栄州物語(1)~栄州と聞いて思い浮かべるものは?

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先日の連休に3泊した慶尚北道栄州(ヨンジュ)市。

僕の中ではいまイチオシの地域となっていて、
あちこちの講座でその魅力を熱弁しております。

頭の中での整理もだいぶついてきましたので、
ブログのほうでも、ひと通りまとめてみたいと思います。
栄州物語と題して、まずはイントロダクションから。

「栄州と聞いてまず思い浮かべるものは?」

と聞いて即答できる人は、たぶん少ないでしょう。
大半の人は、

「どこそれ?」

とクエスチョンマークがまず連想されるはずです。

「安東(アンドン)のひとつ北」
「忠清北道と江原道と慶尚北道の境目」
「まあ、ともかく山の中」

といった感じが前提となる軽い説明。
詳しく知りたい人はWikipediaで慶尚北道のページか、
栄州市のページを見ると、いくらか想像がつくと思います。

むしろ韓流的な切り口で語るなら冒頭の写真。

「ラブレインの1本橋があるところ」

といった説明だとピンとくる人も多いかも。
栄州市のムソム村にこの1本橋があります。

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一方、韓流以外の切り口で語るとどうなるか。
韓国地方旅行研究家の吉村剛史さんに尋ねたところ、

「ソンビ(儒学者)の町!」

という模範的な回答が得られました。さすがです。
栄州市の観光パンフレットを見ると、

「ソンビを訪ねて 栄州への旅立ち」

と表紙に書かれています。
市としていちばんアピールする部分を即答できるのは、
専門家として積み上げたキャリアでしょう。

上の写真は「紹修書院」という韓国初の書院(私塾)。
朝鮮時代、ここで学んだソンビは科挙を受けて官僚になり、
国政を担う人材として育っていきました。

すぐ隣の安東などともよく似た文化圏といえます。

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紹修書院に隣接してソンビ村があります。

ここではソンビの暮らしを知るとともに、
伝統家屋での宿泊体験もできるようになっています。
こんな感じで、

「栄州といえばソンビ!」

というのがまず抑えておくべき基礎知識。
ただし、鉄道に詳しいフォトライターの栗原景さんの場合、

「V-トレイン!」

という答えでした。

Valley(峡谷)のVを取ったV-トレインは、
栄州をはじめとした山間部の景色を満喫できるトロッコ列車。
鉄道という視点から見ると、栄州はそんな土地柄らしいです。
詳しくはぜひ栗原さんの記事でご覧ください。

そして僕の場合は、

「生姜ドーナツ!」

でしたね。
僕ら3人、韓国の地方をウロウロするのが仕事ですが、
ほとんど別の国として旅していることが判明しました。

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少し視点を変えてここは浮石寺。

同名ですが仏像の返還でモメている浮石寺ではないです。
あちらは忠清南道瑞山市の浮石寺で、こちらは栄州の浮石寺。
新羅時代の676年、文武王(第30代)の時代に創建されました。
ちょうど新羅が半島を統一した頃の話ですね。

ドラマ的には「善徳女王」(第27代)のちょっと後。
ユ・スンホ演じる金春秋が、後の武烈王(第29代)として即位し、
その後を継いだのが息子の文武王という歴史的な流れです。

ここからは市の観光担当をしている方からの受け売りですが……。

「栄州は時代によって高句麗だったり新羅だったりしました」

とのこと。
新羅の統一以前は高句麗、百済が鼎立しており、
栄州は双方の勢力がにらみ合う土地だったとのことです。
それはすなわち、

「交通の要衝!」

という部分に集約されますね。

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その背景はこんな写真を見ていただくとよいかと。

栄州と隣接する忠清北道の丹陽(タニャン)で撮りました。
このゆったりとした川は漢江の上流域にある南漢江。

「昔の交通手段を考えると川はKTX(高速鉄道)!」
「丹陽を制する者は、ソウルまで一直線に進めます!」
「隣町の栄州は、山を隔てて丹陽への入口に当たる!」
「だからこそ新羅と高句麗は栄州を争ったのです!」

と語ってくれたのも市の観光担当氏です。

今回、この方に出会えたことで栄州に関する基礎知識を、
最短最速で詰め込めたのは何よりの僥倖でした。

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その丹陽に生まれて、栄州で暮らした人物として、
高麗時代末期から朝鮮時代初期に政治家として活躍した……。

「鄭道伝(チョン・ドジョン)」

という人物がいます。

時代劇好きな方ならご存知かと思いますが、
今年1月からKBS-1で彼を主人公としたドラマが始まっています。
全60話の予定で、明日がちょうど第39話の放映という状況。
KBS WORLDでも5月3日から放送が始まっていますね。

KBS大河ドラマ「鄭道伝(チョン・ドジョン)」
http://www.kbsworld.ne.jp/drama/detail.php?cno=605

すぐ上の写真はそんな鄭道伝が暮らした栄州の家。
3人の判書(長官)が住んだことから三判書古宅と呼ばれます。

という、ここまでが歴史的に見た栄州のポイント。

・三国時代に交通の要衝として新羅と高句麗が争った
・朝鮮時代に優秀な儒学者を育成していた

この2点を抑えつつ……。

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今度は地理的な特徴にも目を向けてみましょう。
先ほど丹陽の写真がありましたが、あれがちょうど栄州の背中。
栄州から北を眺めると、小白山脈がそびえ立って見えます。

この山々のふもとあたりは昼夜の寒暖差が大きく、
気候風土にも恵まれて、野菜、果物の名産地となっています。
ブドウ、モモなども採れますが、いちばんはリンゴ。

浮石寺の参道にもたくさんの露店が出てリンゴを売っていました。

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個人的なオススメはこれ。

スライスしたリンゴを乾燥させたもので、
サグァマルレンイ(사과말랭이)と呼ばれます。
これがまたサックリ食感で、甘味と酸味が豊かで……。

「まあ、びっくりするほど美味しい!」

ただし、露店によってだいぶ味に差があるので、
必ず味見をしてから買うことを推奨します。

ひと袋がW5000で、大きい袋はW1万です。

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そして、もうひとつ。

栄州といえば高麗人参の産地としても有名です。
ただ、栄州という名前でよりも、

「豊基(プンギ)」

という地名のほうが高麗人参では有名ですね。
正確には栄州市豊基邑の名産品。
市内には4ヶ所の高麗人参市場があります。

高麗人参が採れるというのは土地に力があるということ。

リンゴなどの果物に、高麗人参、何首烏などの漢方材を加え、
さらには米や畜産物も名産に数えられるという土地柄です。
市の観光担当氏が、

「栄州は名物がありすぎて逆に焦点を絞りにくい」

と困った顔をしていましたが、
どれをプッシュするか悩むほど名物に恵まれた地域です。

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これが畜産物としての看板で栄州韓牛(ヨンジュハヌ)。

いい感じにサシの入ったカルビサル(骨なしカルビ)ですよね。
不思議なことに、栄州はカルビサルばかり食べるらしいです。
お店のメニューを見て衝撃を受けたのですが……。

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・ハヌカルビサル(韓牛カルビ、한우갈비살)
・コッカルビサル(霜降りカルビ、꽃갈비살)
・アンチャンサル(ハラミ、안창살)
・ファンジェカルビサル(皇帝カルビ、황제갈비)
・ハヌユッケ(韓牛ユッケ、한우육회)

いっぱいあるようで、そのうち3つがカルビサル。

「栄州ではトゥンシム(ロース)なんか食べないからね」

と言われるぐらいカルビサル一辺倒な地域だそうです。

それだけ地元の方が固執するカルビサルですから、
悶えるほどに美味しかったのは言うまでもありません。
カルビサル好きな方は、迷わず栄州に行ってください。

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入口では若社長が真剣にカルビサルをカット。

カルビサルしか食べない町の人に食べさせる肉ですから、
それはもう地元でも最上級のものが集まってくるそうです。
しかも、この店がある栄州洞というエリアは焼肉店の密集地域。
そこで地元人気が高いというのは実力の証拠といえましょう。

店名:東南風(トンナムプン)
住所:慶尚北道栄州市繁栄路173番キル13(栄州洞330-14)
電話:054-635-6842

さて、長くなりましたがここまでがイントロダクション。
先にあげた歴史的なポイントに地理的なポイントを加え……。

・三国時代に交通の要衝として新羅と高句麗が争った
・朝鮮時代に優秀な儒学者を養成していた
・小白山脈を背にして農業、畜産業が盛ん
・リンゴ、高麗人参、韓牛といった名産品がある

という部分を栄州物語の基礎としてとらえます。

次回からさらに深い部分に踏み込んで、あと2回ほどの目算。
三部作として栄州物語を仕上げていこうと考えています。

<栄州物語三部作>
栄州物語(1)~栄州と聞いて思い浮かべるものは?
栄州物語(2)~衝撃の大粒チョングッチャンに出合った日
栄州物語(3)~郷土料理の源流には宮中料理があった

 

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