市ヶ谷「東京カルメギ」~酵素ビールを飲みながら鹿児島県産のカルメギサル。

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 ブロガーとしてはすっかり堕落したものですが、更新を始めると書きたくもなるもので、久しぶりにグルメレポートもしてみたいと思います。しかも、昨日食べたばっかりのホヤホヤ情報。溜まりに溜まっているオレカテとかツアーとかの後記も書かねばですが、いいお店だったので忘れて流しちゃう前に書いておこうかなと。

 冒頭の写真は、昨年オープン前に撮ってtwitterに流したもの。なんだかずいぶんな反響があって驚いたのですが、お店の方もそれに驚かれたようでいろいろお騒がせしました。

 オープンしたらきちんとお邪魔してご挨拶しようと思っていたのですが、結局ずるずると時間だけが過ぎまして、オープンから1年以上も経ってようやくの訪問です。ブロガーとしてより、もうコリアン・フード・コラムニストとしても堕落しすぎですね……。

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 お店の名前が「東京カルメギ」であるように、看板メニューはカルメギサル(豚ハラミ、갈매기살)。

 韓国では希少部位の中でもよく見るほうで、近年はモクサル(肩ロース、목살)、ハンジョンサル(豚トロ、항정살)、カブリサル(バラ肉を包んでいる肉、가브리살)などとともに、むしろ豚焼肉の定番としてメジャーになってきました。

 以前はカルメギサルというと、それ専門のマニアックな店に目掛けていくような感じでしたが、2010年頃からですかね。豚肉の希少部位が流行って多様化して、あっという間にどこの豚焼肉店でも扱うようになりました。

「カルメギサルってもカモメ(カルメギ=갈매기)の肉じゃないからね!」
「肉を切ったときの形がカモメに似ているからだんだよね!」
「ほかにカロマクサル(横隔膜の肉)がなまった説もあるけどね!」

 いろいろ蘊蓄が面白いのも人気の秘密かもしれません。

 ちなみに、そのへんの話は韓食ペディアカルメギサル」の項目で無駄に細かくまとまっていますので、関心のある方は目を通してみてください。けっこう来歴のしっかり判明している食材です。

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 こちらのお店では専門店らしく、鹿児島県産のカルメギサルを使用。また、豚焼肉だけでなく酵素料理というウリも持っているので、タマネギの酵素に漬け込んで食感をいくぶん和らげつつも、さらに深い味わいを実現しているのがポイントです。

 カルメギサルってシコシコとした食感が持ち味の部位ですが、何も知らない日本人が食べるとやっぱり「固い!」って言われちゃうんですって。それをうまく店のストロングポイントで補った形ですが、食感も残しつつ、むしろいい仕上がりになっていた木がします。

 新しいことをやろうとすると、いろいろ大変ですが、ほかにも……。

「日本だとなかなかカルメギサルだけ仕入れるっていうのが難しくて、普通はみんなモツとして一緒になっているんですよね。それだけ欲しいというのに対応してくれる店が少なくて、ようやく鹿児島の業者さんでやってくれるところが見つかりました。1頭から2~300gしかとれない本当に希少な部位なんですよ」

 店長さんの饒舌な語り口から苦労がよく伝わってきました。

 なお、鉄板の周囲には卵液を注いでケランチム(卵蒸し、계란찜)を作るスタイル。明太子入りなどもありましたが、僕らは炒めたキムチと千切りネギの組み合わせをチョイスしました。

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 ミッパンチャン3種。酵素漬けとおぼしきレンコンが目を引きます。

 なお、ここまでただ酵素と書いてきましたが、韓国で言う「ヒョソ(酵素、효소)」というのは、野菜や果物の砂糖漬けを指します。別に「エキス(엑기스)」という言い方もしますけどね。これを長期間熟成させることで素材から水分が出て、発酵により食物酵素を豊富に含む液体調味料ができあがります。

「甘味はなんでつけているんですか?」
「酵素(またはエキス)です」

 と言われて僕も最初はポカンとしたものですが、最近はようやく飲み込みました。韓国では飲食店でも家庭でも、梅エキスとか、レモンエキスとかを作り、砂糖のかわりによく使っています。

 この店ではそれを店中の至るところに並べるほど大量に作り、料理に使用するほか、酵素ビール、酵素ハイボールという形でドリンクにもなっています。レモンの酵素ビールと、ニンニクの酵素ハイボールを飲んでみましたが、それぞれけっこうイケます。

 レモンの酵素ビールは香りがよく、なにかフルーティなベルギービールあたりを飲んでいるような感覚。対して、酵素ハイボールのほうはニンニクの醤油漬けみたいな香りがしますが、意外に合わないこともなく、ガツンとくるインパクトでぐいぐい進みました。

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 キムチチゲ(キムチ鍋、김치찌개)のようですが、酵素入りのもつ煮込み。

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 小さな壺に入ったトッポッキ(餅炒め、떡볶이)というのもオシャレでしたね。日本の赤味噌で味付けているそうで、色合いも濃いですが、深みのある濃厚な甘さの味付けでした。なんかみたらしみたい、といった感想も。

 中には揚げナスとかサツマイモも入って具だくさんでした。

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 キムチも自家製ですよ、ということで盛り合わせを注文。

 梅の酵素を加えた白菜キムチと、粉唐辛子を使わず日本っぽく仕上げたキュウリのキムチ、そしてパイナップルの酵素を加えたカクトゥギ(大根の角切りキムチ、깍두기)です。

 店長も、店長のお母さんも全州(チョンジュ)のご出身ということで、さすがいい出来ですが、中でもパイナップルのカクトゥギがよかったですね。ガリガリ噛んでいると独特の甘い香りがふわ~っと立ち上って。キムチひとつとっても、酵素を入れ替えるだけで、いろいろなバリエーションが作れそうです。

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 シメは九条ネギとしらすの釜炊きごはん。

 しゃもじでよくかき混ぜて、醤油をちょっとたらしていただきましたが、これは純和風ですね。卓上にゴマ油があったので、それを少量加えてみると、途端に韓国風へと変化しました。

 カルメギサルを2人前頼んで、ドリンクは2人で酵素系を2杯ずつ。それが地味にお高めなので、お会計は1人5000円をちょっと超えるぐらいと少し出ました。場所も市ヶ谷というよりは、大江戸線の牛込神楽坂に近いので、エリア的にもちょっと高めの予算を組んだほうがいいかもですね。

 なお、僕らはそのまま大江戸線で東新宿に出て新大久保での2次会。

 市ヶ谷にせよ、牛込神楽坂にせよ、土地縁がなければまず来ないと思いますが、新大久保と組み合わせることで少し親近感が出てくるかも。また、同じ通り沿いには、タットリタン(鶏肉と野菜の辛口鍋、닭도리탕)の名店もありますので、そんな絡め方をしても面白いツアーになるかと思います。

 

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