conn_path=I2 행정구역별・지목별 국토이용현황_시군구] 、KOSIS(国家統計ポータル)、2026年2月23日閲覧</ref>。
  
 +
;地理
 
市の北側、東側は太白山脈の支脈が伸びて比較的高く、南西部に向けて緩やかに下っている地形をしている。北東部から西部にかけては洛東江(ナクトンガン、낙동강)が流れ、これに東部から流れる半辺川(パンビョンチョン、반변천)が市内で合流する。合流地点の周囲は豊山平野(プンサンピョンヤ、풍산평야)と呼ばれる平野部となっている。市の中東部には洛東江、半辺川を利用したダム湖が作られており、それぞれ安東湖(アンドンホ、안동호)、臨河湖(イマホ、임하호)と呼ぶ。
 
市の北側、東側は太白山脈の支脈が伸びて比較的高く、南西部に向けて緩やかに下っている地形をしている。北東部から西部にかけては洛東江(ナクトンガン、낙동강)が流れ、これに東部から流れる半辺川(パンビョンチョン、반변천)が市内で合流する。合流地点の周囲は豊山平野(プンサンピョンヤ、풍산평야)と呼ばれる平野部となっている。市の中東部には洛東江、半辺川を利用したダム湖が作られており、それぞれ安東湖(アンドンホ、안동호)、臨河湖(イマホ、임하호)と呼ぶ。
  
 +
;観光
 
洛東江の蛇行する豊川面河回里(プンチョンミョン ハフェリ、풍천면 하회리)には豊山柳氏(プンサンリュシ、풍산류씨)の一族が住む河回村(ハフェマウル、하회마을)があり、朝鮮時代の伝統家屋が残るほか、民俗芸能のタルチュム(仮面劇、탈줌)が継承されているなど、昔ながらの文化を伝える民俗村としてユネスコの世界文化遺産にも登録されている。そのほか朝鮮時代の私塾である陶山書院(トサンソウォン、도산서원)や、屏山書院(ピョンサンソウォン、병산서원)、韓国最古の木造建築とされる極楽殿(国宝第15号)を有する鳳停寺(ポンジョンサ、봉정사)など歴史的な見どころを豊富に有する。
 
洛東江の蛇行する豊川面河回里(プンチョンミョン ハフェリ、풍천면 하회리)には豊山柳氏(プンサンリュシ、풍산류씨)の一族が住む河回村(ハフェマウル、하회마을)があり、朝鮮時代の伝統家屋が残るほか、民俗芸能のタルチュム(仮面劇、탈줌)が継承されているなど、昔ながらの文化を伝える民俗村としてユネスコの世界文化遺産にも登録されている。そのほか朝鮮時代の私塾である陶山書院(トサンソウォン、도산서원)や、屏山書院(ピョンサンソウォン、병산서원)、韓国最古の木造建築とされる極楽殿(国宝第15号)を有する鳳停寺(ポンジョンサ、봉정사)など歴史的な見どころを豊富に有する。
  
[[ソウル市の料理|ソウル市]]から安東市までは、ソウル高速バスターミナル、東ソウル総合ターミナルから安東バスターミナルまで高速バスで約2時間40分の距離。また清涼里駅から安東駅まで高速鉄道で約1時間50分の距離である。
+
;アクセス
 +
[[ソウル市の料理|ソウル市]]からのアクセスは、清涼里(チョンニャンニ、청량리)駅から安東駅まで高速鉄道で2時間前後の距離。ソウル高速バスターミナル、東ソウル総合ターミナルから安東ターミナルまで高速バスで約2時間30~45分の距離である。
  
 +
;付記
 
*慶尚北道庁の移転
 
*慶尚北道庁の移転
 
:[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の道庁はもともと[[大邱市の料理|大邱市]]に置かれていたが、2016年2月に安東市の豊川面葛田里(プンチョンミョン カルジョルリ、풍천면 갈전리)へと移転した。
 
:[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の道庁はもともと[[大邱市の料理|大邱市]]に置かれていたが、2016年2月に安東市の豊川面葛田里(プンチョンミョン カルジョルリ、풍천면 갈전리)へと移転した。
  
 
== 食文化の背景 ==
 
== 食文化の背景 ==
[[ファイル:25021202.JPG|thumb|300px|河回村]]
+
[[ファイル:25021201.JPG|300px|thumb|河回村で行われている「河回別神グッ仮面劇(하회별신굿탈놀이)」の公演]]
 
民俗村の河回村(ハフェマウル、하회마을)が昔ながらの暮らしを継承するように、朝鮮時代から続く両班の儒教文化が色濃く残る地域である。食文化においても、祭祀料理を模した[[ホッチェサバプ(祭祀風定食/헛제사밥)]]や、祭祀膳にあげられた[[コドゥンオグイ(サバ焼き/고등어구이)|カンコドゥンオ(塩サバ焼き/간고등어)]]など、両班の暮らしと結びついた郷土料理がある。特産品としては、韓牛([[한우]])、リンゴ([[사과]])、山芋([[마]])があるほか、地酒の[[ソジュ(焼酎/소주)|アンドンソジュ(安東焼酎/안동소주)]]は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の無形文化財第12号に指定されている。
 
民俗村の河回村(ハフェマウル、하회마을)が昔ながらの暮らしを継承するように、朝鮮時代から続く両班の儒教文化が色濃く残る地域である。食文化においても、祭祀料理を模した[[ホッチェサバプ(祭祀風定食/헛제사밥)]]や、祭祀膳にあげられた[[コドゥンオグイ(サバ焼き/고등어구이)|カンコドゥンオ(塩サバ焼き/간고등어)]]など、両班の暮らしと結びついた郷土料理がある。特産品としては、韓牛([[한우]])、リンゴ([[사과]])、山芋([[마]])があるほか、地酒の[[ソジュ(焼酎/소주)|アンドンソジュ(安東焼酎/안동소주)]]は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の無形文化財第12号に指定されている。
  
 
*慶尚北道3大料理書
 
*慶尚北道3大料理書
 
:[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]では、旧家に伝わる料理書として、安東市の『需雲雑方(スウンジャプパン、[[수운잡방]])』、[[英陽郡の料理|英陽郡]]の『[[英陽郡の料理#ウムシクティミバン(飲食知味方/음식디미방)|飲食知味方(ウムシクティミバン/음식디미방)]]』、[[尚州市の料理|尚州市]]の『是議全書(シウィジョンソ、[[시의전서]])』が発見された。いずれも韓国料理の歴史をひも解くには欠かせないもので、3冊を総称して慶尚北道3大料理書と呼ぶ。
 
:[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]では、旧家に伝わる料理書として、安東市の『需雲雑方(スウンジャプパン、[[수운잡방]])』、[[英陽郡の料理|英陽郡]]の『[[英陽郡の料理#ウムシクティミバン(飲食知味方/음식디미방)|飲食知味方(ウムシクティミバン/음식디미방)]]』、[[尚州市の料理|尚州市]]の『是議全書(シウィジョンソ、[[시의전서]])』が発見された。いずれも韓国料理の歴史をひも解くには欠かせないもので、3冊を総称して慶尚北道3大料理書と呼ぶ。
 +
 +
*『需雲雑方』
 +
:『需雲雑方(スウンジャプパン、[[수운잡방]])』は、儒学者の金綏(김유、1491~1555年)が1540年頃に記した料理書。後年、孫の金坽(김령、1577~1641年)が後半部を追記している。ふたりはいずれも安東市の礼安面(イェアンミョン、예안면)の出身であることから同地域の両班料理を記録したものと考えられる。[[安東市の料理#チムタク(鶏と野菜の醤油煮/찜닭)|チムタク(鶏と野菜の醤油煮/찜닭)]]のルーツとの説があるチョンゲア(煎鶏児、전계아)や、地酒の[[安東市の料理#チンメクソジュ(小麦焼酎/진맥소주)|チンメクソジュ(小麦焼酎/진맥소주)]]に関する記述があり、安東市の食文化を知るうえでも重要である。
  
 
== 代表的な料理 ==
 
== 代表的な料理 ==
 
[[ファイル:23010637.JPG|300px|thumb|ホッチェサバプ]]
 
[[ファイル:23010637.JPG|300px|thumb|ホッチェサバプ]]
 
=== ホッチェサバプ(祭祀風定食/헛제사밥) ===
 
=== ホッチェサバプ(祭祀風定食/헛제사밥) ===
:ホッチェサバプ([[헛제사밥]])は、祭祀風定食(「[[ホッチェサバプ(祭祀風定食/헛제사밥)]]」の項目も参照)。安東市の旧家で継承されてきた祭祀料理(제사음식)を定食の形式に仕立てたものを指す。全国的に祭祀料理の定番である[[ナムル(ナムル/나물)]]や、[[チョン(チヂミ/전)]]、タンクッ(祭祀用のスープ、[[탕국]])に加え、安東市の郷土料理である[[コドゥンオグイ(サバ焼き/고등어구이)|カンコドゥンオ(塩サバ焼き/간고등어)]]や、サンオトムベギ(サメの切り身、[[상어돔배기]])などを添えるのが特徴である。ごはんは鉢状の大きなものに盛り付け、[[ナムル(ナムル/나물)|ナムル]]を入れて[[ピビムパプ(ビビンバ/비빔밥)]]として味わうことから、これをアンドンピビムパプ(安東式のビビンバ、[[안동비빔밥]])とも呼ぶ。市内の郷土料理店で味わうことができる。
+
:ホッチェサバプ([[헛제사밥]])は、祭祀風定食(「[[ホッチェサバプ(祭祀風定食/헛제사밥)]]」の項目も参照)。安東市の旧家で継承されてきた祭祀料理(제사음식)を定食の形式に仕立てたものを指す。
 +
 
 +
:祭祀料理の定番である[[ナムル(ナムル/나물)]]や、[[チョン(チヂミ/전)]]、タンクッ(祭祀用のスープ、[[탕국]])に加え、安東市の郷土料理である[[コドゥンオグイ(サバ焼き/고등어구이)|カンコドゥンオ(塩サバ焼き/간고등어)]]や、サンオトムベギ(サメの切り身、[[상어돔배기]])などを添えるのが特徴である。ごはんは鉢状の大きなものに盛り付け、[[ナムル(ナムル/나물)|ナムル]]を入れて[[ピビムパプ(ビビンバ/비빔밥)]]として味わうことから、これをアンドンピビムパプ(安東式のビビンバ、[[안동비빔밥]])とも呼ぶ。
 +
 
 +
:月映橋近くの「カチクモンチプ(까치구멍집)」「味50年ホッチェサバプ(맛50년헛제사밥)」が専門店として有名である。
  
 
=== チムタク(鶏と野菜の醤油煮/찜닭) ===
 
=== チムタク(鶏と野菜の醤油煮/찜닭) ===
84行目: 95行目:
  
 
== 代表的な特産品 ==
 
== 代表的な特産品 ==
[[ファイル:25021206.JPG|thumb|300px|安東チャムマボリパン]]
 
 
安東市の特産品として、安東韓牛([[안동한우]])、安東カンコドゥンオ([[안동간고등어]])、安東焼酎([[안동소주]])のほか、リンゴ([[사과]])、ブドウ([[포도]])、マクワウリ([[참외]])、ショウガ([[생강]])といった農産品や、韓国では韓方材としての利用が多い山芋([[참마]])などがあげられる。食品とは別に、韓紙や、麻を原料とする安東布(안동포)、仮面劇に用いられる仮面のハフェタル(河回面、하회탈)なども有名である。
 
安東市の特産品として、安東韓牛([[안동한우]])、安東カンコドゥンオ([[안동간고등어]])、安東焼酎([[안동소주]])のほか、リンゴ([[사과]])、ブドウ([[포도]])、マクワウリ([[참외]])、ショウガ([[생강]])といった農産品や、韓国では韓方材としての利用が多い山芋([[참마]])などがあげられる。食品とは別に、韓紙や、麻を原料とする安東布(안동포)、仮面劇に用いられる仮面のハフェタル(河回面、하회탈)なども有名である。
 +
 +
=== 安東韓牛 ===
 +
:安東韓牛([[안동한우]])は、安東市で生産される韓牛([[한우]])。2026年1~3月時点の飼育頭数は5万4705頭を数え、全市郡の中で9位である<ref>[https://kosis.kr/statHtml/statHtml.do?orgId=101&tblId=DT_1EO251&conn_path=I2 축종별 시군구별 농장수 및 마리수] 、統計庁、畜産物品質評価院「家畜動向調査」、2026年5月20日閲覧</ref>。
 +
 +
:;安東カルビ横丁
 +
::旧安東駅前の南部洞(ナムブドン、남부동)、雲興洞 (ウヌンドン、운흥동)一帯には[[カルビグイ(牛カルビ焼き/갈비구이)]]の専門店が集まっていて、「安東カルビ横丁(안동갈비골목)」と呼ばれる。牛カルビに刻んだニンニクを加えるのがこの地域の特徴で、店によってはマヌルカルビ(ニンニクカルビ、마늘갈비)の名称でメニューに載せている。ごはんを頼むと、サービスで[[チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비)|メウンカルビチム(辛口の牛カルビ煮/매운갈비찜)]]と、[[シレギクッ(菜っ葉のスープ/시래기국)|シレギテンジャンチゲ(菜っ葉の味噌鍋/시래기된장찌개)]]がついてくる。
 +
 +
:;豊山市場安東韓牛プルコギタウン
 +
::市西部の豊山邑(プンサヌプ、풍산읍)には、豊山市場(プンサンジャント、풍산장터)があり、一帯には畜産農家が直接運営する焼肉店が集まっている。多くの店で[[プルコギ(牛焼肉/불고기)]]を主力メニューとすることから、「安東韓牛プルコギタウン(안동한우 불고기타운)」と呼ばれる。
  
 
=== 安東山薬(山芋) ===
 
=== 安東山薬(山芋) ===
 +
[[ファイル:25021206.JPG|300px|thumb|安東チャムマボリパン]]
 
:安東山薬(アンドンサニャク、[[안동산약]])は、山芋。山薬(サニャク、[[산약]])は山芋の生薬名であり、韓国では薬用のイメージが強いが、主産地の安東市では食用としての利用も盛んである。一般に山芋のことはマ([[마]])と呼ぶため、安東マ([[안동마]])、安東チャムマ([[안동참마]])の名前で呼ばれることも多い。チャムマ([[참마]])は本来ヤマノイモ(自然薯)を指す品種名であるが、ナガイモの俗称としても用いられ、安東市ではナガイモ([[마]]、[[장마]])やイチョウイモ([[산마]])を指すことが多い。
 
:安東山薬(アンドンサニャク、[[안동산약]])は、山芋。山薬(サニャク、[[산약]])は山芋の生薬名であり、韓国では薬用のイメージが強いが、主産地の安東市では食用としての利用も盛んである。一般に山芋のことはマ([[마]])と呼ぶため、安東マ([[안동마]])、安東チャムマ([[안동참마]])の名前で呼ばれることも多い。チャムマ([[참마]])は本来ヤマノイモ(自然薯)を指す品種名であるが、ナガイモの俗称としても用いられ、安東市ではナガイモ([[마]]、[[장마]])やイチョウイモ([[산마]])を指すことが多い。
  
95行目: 115行目:
  
 
:すりおろしたものを飲料として利用することも多いが、日本のようにごはんにかける利用法はほぼ見ない。市内の各地では郷土銘菓のチャムマボリパン(山芋饅頭、[[참마보리빵]])が販売されており、すりおろした山芋を生地に加えることでもっちりとした食感を演出している。同様に麺の生地に練り込んだ、マグクス(山芋麺のうどん、[[마국수]])がある。
 
:すりおろしたものを飲料として利用することも多いが、日本のようにごはんにかける利用法はほぼ見ない。市内の各地では郷土銘菓のチャムマボリパン(山芋饅頭、[[참마보리빵]])が販売されており、すりおろした山芋を生地に加えることでもっちりとした食感を演出している。同様に麺の生地に練り込んだ、マグクス(山芋麺のうどん、[[마국수]])がある。
 +
 +
=== 白真珠米(백진주쌀) ===
 +
:白真珠米(ペクチンジュサル、[[백진주쌀]])は、安東市内で生産されるブランド米。2001年に農村振興庁と安東市農業技術センターが共同で開発した。もち米に近い粘り気を持つのが特徴。白く艶やかな色合いから、真珠に例えて命名された。
  
 
== 代表的な酒類・飲料 ==
 
== 代表的な酒類・飲料 ==
[[ファイル:25021208.JPG|thumb|200px|安東焼酎(民俗酒安東焼酎)]]
+
[[ファイル:25021208.JPG|200px|thumb|安東焼酎(民俗酒安東焼酎)]]
 
=== アンドンソジュ(安東焼酎/안동소주) ===
 
=== アンドンソジュ(安東焼酎/안동소주) ===
 
:アンドンソジュ([[안동소주]])は、安東焼酎(「[[ソジュ(焼酎/소주)]]」の項目も参照)。安東市で生産される伝統製法の米焼酎を指し、2023年4月に発足した安東焼酎組合には9ヶ所の醸造所が加盟している<ref>[https://www.gb.go.kr/Main/page.do?mnu_uid=6792&LARGE_&B_STEP=404948700&cmd=2 안동소주 세계화 1년, BTS같은 글로벌 명주를 빚는다] 、慶尚北道ウェブサイト(2024年4月23日付報道資料)、2025年2月8日閲覧</ref>。このうち、水上洞(スサンドン、수상동)に位置する「民俗酒安東焼酎([[민속주 안동소주]])」と、豊山邑槐亭里(プンサヌプ クェジョンニ、풍산읍 괴정리)に位置する「名人安東焼酎([[명인 안동소주]])」の2ヶ所が特に有名な蔵元として知られている。安東焼酎は、1987年5月に慶尚北道の無形文化財第12号に指定された。
 
:アンドンソジュ([[안동소주]])は、安東焼酎(「[[ソジュ(焼酎/소주)]]」の項目も参照)。安東市で生産される伝統製法の米焼酎を指し、2023年4月に発足した安東焼酎組合には9ヶ所の醸造所が加盟している<ref>[https://www.gb.go.kr/Main/page.do?mnu_uid=6792&LARGE_&B_STEP=404948700&cmd=2 안동소주 세계화 1년, BTS같은 글로벌 명주를 빚는다] 、慶尚北道ウェブサイト(2024年4月23日付報道資料)、2025年2月8日閲覧</ref>。このうち、水上洞(スサンドン、수상동)に位置する「民俗酒安東焼酎([[민속주 안동소주]])」と、豊山邑槐亭里(プンサヌプ クェジョンニ、풍산읍 괴정리)に位置する「名人安東焼酎([[명인 안동소주]])」の2ヶ所が特に有名な蔵元として知られている。安東焼酎は、1987年5月に慶尚北道の無形文化財第12号に指定された。
105行目: 128行目:
  
 
:朝鮮時代は家庭での酒造りが一般的であり、両班の家系で製造法が継承されてきたが、1909年に朝鮮総督府が酒税令を公布したことで難しくなった。代わって醸造を主導したのが、1922年に権台淵(クォン・テヨン、권태연)氏が創業した「安東酒造株式会社」で<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1546434/1/35 『朝鮮銀行月報 第13巻 第9号』, 朝鮮銀行, 1922年(P65)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号35/92)、2025年2月8日閲覧</ref>、家庭用から商業用へと転換したことから知名度の大幅な拡大に至った。1931年に刊行された『慶北沿線発展誌』には、「設立當時の造石數は壹百石に過ぎなかったが、逐年增加して現時は一千石に達し之れが販路は慶北各郡は勿論慶南、忠北、京城方面に及び品質の優良は其の比を見ず名聲嘖々たるもので至る處の品評會に於て常に表彰されてゐる」<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1209972/1/168 『慶北沿線発展誌』, 逵捨蔵, 1931年(P293)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号168/227)、2025年2月8日閲覧</ref>と紹介されている。
 
:朝鮮時代は家庭での酒造りが一般的であり、両班の家系で製造法が継承されてきたが、1909年に朝鮮総督府が酒税令を公布したことで難しくなった。代わって醸造を主導したのが、1922年に権台淵(クォン・テヨン、권태연)氏が創業した「安東酒造株式会社」で<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1546434/1/35 『朝鮮銀行月報 第13巻 第9号』, 朝鮮銀行, 1922年(P65)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号35/92)、2025年2月8日閲覧</ref>、家庭用から商業用へと転換したことから知名度の大幅な拡大に至った。1931年に刊行された『慶北沿線発展誌』には、「設立當時の造石數は壹百石に過ぎなかったが、逐年增加して現時は一千石に達し之れが販路は慶北各郡は勿論慶南、忠北、京城方面に及び品質の優良は其の比を見ず名聲嘖々たるもので至る處の品評會に於て常に表彰されてゐる」<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1209972/1/168 『慶北沿線発展誌』, 逵捨蔵, 1931年(P293)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号168/227)、2025年2月8日閲覧</ref>と紹介されている。
 +
 +
=== チンメクソジュ(小麦焼酎/진맥소주) ===
 +
[[ファイル:26052701.JPG|300px|thumb|チンメクソジュ]]
 +
:チンメクソジュ([[진맥소주]])は、小麦焼酎(真麦焼酎)。チンメク([[진맥]])は漢字で「真麦」と書いて小麦、ソジュ([[소주]])は焼酎を意味する。安東市の旧家で発見された古料理書『需雲雑方(スウンジャプパン、[[수운잡방]])』に製法が記録されており、市北東部の陶山面佳松里(トサンミョン カソンニ、도산면 가송리)に位置する酒造「メンゲ酒都家(メンゲスルドガ、맹개술도가)」が2019年10月に復元して販売している。韓国の伝統酒はヌルク([[누룩]])と呼ばれる小麦麹を用いるため、原料としては小麦100%になる。小麦はすべて有機農の自家栽培である。22度、40度(代表銘柄)、53度の3種に加え、オーク樽で寝かせた熟成焼酎も販売する。
 +
 +
*メンゲ村とメンゲ酒都家
 +
:洛東江(ナクトンガン、낙동강)沿いのメンゲ村(メンゲマウル、맹개마을)には、かつて5軒ほどの家があった。川には橋がかかっていないため、村へ行くためには船に乗るか、浅瀬をトラクターで越えるしかない。移動に不便なことから空き家になっていたのを、パク・ソンホ(박성호)代表が村ごと買い取って「メンゲ酒都家」を創業した。
 +
 +
*『需雲雑方』の記述
 +
:『需雲雑方』には酒の醸造法が多数記載されており、チンメクソジュもそのひとつである。金綏(김유)の記した前半部に収録されており、内容は以下の通りである<ref>尹淑澋(編訳), 1998,『需雲雑方・酒饌』, 신광출판사, P47</ref><ref>[https://koreantk.com/ktkp2014/kfood/kfood-view.view?foodCd=103657 밀소주 眞麥燒酒] 、韓国伝統知識ポータル、2026年5月27日閲覧</ref>。
 +
 +
:「小麦1斗をきれいに洗い、柔らかく蒸した後、よい小麦麹5升と合わせて搗き、甕に入れて冷水1斗を注いでかき混ぜておく。5日後に酒を蒸留すると4升になるが、その味は非常に強い」【原文1】
 +
 +
:【原文1(現代語訳)】「밀 1말을 깨끗이 씻어서 무르게 찐 다음, 좋은 누룩 5되와 함께 찧어서 독에 담고 찬물 1동이를 부어서 저어 둔다. 5일째 되는 날에 술을 고면(燒) 4되(鐥)가 나오는데 그 맛이 매우 독하다」
 +
:【原文1(原文)】「眞麥一斗净洗煇蒸 好麴五升合搗納瓮 冷水一盆注下攪之 第五日燒取酒 四鐥極猛」
  
 
=== アンドンシッケ(安東式の甘酒/안동식혜) ===
 
=== アンドンシッケ(安東式の甘酒/안동식혜) ===
[[ファイル:25021207.JPG|thumb|300px|アンドンシッケ]]
+
[[ファイル:25021207.JPG|300px|thumb|アンドンシッケ]]
:アンドンシッケ([[안동식혜]])は、安東式の甘酒(「[[シッケ(甘酒/식혜)]]」の項目も参照)。ごはんに麦芽粉を溶いた水の上澄みを加え、炊飯器などで発酵させてシッケを作り、細かく刻んだ大根とおろしショウガ、粉唐辛子を加えて仕上げる。一般的なシッケが甘い清涼飲料であるのに対し、アンドンシッケは甘さの中にもピリッと刺激のある味わいになる。
+
:アンドンシッケ([[안동식혜]])は、安東式の甘酒(「[[シッケ(甘酒/식혜)]]」の項目も参照)。ごはんに麦芽粉を溶いた水の上澄みを加え、炊飯器などで発酵させてシッケを作り、細かく刻んだ大根とおろしショウガ、粉唐辛子を加えて仕上げる。一般的なシッケが甘い清涼飲料であるのに対し、アンドンシッケは甘さの中にもピリッと刺激のある味わいになる。市内には専門の販売店があるほか、郷土料理店などでも提供される。
  
 
== 飲食店情報 ==
 
== 飲食店情報 ==
171行目: 209行目:
 
== 関連項目 ==
 
== 関連項目 ==
 
{{DEFAULTSORT:あんとんしのりようり}}
 
{{DEFAULTSORT:あんとんしのりようり}}
 +
*[[カルビグイ(牛カルビ焼き/갈비구이)]]
 
*[[コドゥンオグイ(サバ焼き/고등어구이)]]
 
*[[コドゥンオグイ(サバ焼き/고등어구이)]]
 
*[[クッパプ(クッパ/국밥)]]
 
*[[クッパプ(クッパ/국밥)]]
177行目: 216行目:
 
*[[トゥルチギ(豚肉の炒め物(または鍋)/두루치기)]]
 
*[[トゥルチギ(豚肉の炒め物(または鍋)/두루치기)]]
 
*[[ポソッチョンゴル(キノコ鍋/버섯전골)]]
 
*[[ポソッチョンゴル(キノコ鍋/버섯전골)]]
 +
*[[プルコギ(牛焼肉/불고기)]]
 
*[[ピビムパプ(ビビンバ/비빔밥)]]
 
*[[ピビムパプ(ビビンバ/비빔밥)]]
 
*[[ソクセプルコギ(牛肉の網焼き/석쇠불고기)]]
 
*[[ソクセプルコギ(牛肉の網焼き/석쇠불고기)]]
 
*[[ソゴギクッパプ(牛肉のスープごはん/소고기국밥)]]
 
*[[ソゴギクッパプ(牛肉のスープごはん/소고기국밥)]]
 
*[[ソジュ(焼酎/소주)]]
 
*[[ソジュ(焼酎/소주)]]
 +
*[[シレギクッ(菜っ葉のスープ/시래기국)]]
 
*[[チョン(チヂミ/전)]]
 
*[[チョン(チヂミ/전)]]
 +
*[[チムカルビ(牛カルビの辛い煮物/찜갈비)]]
 
*[[チムタク(鶏と野菜の醤油煮/찜닭)]]
 
*[[チムタク(鶏と野菜の醤油煮/찜닭)]]
 
*[[チキン(韓国チキン/치킨)]]
 
*[[チキン(韓国チキン/치킨)]]
33,950

回編集

案内メニュー