コリアうめーや!!第220号

コリアうめーや!!第220号

<ごあいさつ>
5月1日になりました。
長い冬、寒い4月がようやく終わり、
本格的な暖かさが根付こうとしています。
もうゴールデンウィークですもんね。
いい加減、暖かくなってもらわねば困ります。
新緑の季節、眩しい太陽、涼やかな木陰。
仕事が溜まっているので連休とは無縁ですが、
せめて春気分ぐらい満喫したいものです。
さて、前号でもちらりと触れましたが、
ちょっと長めの日程で韓国に行ってきました。
あちこち地方都市も巡ってきたのですが、
その中から、ちょっと気になる街の話題をひとつ。
あくまでも直感なので、信憑性には欠けますが、
なにかが起こるの可能性を感じてきました。
躍進は今年の下半期か、はたまた来年か。
コリアうめーや!!第220号。
風向きを見つめる、スタートです。

<なぜだ、釜山に神風が吹いている!!>

今回の出張では釜山から韓国入りした。

前回足を運んだのが2008年12月なので、
1年4ヶ月ぶりの釜山上陸となる。
工事中だった南浦洞のロッテ百貨店がオープンし、
寂れかけていた南浦洞に活気が戻った。

「あ、なんかいいな……」

とそのときに思った。

しばらく前までは釜山にも知人が多く、
ソウルに行くついでで、よく立ち寄ったものだ。
最近はふらっと行く機会も少なくなったが、
街中で釜山弁を聞いていると妙に嬉しくなる。

「アイガ!」
「ギラ!」
「ワクラノ!」

と並べるとRPGの呪文みたいだが、
いずれも釜山では日常的に使われる用語ばかり。
ソウルではまず聞かれない言葉だ。

取材で店の人に話を聞くときはえらく苦労するが、
キレイなお姉さんが釜山弁丸出しだと妙にグッと来る。

そんな釜山弁を少しでもマスターしたくて、
これまで何度か挑戦したが、そのたびに諦めた。
単語そのものはともかく、イントネーションが難しい。

無理に練習を重ねると、標準語にも影響を及ぼし、
ただでさえ拙い韓国語の発音が根底から乱れる。

ならば、

「お、兄さんソウルの人だね」
「いえいえ、ソウルで勉強しましたが日本人です」
「へー、ソウル弁だからわからなかった」

という地方ならではの会話を繰り返すほうがいい。

拙い発音でも土地の言葉でなければ、
ソウルの人、というレッテルで韓国人気分を楽しめる。

さて、その釜山であるが、
旅行業界では、いま注目のスポットだそうな。
韓国ファンの視点から見れば、

「え、なんで!?」

というような気分だが、
ここ数年の韓国ブームで状況が変わった。

釜山市の統計によれば、2009年の日本人観光客は、
前年比で17.3%増で、なんと63万人を突破。
この63万人というのがけっこうな数字で、
例えばイタリアや、オーストラリアを超えている。

地方都市レベルで、人気諸外国をも凌駕。

釜山自体にさしたる変化はないのだが、
業界的には数字のインパクトが大きい。

「釜山だけでも充分商売になるじゃん!」

という反応につながった。

また釜山需要の大半は、九州エリアからであり、
営業的な重点スポットがわかりやすいのも利点らしい。
そんな理由から旅行会社や大手ガイドブックは、
昨年から今年にかけて釜山に力を注いでいる。

ということで今回。

取材の傍ら、釜山の流行料理にもアンテナを伸ばしてみた。
韓国の一地方都市としてなら、そこまでではないが、
今後、前面に出てくるなら流行の分析は重要だ。

まあ、行く先々で、

「釜山はどんな料理が流行ってます?」

と聞いてまわった程度だが、
なかなかに興味深い発見があった。

まず昨年、一昨年と僕が力を入れて語った、
ソウルの牛肉ブームがほとんど届いていない。

「釜山はどんな料理が流行ってます?」
「んー、サムギョプサルとかぁ?」

というような反応。

これだけ見ると、流行とは無関係にも思えるが、
南浦洞、西面などの繁華街では確かに豚焼肉が元気だった。
サムギョプサルというのも単純ではなく、

・藁で焼いたサムギョプサル
・薪で焼いたサムギョプサル

といったスモーク系が中心となっている。
全国的に急増した、燻製サムギョプサルの亜流で、
肉を噛み締めたときの香ばしさが持ち味だ。

これに加え、プソッコギ(付属肉)と呼ばれる、
特殊部位の盛り合わせも活況を呈している。

プソッコギというのは、

・ハンジョンサル(豚肩ロース)
・モクサル(豚トロ)
・カルメギサル(豚ハラミ)
・コプテギ(豚皮)
・ティッコギ(端肉の盛り合わせ)

といったサブ的部位の総称。
ざっくり語れば「サムギョプサル以外」なのだが、
内臓部位も含めて盛り合わせにする。
多様な部位を安く楽しめるのが売りである。

それに対し。

昨年、一昨年とソウルで流行った精肉店兼焼肉店や、
新興勢力のユッケ専門店の姿はほとんど見かけなかった。
個人的な推論だが、釜山はもともと豚肉文化が盛んなので、
ソウルの牛肉ブームがあまり影響しなかったのかもしれない。

ソウルと釜山のブームは必ずしも連動しない。
その事実を把握できただけでも大きな収穫である。

ただし。

ソウルでもプソッコギの専門店自体は増えている。
ここ数年、牛肉の影に隠れて存在感が薄かったが、
今回出かけたソウルでは下克上の空気を感じた。

2年続いた韓牛ブームがひと段落したことで、
豚肉への回帰が少しずつ始まっている気がする。

その典型例が、豚カルビと冷麺の組み合わせ。

「焼いた豚カルビで冷麺の麺を包んで食べる!」

という俄かには信じがたい発想が受けている。

・ユクサム冷麺
・コギサム冷麺
・プルサム冷麺

などと名前を変えつつ、
あちらこちらの繁華街に看板が掲げられていた。
この料理がプソッコギとも連動しつつあり、
新たなブームとして注目を集めそうだ。

釜山はずっと豚肉の流れで変わらないが、
全国的な流れも、今後、豚肉方面に傾くとしたら。
旅行業界から注目を浴びたのと同じ図式で、
釜山は棚ボタ的な恩恵を獲得することになる。

また、釜山の強みは近隣地域にもある。

韓流方面から語ると、昨年は慶州が注目を集めた。
MBCのドラマ「善徳女王」の大ヒットで、
舞台となった慶州は、観光客を大幅に増やしたそうだ。

もちろん韓国内からの観光客も含まれているが、
日本人が訪れる場合は、釜山を経由するのが一般的。
釜山には南部地域の玄関口という役割がある。

加えて、今年5月末からは同じくMBCから、
またも釜山の隣、金海市を舞台としたドラマも始まる。

金海市は観光客にとって国際空港の名前で知られるが、
それ以外にも、伽耶の歴史を残す町として有名である。
(金海国際空港も現在は編入されて釜山市に位置)

百済や新羅とほぼ同時期に栄えた国で、
当時の日本とのかかわりも深いとされる。

ドラマで描かれるのは初代王、金首露の一代記。

・西暦42年生まれ
・158年の間、国を統治
・妻はインド出身
・金の卵から生まれたので苗字が金

という神話的な王様ではあるが、
その系統は脈々と続き、現在も子孫が繁栄する……。

というよりも、韓国の苗字ではむしろ最大派閥なのだ。

金海金氏と呼ばれる系統は全国400万人を超えるので、
ざっと数えて、韓国人の12人に1人は金首露の子孫となる。
ご先祖様のドラマであれば、これは見るしかない。

当たれば当然のごとく金海市に観光客が押し寄せる。

金海市には金首露王や、王妃の王陵もあるし、
そもそもドラマの撮影場も、金海市に現在建設中である。
ドラマ終了後は観光地として一般公開される予定だ。

そして食の面から追い討ちをもうひとつ。

先に述べたプソッコギの中にティッコギ(端肉)があるが、
この料理は金海市が本場とされている。

金海市は屠畜場があり、畜産物で栄える町。
金海韓牛も有名だが、豚肉の出荷量もずいぶんと多い。
解体後に残った肉を集めて、まかない的に食べたのがティッコギ。
これが広まって、いつしか全国区の料理になった。

ドラマがうまくヒットし、豚肉回帰の流れも波に乗れば、
相乗的に金海市の注目度は上がっていくはず。

そしてその影響はまた、釜山に返っていくのである……。

というのが今回得た個人的な感想。
都合のいい部分だけを集めたようにも見えるかもしれないが、
どうも釜山には神風が吹いているように感じる。

釜山を攻めるならいまのうち。

時代がやってくるまで、勝手に先読みして、
釜山の美味しいもの探しを、頑張ろうと思う。

<お知らせ>
仕事が忙しくHPの更新ができません。
落ち着いたら、まとめて更新したいと思います。
http://www.koparis.com/~hatta/

<八田氏の独り言>
2011年は大邱で世界陸上開催。
これまた釜山にはプラスに働きそうです。

コリアうめーや!!第220号
2010年5月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com



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