八田式グルメツアーの作り方!~慶尚北道ファムツアー編(1)

 ずいぶんと手元の忙しい7月、そして8月上旬でした。

 あれこれやろうと思っていたものがほぼ手付かず。ようやく少しだけ手が空いてきましたので、この隙にあれこれと動こうと思っています。たぶん9月以降は目が回るほどの忙しさだと思うので、このお盆休み(とは名ばかりの仕事三昧)がいろいろ勝負の時ですね。

 さて、やらねばならぬことのひとつが6月末に実施した慶尚北道ファムツアーのご報告。

 韓国の地方旅に精通するパワーブロガーのみなさまとともに2泊3日でファムツアーに出かけてきました。ファムツアーというのは自治体主催の地域PRを目的としたツアーで、影響力のある方々にモニターとして地域を巡っていただくもの。「Familiarization Trip(直訳で慣れ親しませる旅)」の冒頭3文字をとってFAMなのですが、まあ、このへんは覚える必要もないですね。

 マスコミツアーとか、ブロガーツアーとかそういった名前でも呼ばれます。

 僕もあちこちお声かけいただいて参加をしましたが、今回ちょっと違ったのは「ファムツアーの行程を作るべし」というミッションをいただいたこと。たいていのファムツアーは自治体のほうでおすすめの場所を選定するのですが、それを外部に任せるというのは新しい試みだったかと思います。普段から旅行会社とのコラボでたくさんのグルメツアーを作ってきましたが、ファムツアーのプロデュースというのは初めてでした。

「じゃあ、せっかくなので凝ったツアーにしてみようか」

 ということで普段のグルメツアーよりもさらに深く掘り込んで、慶尚北道の地域性が見えるような内容を目指してみました。その中身についてはすでに参加者のみなさまが詳細なレポートを書き進めてくれていますので、そちらを主にご覧いただければと思います。

 以下7名の方々とご一緒しました。

ポテサラ男爵さん
ポテサラ、あるいはKOREA DAYS
http://potesalamylife.blog.fc2.com/

ビョンさん
全州にひとめぼれ!大邱が恋しくて!
https://ameblo.jp/byonjeonju2

野原由美さん
韓国餅&韓菓×珈琲教室 〜最強のスイーツペアリング@workshop punson〜
https://ameblo.jp/punson-k-coffee/

本田朋美さん
韓国料理研究家☆本田朋美(ほんだともみ)のコリアンワールド
http://www.tsunagaru-hangul.com/blog

miyumiyuさん
Puok 韓国料理の会 アルムダウン ナラ ~韓国 美しい国~
https://ameblo.jp/arunndaunnnara/

ユッキーさん
Yucky’s Tapestry
https://yukiful.exblog.jp/

よすみまりさん
仁川観光広報大使 江華郡広報大使 よすみまり公式サイト
http://yomogimari.com/

 いずれも韓国料理や韓国の地方旅に精通するみなさまです。

 なので表の部分はみなさまに任せるとして、僕のほうはせっかく裏方として中身を作りましたので、ツアーを裏側から少し書いてみたいなと。タイトルにも書きましたが……。

「八田式グルメツアーの作り方!」

 ということで今回のファムツアーをモチーフに、僕が普段どのようにツアーを組み立てているのかを書き綴ってみたいと思います。

手順1、テーマを考える

 さて、いちばん最初にすることがこれです。

 どんなツアーにしようか考えるという部分ですね。これは旅行会社さんのほうである程度決まっていることもありますし、まっさらな状態から一緒に考えることもあります。

・どこそこ地方の郷土料理を味わう
・韓国のマッコリ文化に触れる
・その季節の美味しいものを味わう

 なんていうのが第1歩。これが何度も回を重ねている三進トラベルの「まんぷくツアー」になると……。

・第7回「まんぷくツアー」光州・全羅南道編
 →国交正常化50周年を踏まえて日韓の食文化交流を訪ねる
・第8回「まんぷくツアー」忠清南道編
 →食の視点から百済を旅する
・第9回「まんぷくツアー」全羅北道編
 →全州のビビンバはなぜ美味しいのか?

 といったもう少し複雑なテーマを設定していたりします。

 とはいえ、これらは募集段階でみなさまに公開するものではなく、旅を通してご参加のみなさんに伝わればいいなという程度。ツアーの最初にご挨拶として簡単に行程の意図を説明したり、あるいは最後のまとめとしてお伝えする場合もありますが、それも絶対に伝えなければならないというほどではないですね。美味しい料理を純粋に楽しんでいただくだけでもなんら問題はありません。

 むしろこのテーマは僕自身のために設定するもの。

 何を伝えたいかを明確にしておくと、ツアーに1本芯が通るというか、目的地をうまく見据えて行程を作ることができるように思います。

 それを踏まえて慶尚北道のファムツアーはこんなテーマを設定しました。

「歴史的なエピソードと結びついた食文化」
「豊かな農産物を活かした郷土料理」

 この2点から慶尚北道という地域を読み解くというのが目指すところです。

 普段のグルメツアーとは違って、ご参加いただくみなさまがいずれも韓国に精通するスペシャリストですし、ファムツアーですから地域の魅力をよく知っていただく必要があります。それを意識して考えた用意したふたつの「切り口」ですね。

 そして、それぞれにさらなる説明を加えますと……。

 まず、慶尚北道という地域は、新羅の都として栄えた慶州(キョンジュ)や、朝鮮時代の暮らしを現代に残す安東(アンドン)など、韓国でも歴史的な見どころに富むところに大きな魅力があります。中でも朝鮮時代に両班たちが集まって住んだ民俗村が数多く残っているのが特徴。

 現在の韓国で村全体が国指定の民俗村に指定されたのは全部で7ヶ所あり、そのうちの4ヶ所(安東の河回村、慶州の良洞村、星州のハンゲ村、栄州のムソム村)が慶尚北道にあります。

 こうした村々では両班の子孫らが朝鮮時代からの伝統を大切に守っています。

 当然のことながら食文化もその中のひとつ。現代の韓国料理を形作る根幹の部分を見直すためには、慶尚北道ほど適した地域はありません。

 そして、もうひとつが農産物という切り口。

 慶尚北道は23ヶ所の市郡で構成されていますが、その中で海に面しているのはわずか5ヶ所(蔚珍盈徳浦項慶州鬱陵)。地域の70.3%が山林という山の多い地域であり、この山林率は江原道に次いで第2位の数字です。山林が多いことから稲作はそこまで盛んではありませんが、斜面を活かした果樹栽培や、高原地域での酪農が基幹産業として栄えました。山菜やキノコ、韓方材の生産地としても有名です。

 こうした土地の農作物を見ることによって、地域の地理を知るというのが狙い。

 慶尚北道は東側に太白山脈が南北に伸び、また北東部から北西部、また南西部にかけて小白山脈が伸びます。東西を山に囲まれた地形というのが慶尚北道の特徴であり、その中央部には洛東江が蛇行しながら流れて平野部を構成します。

 慶尚北道はこういう地形をしていますよ。だからこういう特産品がありますよ。それでこういう郷土料理が生まれたんですよ。という切り口ですね。

 すなわち今回目指したのは「歴史」と「地理」というふたつの軸。

 僕が地方の食を紹介するときに背景の要素としてもっとも重要視するのがこのふたつです。これらを意識しながら2泊3日の行程を組み立てました。どんなツアーになったのかは、繰り返しになりますが参加者みなさんのブログでご覧ください。

 僕のほうではさらに裏の部分からもう少し話を続けてみたいと思います。

 「八田式グルメツアーの作り方!~慶尚北道ファムツアー編(2)」に続きます。
 

<お知らせ>
秋のグルメツアーが2本募集中です。9月は光州・全羅南道、11月は忠清北道。いずれも美味しいものばかりを揃えましたのでぜひご参加ください。

食の宝庫 韓国 全羅道ぐるり旅」 ←募集中
2018年9月4~7日(阪急交通社)

第10回まんぷくツアー(忠清北道編)」 ←募集中
2018年11月3~6日、21~24日(三進トラベルサービス)

 
<八田靖史プロフィール・既刊著書一覧>
https://www.kansyoku-life.com/profile

<最近のお仕事>
新宿区新聞社/定期購読/2018.1.1
るるぶ韓国 ソウル・プサン・済州島’19』(原稿執筆・広告協力)
JCBパブリッシング/1080円/2018.3.7
Kore“an”Night』(ラジオ出演)
LOVE FM/2018.3.31、2018.4.7
もてなしの冷麺「友好の懸け橋に」 南北首脳会談』(コメント提供)
朝日新聞/2018.4.28
『韓国江原道美酒めぐり』(動画出演)
三陟編江陵編洪川編横城編未公開トーク
江原道/2018.6.1
全羅道ぐるり旅』(監修)
韓国観光公社福岡支社/無料/2018.7.17
極皿~食の因数分解(冷麺編)』(番組出演)
BSフジ/2018.7.21, 2018.7.28

<日々のお仕事>
韓国語学習ジャーナルhana Vol. 26』(FOOD連載)
→最新記事「Vol.26 平壌冷麺」 ←2018.6.30発売
『朝日新聞デジタル』(「海峡往来真発見」執筆)
→最新記事「醤油ダレでも『シオヤキ』」 ←2018.6.16UP
『ヒトサラマガジン』(コラム執筆)
→最新記事「真夏の韓国、1メートルを超える巨大な高級魚「ミノ」を味わいに!」 ←2018.7.28UP

<イベント&オフ会情報>
8月19日(日):「“2018全羅道訪問の年”記念 全羅道の食の魅力」 ←募集終了
 ※主催:テーハンミング
8月25日(土):第7回「オレカテ歴史部」(講師:武井一さん) ←募集終了
 ※主催:オレカテ事務局韓食生活
9月4~7日:グルメツアー「食の宝庫 韓国 全羅道ぐるり旅」 ←募集中 NEW!
 ※旅行企画・実施:阪急交通社
9月9日(日):「2018全羅道訪問の年”記念 全羅道の食の魅力」 ←追加募集中 NEW!
 ※主催:テーハンミング
9月12日(水):講座「エゴマを使った韓国料理を味わう」 ←募集中
 ※主催:朝日カルチャーセンター横浜教室
 ※会場:阿佐ヶ谷「HAN COOK」
10月21日(日):第13回「八田靖史の韓食語講座 ~大邱編~」 ←日程確定 NEW!
 ※主催:ウリアカデミー
10月27日(土):第45回「オレカテ」 ←日程確定 NEW!
 ※主催:オレカテ事務局韓食生活
11月3~6日、21~24日:グルメツアー「第10回まんぷくツアー(忠清北道編)」 ←募集中 NEW!
 ※受託販売:三進トラベルサービス
11月18日(日):第46回「オレカテ」 ←日程確定 NEW!
 ※主催:オレカテ事務局韓食生活

※上記商品へのリンクはamazonアソシエイトリンクが使用されています。
 

→韓食生活のトップページに戻る

→最新記事の一覧を見る

この記事のタグ:



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

 

 
 
previous next