コリアうめーや!!第231号

コリアうめーや!!第231号

<ごあいさつ>
10月15日になりました。
ようやく秋の気配も本格化ですが、
日中は日差しの強い日もありますね。
電車に乗っていると冷房が入っており、
夏の猛暑を思い出すこともしばしば。
本当に2010年は夏の長い1年でした。
もうしばらくすればぐっと気温も下がり、
冬の寒さと戦う日々が来るのでしょう。
どうやら来月には韓国出張もありそうですが、
韓国の冬に適応できるか少し心配です。
寒い季節のほうが、美味しいものも多いので、
冬場の出張は楽しみでもありますけどね。
さて、そんな中、今号のメルマガですが、
ちょっと個人的な話を綴ってみました。
最終的には韓国料理と結びつく予定ですが、
途中までは迷走気味に話が進んでいきます。
読者皆様の広い心を期待しつつ。
コリアうめーや!!第231号。
足元の定まらない、スタートです。

<最近できた趣味と韓国式餃子!!>

「仕事が趣味です!」

と言い切れる人でありたくなかった。
自分の好きなことを仕事にした自分だからこそ、
なにか別の趣味を持たねばならないと思った。

僕の好きなこと。

・食べること
・書くこと

そのどちらもが仕事である。
仕事が趣味だという表現よりも、
趣味が仕事だというほうがたぶん正しい。

「本当にうらやましい仕事だよねぇ」

とよく他人から言われるが、
自分で考えても否定できない話である。

誰かと楽しく飲み歩いていても仕事。
仕事の合間にブログを書いていても仕事。
このメルマガだって、一銭の収入にもならないが、
収入以外のところで仕事に結びついている。

「じゃあ、余暇は何をしているの?」

という問いがいちばん悩ましい。

食べたり、飲んだり、何かを書いたりしていて、
それがそのまま余暇であり仕事である。
余暇と仕事の線引きが極めて曖昧な職業だ。

「これではいけない!」

と思ったこと数度。
脳みそを仕事方面にだけ使っていると、
経験は蓄積されても、柔軟さを失う気がする。

「趣味を作らねばいけない!」

という妙な焦燥感をときおり感じ、
発作的に何かを始めたことが、これまでもあった。

・競馬
・大衆酒場巡り
・耳かき収集
・ゲーム(ドラクエ9)
・ウォーキング

ここ最近で振りかえるとこんな感じ。

ただ、競馬は時間がかかりすぎるので断念し、
大衆酒場巡りは、そもそも食の時点で仕事から近い。
自分自身への戒めとして、

「大衆酒場にはデジカメを持ち込まない!」

と決めたが、あまり意味はなかった。

耳かきはいろいろ種類があるのに気付き、
変わった形のものを、いくつか買って試してみた。
序盤向けのごっそり取る用、中盤の小技を効かせる用、
終盤の仕上げ用と分けたが、いつしか面倒になった。

ゲームはドラクエ9の発売時にハマり、
秋葉原まで行ってすれ違い通信まで楽しんだ。
だが、クリアしてしまえばあとは飽きる。

ウォーキングだけは少しずつ続けているが、
これは趣味というより、皮下脂肪との絶え間ない戦い。
仕事の帳尻合わせという気がしないでもない。

「僕には趣味がないのだ!」

と楽しい仕事の日々で苦悩する。
なんとまあ贅沢な、と人は笑うだろうが、
僕にとっては積年の課題であるのだ。

だが、である。

この夏頃から、ひとつ趣味が出来た。
そこにつながったのは、先のドラクエ9。
当時、購入したニンテンドーDSがもったいないので、
ふとしたときにゲームショップへ立ち寄った。

そこで見つけたのが三国志の新作(DS3)だった。

一応、知らない人のために説明しておくと、
三国志とは中国における2~3世紀の歴史物語。
後漢末期から魏、呉、蜀の三国時代を舞台とする、
軍雄たちの歴史物語を「三国志」と呼ぶ。

この時代を扱った文芸作品や映像作品は多く、
近年では『レッドクリフ』が話題を集めた。

ゲームにおいては、プレイヤーが軍雄に成り替わり、
中国全土を統一するというのが主たる目的だ。

僕はいまでこそ韓国文化にどっぷりハマっているが、
小学校から中学までは、むしろ中国に関心を持っていた。
というより、三国志の世界に浸っていた。

友人の家にあったPC98時代のパソコンで、
みんなでわいわい三国志のゲームをしたのがきっかけ。
その後、横山光輝の漫画『三国志』に出会い、
吉川英治の小説なども、夢中になって読み漁った。

あれから20年。

すっかり中国とは無関係な暮らしを続け、
三国時代と聞けば、

「高句麗、百済、新羅!」

と答えるようになっている。
だが……。

「三国志か、懐かしいな……」

ゲームのパッケージを見ながら、ぼそっと呟くと、
次の瞬間にはそれを携えてレジに向かっていた。

そして、このゲームにハマった。

仕事が終わった後、布団にもぐり込んでから少し、
というつもりで始めるのだが、ふと気付くと2時、3時。
睡眠時間を削ってまで、やり込んでいる自分がいる。

ハマり続けて、はや4ヵ月超。

当時の懐かしい記憶がよみがえってくる一方、
大人になって、軍略や人間関係をもより深く味わえる。
いまや関連の小説まで買いあさって読む日々だ。

「これは純粋にハマれる趣味だ!」

僕はいま非常に浮かれているのである。

そこから話は急転して、先日の取材話。
5ヵ月前に新大久保でオープンした、
マンドゥ(韓国式餃子)専門店に足を運んだ。

最近、都内の韓国料理店を巡っていて思うのだが、
個性的な専門店が、ずいぶんと減った気がする。

いや、以前から続いている専門店はあるのだが、
これは! という新規店に出会わないのだ。

日本人に受ける韓国料理が研究されたせいか、
家庭料理とサムギョプサルの店ばかりが増えた。
それはそれで、経験に基づく進化としてよい話だが、
韓国料理好きとしてはちょっと寂しい。

しばらく前までは、

「それはちょっとマニアックすぎません!?」

というような専門店が続々と出来ていた。

・韓国粥の専門店
・韓国式ウナギ焼き専門店
・自分で作る韓国ラーメン専門店
・韓国餅の専門カフェ

独自路線を貫く店がオープンするのを見ては、
日本の韓国料理も幅広くなったと感動していた。
もちろんマニアックな店ほどすぐつぶれてしまったり、
業態変更するので、短い喜びではあったけれど。

そんな中で見つけたマンドゥ専門店だけに、
個人的にも応援したい気持ちになった。

オーナー兼料理長は韓国で17年間、
ひたすらマンドゥだけの修行をしてきたという。
中華料理ならいざ知れず、マンドゥ一筋とは珍しい。
いまの新大久保ではあまり見ない人材だ。

看板料理はマンドゥジョンゴル(餃子鍋)だが、
蒸し餃子や、水餃子、焼き餃子、キムチ餃子もある。
一応、メジャーどころの韓国料理も用意してあるが、
餃子だけでも、いろいろ楽しめるのは嬉しい。

取材は盛り上がって、熱いマンドゥ談義となった。

興味をそそられたのは、その店のマンドゥが、
北朝鮮の「平壌式」であるとの話だった。

マンドゥはもともと中国から伝わっているため、
陸続きの北部地域(北朝鮮)で、より親しまれている。
平壌以外に、開城もマンドゥで有名な地域だ。

平壌マンドゥの特徴は、サイズが大きく無骨なこと。
小さなげんこつぐらいに作り、具もみっしり詰まっている。
ひと口では到底、かぶりつけないのが魅力だ。

といったあたりから、マンドゥに興味が沸いた。

自宅に戻ってから、マンドゥについてあれこれ調べる。

これまでも漠然とした理解はあったが、
改めて調べ直すと、いろいろな発見があるものだ。

「うーむ、マンドゥの世界も奥が深い!」

楽しくなって歴史にも踏み込んで調べていく。

朝鮮半島にマンドゥが伝わったのは高麗時代のこと。
朝鮮時代の文献には、マンドゥの調理法が掲載されており、
雉肉や、魚、貝を使ったマンドゥも作られていた。
宮中で作られていたマンドゥも種類豊富にある。

などなど。

いつの間にやら、その作業に没頭し、
デスクまわりには資料の山が出来ていく。
なんとも楽しいひと時である。

と、そこで重大な事実を発見する。

マンドゥを漢字で書くと「饅頭」となり、
これは中国における「マントウ」に由来する。

いわゆる餃子とは違い、マントウは中華まんの一種。

それが日本では「まんじゅう」として発展したが、
韓国では「マンドゥ=餃子」の名称として定着した。
ひとつの食文化が伝わっていく過程で生じた、
日・韓・中における、興味深いねじれ現象である。

そして、そのマントウの歴史をひも解くと、
3世紀前半の中国にまでさかのぼる。

もともとマントウは「蛮頭」と書き、
「南蛮人の頭」を意味していたとされる。
その南蛮とは、現中国における雲南省のあたり。
そこに濾水と呼ばれる大河がある。

当時、天候が荒れて濾水が氾濫すると、
水神へのいけにえとして人間の首を供えたという。

だが、これを悪しき蛮習として改めた人物がいた。

首のかわりに、小麦粉の皮で羊肉や豚肉を包み、
これを「蛮頭」として捧げ、沈静を祈る。
当然ながら、川の氾濫は治まるべくして治まる。

この儀式が食習慣へとかわり現在のマントウに。

そして、この方法を考案した人物こそが、
蜀の宰相にして「三国志」の主要人物。
稀代の名軍師として名高い諸葛亮孔明である。

ということで話は冒頭に戻る。

「仕事が趣味です!」

と言いたくなかった僕が、やっと見つけた趣味は、
いまここに仕事と結び付いてしまったのである。
韓国料理の話題と絡まってメルマガのネタになり、
もはや「純粋にハマれる趣味」から遠ざかった。

ああ、すべての道は韓国料理に通ず。

それは僕が仕事バカであるためか、
そもそも趣味人に向かない体質であるためか。
自分でも正直よくはわからないのだが、
何をしても韓国料理から逃れられないのはわかった。

「僕に純粋な趣味を!」

半ば諦めつつ叫ぶ、心の声である。

<店舗情報>
店名:たくあん
住所:東京都新宿区大久保1-11-1朝日ビル2階A号
電話:03-3202-3968

<お知らせ>
仕事が忙しくHPの更新ができません。
落ち着いたら、まとめて更新したいと思います。
http://www.koparis.com/~hatta/

<八田氏の独り言>
タッカルビを考案したのは魏の曹操。
そんなフィクション話を作ったこともありました。
http://www.koparis.com/~hatta/ume/ume177.htm

コリアうめーや!!第231号
2010年10月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com



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