コリアうめーや!!第278号

コリアうめーや!!第278号

<ごあいさつ>
10月になりました。
今年はどうしたことか残暑が長く、
これを書いているいまも、汗だく状態です。
9月ならまだしも、10月ですからね。
真夏気分なのに、あと3ヶ月で今年が終了という、
なんとも不思議な感覚に驚いています。
いやあ、あと3ヶ月ですかぁ……。
まあ、そんな驚きはさておくとして、
今号では引き続き、江原道出張の報告です。
ただ、3号続けてだとマンネリ感も出てくるので、
切り口だけは、少しいじってみました。
少々いじりすぎたような感もありますが、
そのあたりも含め、ご笑覧頂ければ幸いです。
コリアうめーや!!第278号。
微笑みに手を合わせての、スタートです。

<旌善の名物料理に意外な未来を発見!!>

先日、タイ料理を食べに行く機会があった。

普段から韓国料理ばかりの生活なので、
違う国の料理を食べに行くのは新鮮でいい。
仕事という気持ちもないのでなにより気楽だし、
その一方で勉強になることは多い。

「タイラーメンください!」
「はい、麺の種類はどうしましょう?」
「麺の種類!?」

見ると、メニューに麺の選択肢が書いてある。

・バミー(中華麺)
・センヤイ(平打ちの米麺)
・センレック(中細の米麺)
・センミー(極細の米麺)

と4種類あった。
なるほど、こういうシステムだったか。

「じゃあ、センヤイというのをください」
「はい、スープはどうしましょう?」
「スープ!?」

見ると、汁ありと汁なしも選べるのだった。

「じゃあ、汁なしでください」
「はい、具はどうしましょう?」
「具!?」

見ると、鶏肉やチャーシュー、エビなどがあった。
たぶん慣れれば簡単な話なのだろうけど、
このあたりで、軽く脳みそが茹であがった。

とはいえ、なんとなくの直感で選んだわりに、
出てきた料理は自分の好みにも合って美味しかった。
ほかにも、いろいろ組み合わせを試していけば、
もっとこだわりの注文もできるのだろう。

だが、話の本筋はタイラーメンではない。

ちょうどランチタイムに足を運んだため、
セットでごはん料理やデザート、ドリンクもついた。
鶏肉のバジル炒めごはんも美味しかったが、
それ以上に目を引いたのはデザートのほうだった。

ココナッツミルクにもち米が入ったもの。

最初はアンコが入っているのかと思ったが、
よく見ると、黒米の入ったもち米だった。
また、それに加えて、細切りの黄色いフルーツと、
緑色をした短い麺のようなものも入っている。

……などと書きながら、いま苦心しているのは
その入っているものの詳細に自信がないこと。

書き慣れている韓国料理なら、

「アレとコレとソレが入っていた!」

というふうにビシッと書ける。
しかも、それを調べる時間は皆無に等しい。
だが、タイ料理に関する予備知識はないので、
ここまでの数行にえらく時間を要した。

調べたところ、細切りの黄色いフルーツは、
ジャックフルーツ(和名はパラミツ)と呼ばれるもの。

また、緑色の短い麺はロートチョンという、
米粉やキャッサバなどのでんぷんを固めたもの。
パンダンリーフというハーブで色付けされている。

……と書いてはみたが、いかんせん自信はない。
ネットで調べた結果なので、間違っていたらご容赦を。

ともかくも、そのデザートが衝撃的だった。

美味しかったというのもあるが、それ以上に、
具として入っているロートチョンが衝撃的であった。
これを食べた瞬間、僕の意識は江原道に飛んだ。

ここにきてようやく話は韓国料理に戻る。

8月下旬に出かけた江原道出張の際、
山間部の旌善(チョンソン)という町に立ち寄った。
旌善は民謡のアリランでもたいへん有名だが、
観光地として、五日市場も全国に名を轟かせる。

周辺の地域から山菜や野草、漢方食材が集まり、
大勢の観光客も押し寄せて、おおいに賑わうのだ。

五日市場なので、2と7のつく日しか市は立たないが、
それ以外の日でも、一部の店舗は営業をしている。
雰囲気だけでもと、市の立たない日に足を運んだのだが、
夏休みだったせいか観光客も多く、意外に楽しめた。

個人的にお目当てだったのがコチラ。

・コットゥンチギグクス(鼻打ち麺)
・オルチェンイグクス(オタマジャクシ麺)

旌善の郷土料理であり、五日市場の名物でもある。
名前からして強烈なインパクトがあるため、
旌善に行ったら、ぜひ食べたいと思っていた。

市場内には飲食店の集まった路地があり、
あちこちのぞきながら、適当な1軒に入る。

まず試してみたのはコットゥンチギグクス。

煮干しなどでダシを取った冷たいスープに、
そば粉で作った、やや太めの麺が入っている。

店によっては温かい汁にいれることもあり、
その場合は、味付けが味噌仕立てになるようだ。

具には千切りのキュウリと、刻んだ白菜キムチ、
そしてたっぷりの海苔と、たっぷりのゴマ。
脇の小皿には、唐辛子入りの薬味醤油がついてくる。

まずは麺のほうをすすりこんでみると、
そばというよりは、うどんを食べるような感覚だった。
この骨太な食感こそが、実は名前の由来であり、
勢いよく麺をすすると、跳ねて鼻につくから鼻打ち麺。

せっかくなのでそれも体験してみたいと……。

「ずばばばばばばっ!」

とすすりこんでみたが、汁が飛び跳ねただけで、
残念ながら、麺で鼻を打つまでには至らなかった。
ただ、爽快感にあふれる麺料理ではあり、
暑い日だったこともあって、一気に食べ終えた。

そして、もうひとつがオルチェンイグクス。

こちらはトウモロコシのでんぷんを麺にしたもので、
その形状がオタマジャクシに似ることから名付けられた。
この料理を前にすると、誰しもがいうセリフだが、
決して、オタマジャクシが具に入っている訳ではない。

こちらを追加注文すると、コットゥンチギグクスと、
同じスープに、同じ具が入って出てきた。

だが、その味わいはまるで違う。

コットゥンチギグクスがしっかり麺だったのに対し、
オルチェンイグクスはなんとも頼りない食感。
長さが2~3センチ程度と短いため、すすることもできず、
もそもそ口に入れると、ぐずぐずに崩れていく。

「いやはや、なんというか……」

というのが感想のすべてであり、
だが、それそのものが事前の期待通りであった。

もともと旌善は山地であるために水田が作れず、
そばやトウモロコシで食をつないだ地域。
食の乏しかった時代を知る、貴重な歴史的料理であり、
それを体感できたのが、なによりの満足であった。

だが、である。

ここで冒頭のデザートに話が戻るのだが、
ロートチョンを食べた瞬間……。

「これはオルチェンイグクスだ!」

と確信した。

色合いこそ黄色と緑でだいぶ異なるが、
その形状や、食感はまったく同じであった。
調べてみたところ、作り方もそっくり。

ゆるゆるの生地を穴から通して熱湯に落とすと、
短い長さで固まって、オタマジャクシ風の麺になる。

要するに両者は、煮干しダシのスープに浸すか、
ココナッツミルクに浸すかだけの違いなのだ。

それに気付いた瞬間、雷のような閃きが訪れた。

「オルチェンイグクスの未来はココナッツ味だ!」

……。
……。
……。

うん、鼻で笑ってもいいさ。

でも、いつか旌善をまた訪れる日が来たら、
そのときはココナッツミルクを持って行こうと思う。
そこに、オルチェンイグクスの麺だけを浸せば、
韓泰融合の新スイーツができるではないか。

ココナッツミルクの池で泳ぐオタマジャクシは、
旌善の新たな未来を切り開くのだ。

<店舗情報>
店名:フェドンチプ
住所:江原道旌善郡旌善邑鳳陽里344-1
電話:033-562-2634

<お知らせ>
旌善は予定にないのが残念ですが、
江原道ツアーを11月3~6日の日程で企画しています。
郷土料理ばかりを食べ尽くすグルメ至上の3泊4日。
ぜひ胃袋に気合いを入れてご参加ください。

八田靖史と行くコリアうめーや!江原道・まんぷくツアー4日間
http://www.sanshin-travel.com/original/010/entry/000754.html

<リンク>
ブログ「韓食日記」
http://koriume.blog43.fc2.com/
Twitter
http://twitter.com/kansyoku_nikki
FACE BOOK
http://www.facebook.com/kansyokunikki

<八田氏の独り言>
タイ料理の情報に致命的な間違いがないか、
正直、不安だらけの実験的な内容です。

コリアうめーや!!第278号
2012年10月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com

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