トッポッキ(餅炒め/떡볶이)

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トッポッキ떡볶이)は、棒状に仕立てたうるち米の餅をコチュジャン(唐辛子味噌、고추장)のタレで甘辛く炒めたもの。

名称

トッ()は餅。ポッキ(볶이)は炒める(ポクタ、볶다)という動詞の名詞形。日本語ではトッポギ、トッポキとの表記も見られるが、本辞典においては「トッポッキ」を使用する。発音表記は[떡뽀끼]。

  • 日本における「トッポギ」と「トック」
近年の日本においてはトッポッキ用の棒状に切られた餅を「トッポギ」と称する場合があり、同様にトックッ(韓国式の雑煮/떡국)用の小判型にスライスした餅を「トック」と呼び分けることがあるが、この分類は日本独自のもので韓国とは異なる。韓国語では棒状の餅をカレトク(가래떡、棒状の餅の意)、またはヒントク(흰떡、白い餅の意)と称し、小判型にスライスしたものはトックットク(トックッの餅、떡국떡)のように呼ぶ。

概要

うるち米で作った棒状の餅を、長ネギ、ニンジンなどの野菜とともに炒めて作る。具にはオデン(魚肉練り製品、오뎅)、ゆで卵なども用いられる。コチュジャン、水飴などを混ぜた甘辛いソースで具材を炒め、全体にとろみがつくまで煮詰めるようにして仕上げる。韓国では屋台料理の定番として人気があるほか、粉食店(粉物料理を専門とする食堂、분식점)で提供されることが多く、また専門店も多く営業している。老若男女に好まれるが、特に女性や子どもからの人気が高い料理である。主に間食、または軽めの食事として利用されるが、後述するシンダンドントッポッキ(新堂洞式の餅炒め/신당동떡볶이)は食事としても充分なボリュームがある。

歴史

文献上の記録

トッポッキに関する文献上の記録は19世紀後半から見られる。宮中で食べられていたトッポッキはもともと坡平尹氏(パピョンユンシ、파평윤씨)の家門に伝わる料理であり、17世紀頃には存在したとされる。

『飲食知味方』(1670年頃)の記述
張桂香(チャン・ゲヒャン、장계향)によって1670年頃に書かれた『飲食知味方(음식티미방)』にはトッポッキに関する直接の記述はないものの、餅を焼いて食べる料理法が紹介されている。[1]
『是議全書』(1800年代後半)の記述
1800年代後半に書かれた『是議全書(시의전서)』(原著者不詳)にはトッポッキという項目があり、「他の蒸し煮料理と同じく、上等な餅をサトウダイコンのように切り、少し炒めて作る。蒸し煮料理の材料はすべて入るが、とろみはつけない」(原文1)と記述されている。現代語訳された原文は以下の通りである。
【原文1】
다른 찜과 같이 하되 잘 된 흰떡을 탕무처럼 썰어 잠깐 볶아서 한다. 찜 재료가 모두 들어가나 가루즙만 넣지 않는다.[2]
『酒食方文』(1907年)の記述
1907年(1847年の可能性もある)に書かれた『酒食方文(주식방문)』(原著者不詳)には、トッポッキ(表記は떡복기)という項目があり、以下のように調理法が記述されている。
「醤油味のスープを美味しく作っておき、餅はやや分厚く、細長く切っておく。牛肉と豚肉は血が残らないように洗って細かく刻む。セリと緑豆モヤシを肉とともに味付けをし、全体を和えて炒める。さらに餅とともに炒め、醤油味のスープを注ぐ。シイタケ、イワタケ、卵焼き、干したユウガオ、干したカボチャを入れてもよい」(原文2)
【原文2】(韓国伝統知識ポータルによる現代語訳)
장국을 맛있게 끓여 놓고 흰떡은 도톰하고 길쭉하게 썰어 놓는다. 소고기와 돼지고기는 붉은 핏물이 없도록 씻어서 부드럽게 다진다. 미나리와 숙주를 넣고 고기와 함께 양념하여 무친 다음 볶아 놓는다. 다시 떡과 함께 볶되 장국을 부어 볶고 표고, 석이, 달걀 부친 것, 박우거지, 호박고지도 넣으면 좋다.[3]
『婦人必知』(1915年)の記述
憑虚閣李氏(ピンホガク イシ、빙허각 이씨)によって1915年に書かれた『婦人必知(부인필지)』にはトッポッキの調理法が以下のように紹介されている。
「白い餅を切り、茹で肉や牛の胃袋、ロース肉を草の葉のように薄切りする。油醤(油を混ぜた薬味醤油)を作り、ネギ、シイタケ、イワタケを細切りにし熱した鍋で炒め、熱が通ったら、餅とヤンニョム(薬味ダレ)を入れる。油醤を加えてさらに炒め、じっくり火を通した後、器によそい、松の実、塩、コショウなどすべてのものを多めに入れる」(原文3)
【原文3】
흰떡을 썰어 숙육과 양깃머리, 등심살을 풀잎같이 저민다. 유장을 맞추고, 파, 표고버섯, 석이버섯을 가늘게 썰어 달군 솥에 볶다가 익을 만하거든 떡과 양념을 넣는다. 유장을 더 넣어 다시 볶아 흠씬 익힌 후 퍼서 잣, 소금, 후춧가루 등 온갖 것을 많이 넣는다.[4]
『朝鮮料理製法』(1917年)の記述
方信栄(パン・シニョン、방신영)によって1917年に初めて書かれ、その後も増補を重ねた『朝鮮料理製法(조선요리제법)』にはトッポッキという項目があり、3人分の調理法が詳細に紹介されている。具には薄切りにした牛肉、長ネギ、シイタケ、イワタケ、セリなどが入り、調味料には油、醤油、コショウが使われる。トッピングには錦糸卵と松の実を用いる。[5]
『朝鮮無双新式料理製法』(1924年)の記述
李用基(イ・ヨンギ、이용기)によって1924年に書かれた『朝鮮無双新式料理製法(조선무쌍신식요리제법)』にはトッポッキという項目があり、牛肉、牛の胃袋、シイタケ、イワタケ、マツタケ、長ネギ、セリ、黄花菜(乾燥させたノカンゾウやヤブカンゾウの花、황화채)を具とし、醤油、砂糖、コショウで味付けをし、糸唐辛子、錦糸卵、松の実をトッピングするレシピが紹介されている。また、アレンジとして緑豆モヤシや、エホバク(カボチャの未熟果、애호박)、乾燥エホバクを具としてもよいとある。[6]
『李朝宮廷料理通考』(1957年)の記述
1957年に書かれた『李朝宮廷料理通考(이조궁정요리통고)』は、宮中にて最末期の厨房尚宮(厨房女官)として勤め、初代の朝鮮王朝宮中料理技能保有者(人間国宝に相当)と指定された韓煕順(ハン・ヒスン、한희순)が宮中料理の調理法をまとめた著書である(共著者に黄慧性、李惠卿)。本書には宮中料理としてトッポッキが紹介されており、その調理法が以下のように紹介されている。
「牛肉を細かく刻んで、醤油、砂糖、胡椒、すりゴマ、ゴマ油、ネギ、ニンニクと合わせる。 緑豆モヤシとセリはさっとゆがき、シイタケ、ニンジン、タマネギ、エホバク(カボチャの未熟果、애호박)、オガリ(干し野菜、오가리)などは細切りにして、ゴマ油でそれぞれ別に炒めておく。餅(うるち米で作る棒状のもの)は4cmの長さに切って、再び4等分して熱湯でゆでる。薬味ダレに漬け込んだ牛肉を炒めたところ、茹でた餅を加えて混ぜ合わせる。餅に牛肉の味が染みたら、油で炒めておいた野菜を足し、塩加減を見て、汁が少なくなるように炒める。これを器に盛り、錦糸卵を飾る」(原文4)
【原文4】
소고기를 보드랍게 다저서 양념(간장, 설탕, 후추가루, 깨소금, 참기름, 파, 마늘)에 잰다. 숙주와 미나리는 살작 디쳐놓고 표고, 당근, 옥총, 애호박, 오가리 등은 채로 썰어서 참기름에 따로따로 볶아 놓는다. 흰떡은 4cm기리로 짜르고 다시 사절(四切)하여 끓는물에 삶는다. 소고기 잰것을 볶다가 흰떡 삶은것을 한데넣고 소고기와 함께 버무린다. 흰떡에 고기간이 완전히 배게되면 기름에 볶아놓은 채소들을 함께넣고 간을 맞추고 국물기를 적게하여 볶는다. 이것을 그릇에 담고 알지단을 채로 썰어서 뿌린다.[7]

コチュジャントッポッキの誕生

  • コチュジャン味のトッポッキは朝鮮戦争後に作られ始めたとする説が主流である。ソウル市の中区新堂洞(チュング シンダンドン、중구 신당동)に位置する「マボンニムハルモニトッポッキ(마복림할머니떡볶이)」は1953年創業を掲げており、コチュジャン味のトッポッキを普及させた象徴的な店舗として語られる。創業者であるマ・ボンニム(마복림)さんがコチュジャンとチャジャン(炒めた黒味噌、짜장)を混ぜたソースを開発し、これで味付けをしたトッポッキがおおいに人気を呼んだ。90年代にはコチュジャンのCMにも出演し「고추장 비밀은 며느리도 몰라, 아무도 몰라(コチュジャンの秘密は嫁も知らない、誰も知らない)」というセリフで話題となっている。[8]

韓食の世界化とトッポッキ

  • 2008年に発足した李明博(イ・ミョンバク、이명박)政権は「韓食の世界化(한식세계화)」を掲げ、韓国料理のグローバルな普及を目指した。このとき世界の人々に受け入れられる韓国料理としてプルコギ(牛焼肉/불고기)キムパプ(海苔巻き/김밥)とともにトッポッキの名前もあがり、街中にトッポッキの専門店が増えていく一因となった。韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、2011年6月にソウルで1日5軒のトッポッキ専門店を取材した際、多くの店で店員が「韓食の世界化」の象徴としてトッポッキを語っている姿にたいへん驚いた。そのエピソードは著書『韓国料理には、ご用心!』でも触れられている。[9]

種類

トッポッキには次のような種類がある。

具のバリエーション

インスタントラーメンをトッピングしたトッポッキ。間食というよりも、食事に近いボリューム感がある。
  • チーズトッポッキ(치즈떡볶이)
スライスチーズやシュレッドチーズをトッピングしたトッポッキ。辛さがマイルドになり、濃厚なコクも加わる。
蒸し煮仕立ての海鮮トッポッキ。エビや、ムール貝などを具とした豪華なトッポッキで鍋料理のように提供される。韓国の飲食店「ヘムルトッチム0410(해물떡찜0410)」が火付け役となって2008年に大流行した。

味付けのバリエーション

醤油味のトッポッキ。牛肉を具として用いることが多い。かつて宮中でも作られたとの逸話からクンジュントッポッキ(醤油味の餅炒め/궁중떡볶이)との呼び名もある。2003年に韓国で放映されたドラマ『宮廷女官チャングムの誓い(대장금)』に登場して話題となった。劇中(第14話)では主人公のチャングムが牛肉や干し野菜を具としたトッポッキを作り、梨で加えて甘味を出した醤油を用いて味付けをしている。韓国では『宮廷女官チャングムの誓い』によってカンジャントッポッキの知名度が向上し、一時期ブームにもなった。なお、カンジャントッポッキに対して、一般的なコチュジャン味のトッポッキをコチュジャントッポッキ(고추장떡볶이)と呼ぶこともある。
  • カルボナーラトッポッキ(까르보나라 떡볶이)
カルボナーラ風に仕立てたトッポッキ。韓国の飲食店「SCHOOL FOOD」の人気メニューとしても有名。
  • クリームソーストッポッキ(크림소스 떡볶이)
クリームソースに絡めたトッポッキ。日本の食品メーカー「モランボン」は2012年7月15日に2種類のチーズとクリームソースを用いた「おうち韓食 チーズクリームトッポギ」を発売した。
直訳をすると「油トッポッキ」。油に絡めながら鉄板で炒めて作るトッポッキを指す。ソウル市の通仁市場名物として有名。
  • カレートッポッキ(카레떡볶이)
カレールーを絡めたトッポッキ。
  • チャジャントッポッキ(짜장떡볶이)
チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺/짜장면)風に黒味噌を絡めたトッポッキ。

提供方法のバリエーション

直訳をすると「即席トッポッキ」。乾麺、餃子、ソーセージなど多様な具材を入れて鍋料理のように調理する。一般的なトッポッキが調理済のものを販売するのに対し、チュクソクトッポッキは客の注文ごとに、テーブル上に置いたコンロに鍋を置いて即席で調理することから名付けられた。このスタイルはソウル市の新堂洞(シンダンドン、신당동)が特に有名である。新堂洞には同業の店が林立するトッポッキタウンが形成されており、シンダンドントッポッキ(新堂洞式の餅炒め/신당동떡볶이)の名前は全国に広く知られている。2008年以降にブームとなって専門店が増加した。
  • クンムルトッポッキ(국물떡볶이)
直訳をすると「スープトッポッキ」。甘辛のソースに汁気を持たせたもので、餅をはじめとした具だけでなくスープも味わうことを目的としている。このスープにティギム(天ぷら/튀김)キムパプ(海苔巻き/김밥)を浸して食べるのも定番。
  • トッコチ(떡꼬치)
串に刺した餅にトッポッキのソースをかけたもの。食べやすい新種の屋台料理として登場。

エピソード

  • ドラマ『冬のソナタ』の第2話にトッポッキが登場する。ヒロインのユジン(チェ・ジウ)が主人公であるチュンサン(ペ・ヨンジュン)に好きな食べ物を問いかけるシーンがあり、チュンサンはトッポッキと答えた。また、焼却場のシーンでは、ユジンがサンヒョク(パク・ヨンハ)とトッポッキを作って食べた話をチュンサンに語っている。一連のシーンは韓流ファンらにトッポッキという料理を印象付けた。
  • 韓国ではダッフルコートのことをトッポッキコート(떡볶이 코트)と呼ぶ。ボタンの形がトッポッキの餅に似ていることから。

地域

  • ソウル市中区新堂洞(トッポッキタウン)
前述の「マボンニムハルモニトッポッキ(마복림할머니떡볶이)」をはじめ、チュクソクトッポッキ(鍋料理風の餅炒め、즉석떡볶이)の専門店が集まっている。
  • 済州特別自治道西帰浦市
済州道西帰浦市ではモダッチギ(屋台料理の盛り合わせ、모닥치기)と呼ばれる屋台料理の盛り合わせが地元のB級グルメとして定着している。モダッチギとは済州道の方言で、「みんなで力を合わせる」(모두 합치기)との意味がある。大皿にキムパプ(海苔巻き/김밥)キムチジョン(キムチ入りのチヂミ/김치전)マンドゥ(餃子/만두)、ゆで卵、オデンの魚肉練り製品などを盛り付け、上からトッポッキをかけ回して作る。西帰浦市の西帰浦毎日オルレ市場(ソグィポ メイル オルレシジャン、서귀포 매일 올레시장)内にある「セロナ粉食(새로나분식)」が元祖として知られ、店では「もともとは客からのキムチジョンにトッポッキをかけて欲しいとのリクエストに応えた形で生まれ、それが段々とエスカレートして現在のような形に至った」と説明している(八田靖史の取材記録より、2011年4月1日)。それが他店にも広まって現在は西帰浦市の名物として定着している。

脚注

  1. 황혜성(감수), 2000, 『다시 보고 배우는 음식디미방』, 궁중음식연구원, P97、140
  2. 이효지 외(엮음), 2004,『시의전서』, 신광출판사, P179
  3. 떡볶이, 주식방문(1847년(1907년)) 、韓国伝統知識ポータル、2018年1月28日閲覧
  4. 이효지 외(엮음), 2010,『부인필지』, 교문사, P192~193
  5. 方信栄, 2011, 『朝鮮料理製法(悦話堂韓国近現代書籍復刻叢書)』, 悦話堂, P289~291
  6. 李用基, 1924, 『朝鮮無双新式料理製法』, 永昌書館, P255
  7. 떡볶이, 이조궁정요리통고(1957년) 、韓国伝統知識ポータル、2018年1月28日閲覧
  8. 며느리도 몰라 、YouTube、2014年3月28日閲覧
  9. 八田靖史, 2013, 『韓国料理には、ご用心!』, 三五館, P203-204

外部リンク

制作者関連サイト

関連項目