コリアうめーや!!第61号

コリアうめーや!!第61号

<ごあいさつ>
ああ喜ばしい9月の3連休。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。
帰省、海外旅行、あるいは家でゴロ寝でしょうか。
寒かった夏の恨みを晴らすべく、
海やプールに出かけた方もいることでしょう。
ちょうど韓国もお盆休みで5連休。
日本でも、韓国でも、ゆっくり骨休めの数日間です。
さて、そんな連休とは一切関係なく、
八田氏はメルマガに全力投球。
1週間の韓国旅行から戻りまして、
ますますエネルギッシュにお届けしたいと思います。
今回の旅で見つけてきたイチオシ料理。
コリアうめーや!!第61号。
瀬をはやみ岩にせかるるスタートです。

<肉と骨の美味なる再融合!!>

タッカルビではない。トッカルビなのだ。

そこを間違えてもらっては困るのだ。
ぽかんと口を開けて、ハテナマークを頭上に並べたキミ。
耳の穴をドリルでかっぽじって聞きたまえ。

タッカルビではなく、ト・ッ・カ・ル・ビなのである。

タッカルビといえば鶏肉と野菜を鉄板で炒めた料理。
ソウル市内においてはチェーン店が乱立し、
どの繁華街に行っても気軽に食べられる料理だ。
最近では日本においてもそれなりの知名度を得ている。

対照的にトッカルビはソウル市内でもなかなか食べられない。
専門店はほとんど見かけることがないし、そもそもが高級料理だ。
また日本においての知名度もほとんどない。

だからこそ言おう。

タッカルビではなく、トッカルビなのである。

比べてみると両者の名前は非常によく似ている。
日本語ではたった1文字違いであり、韓国語でも1文字違いだ。
これはもう親戚といってもいいくらいの料理かと思うと、これが違う。

名前こそ似ているものの、まったくの無関係。

「鮭のムニエル」と「酒飲むダニエル」くらいの違いがある。

ではそのトッカルビとは何ぞや。

基本的には牛カルビの焼肉なのだが、
その調理法がめったやたらと煩雑で特異である。
簡単に調理の過程を紹介すると以下のようになる。

1、牛カルビの骨をはずす
2、骨からはずした肉を包丁で叩く
3、粗いミンチ状になった肉に味付けをする
4、肉を骨に戻してくっつける
5、網で焼く

うーむ。やはりこの調理のポイントは4だろう。
ざっと見ても不思議だと思わないだろうか。

わざわざ骨付き肉の骨をはずし、
せっかくはずしたと思ったら最後にまたくっつける。
なぜそんな手間をかけるのだろうか。

トッカルビ専門店曰く。

「牛カルビの味を残しながら牛カルビよりも柔らかく仕上げる」

とのことらしい。

トッカルビは肉を叩くだけあって、
見た目はむしろハンバーグに近い。

牛カルビよりもさらに一手間加えるトッカルビ。
その一手間をぜひ味わってみたい。
ということで、トッカルビ専門店に足を運んできた。

出かけていったのはちょうど日曜日の夜。
店はファミリーでごった返していた。

ヨチヨチ歩きの子どもがすっころんで泣き出したり、
幼稚園くらいの子どもが嬉しそうにアイスをなめていたり、
ママがパパにお酒を注いであげたりしていた。

なかなか悪くないアットホームな雰囲気である。

1人前1万7000ウォン(約1700円)のトッカルビを2人前頼む。

ほどなくして白い大皿に乗ったトッカルビが登場。
大皿には油揚げサイズのトッカルビが2枚並んでいた。
ハンバーグというよりは、ステーキのようなボリュームである。

ヨダレをゴクリと飲み込んで箸を突き立てると、
やや抵抗感はあるものの、思い通りの形にちぎれていった。
ステーキ、焼肉では考えられない肉の柔らかさである。

いざトッカルビを口に運ぶ。

肉のちぎれ具合と、叩いてあるという先入観から、
柔らかな食感を期待したが、思いのほか噛みごたえがあった。
柔らかくはあるものの、普通に肉を食べるような感覚を残している。

と同時に甘いタレが舌の上に広がってきた。
とろりと濃厚な甘さが、肉汁と混ざりあって流れる。
こってりとしているが、くどくはない。

思わず口の端がニヤリとゆるむうまさである。

うーむ……これはうまい。

大人でも楽しめるが、子どもが大喜びしそうな味。
柔らかく、甘く、それでいて肉のボリュームもある。
店にファミリーが多いのも頷ける話だ。

箸を次々と繰り出し、夢中で頬張っていく。

すると肉の間から、けっこう存在感のある塊が出てきた。
予想外のところから突然飛び出してくる美味なる不意打ち。
ごろんと大きく切ったニンニクであった。

むむう。なかなか小技がきいているではないか。

さらに肉を探っていくと、骨が出てきた。
どうやらこれが叩いた肉にくっついていた骨らしい。

骨の回りへばりつく肉は最もおいしいと言われる。
ここを味わわねば、カルビを食べる意味がない。
ここだけは手にとってかぶりつく。

うまい、うまいと食べているうちに、
気がつくとトッカルビは皿から姿を消していた。
皿にはカルビの骨が静かに横たわるのみである。

いやあ、うまかった。

さて、ここからは余談。
トッカルビを食べているうちに、ふと思った。
この味、この歯触り、この食感。
何かに似ている……。

なんだろう。
何かに似ている。
なんだろう。
なんだろう……。

あっ!

ロッテリアのプルカルビバーガー。

もちろん味はトッカルビのほうが玄妙だが、
味の方向性としては類似点が多い気がする。

というわけで思いついてしまった大いなる野望。

1、トッカルビを持ち帰りにしてもらう
2、プルカルビバーガーを買ってくる
3、プルカルビバーガーのパティを取り出す
4、かわりにトッカルビをはさむ

推定価格2万ウォン(2千円)。
豪華トッカルビバーガーの出来あがりだ。

くっくっく。
すごい贅沢な気分にならないだろうか。

ちなみにこのトッカルビバーガーは、
八田氏が近日作成した上で、きっちりネタにする予定。
くれぐれも八田氏よりも先にチャレンジしないように。
わかったね、みんな!

<おまけ>
トッカルビを直訳すると「餅カルビ」になります。焼いたその姿が、餅のように平たいところから名付けられたとのこと。全羅南道の郷土料理として知られ、光州、潭陽などには専門店も数多くあります。
ただしソウルには専門店は少なく、焼肉専門店、あるいは韓定食の1品として出されることが多いようです。またトッカルビは冷凍食品としても多く発売されています。こちらは全国のスーパー、コンビニなどで広く購入可能。お弁当のおかずなどとして人気が高いようです。

<お知らせ>
トッカルビの写真がホームページで見られます。
よかったらのぞいてみてください。
http://www.koparis.com/~hatta/

<お知らせ2>
『八田式「イキのいい韓国語あります。」韓国語を勉強しないで勉強した気になる本』は大好評発売中です。コリアうめーや!!では、本を読んだ皆様からの感想をアップしています。まだご購入されていないかたは、ぜひ参考下さい。
http://www.koparis.com/~hatta/news/news_000.htm

<八田氏の独り言>
メルマガ執筆に約2時間。
酒飲むダニエルに丸1日かかりました。

コリアうめーや!!第61号
2003年9月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com



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