コリアうめーや!!第227号

コリアうめーや!!第227号

<ごあいさつ>
8月15日になりました。
日本にとっては終戦記念日ですが、
韓国では光復節(日本統治から解放の日)です。
今年は特に日本統治開始から100年目という、
節目の年だけに注目が集まっていますね。
日韓関係はもろもろ問題が山積みですが、
それぞれ簡単に解決する問題ではありません。
双方の理解が深まってゆくなかで、
少しずつでも前に進めればと願っています。
なんてことを頭のスミでは思いつつ……。
「このキムチチゲ、バカ旨っ!」
と浮かれたことばかり書く日々だったり。
まあ、このメルマガも始めてそろそろ10年ですが、
少なくとも文化面では、だいぶ理解も深まりましたよね。
韓国料理に関する情報はかなりの部分で底上げされ、
このメルマガもずいぶんマニアックになりました。
お付き合い頂いている、読者皆様に感謝をしつつ、
今号でも、さらにマニアックな情報をお届けします。
コリアうめーや!!第227号。
千尋の谷に飛び込む、スタートです。

<梁山で食したあの映画のあの魚!!>

前号で慶尚南道の郷土料理について書いた。

先日、発売になった『るるぶ釜山・慶州』の、
紹介を兼ねた、ダイジェスト版のつもりだった。

金海、昌原、梁山、統営、巨済の5都市。

情報としてはそれなりに豪華だとは思うが、
それぞれの料理は、触れた程度にしか書けなかった。
後は、『るるぶ』本誌のほうを読んでもらえれば、
というつもりだったが、さすがに少し心残りが多い。

ひとつのネタを使いまわすようで恐縮だが、
このエリアの料理を、もう少し語りたいと思う。

というのも、いまは韓国出張の少ない谷間の時期。

とれたてピチピチのネタを紹介しようにも、
残念なことに、今後もしばらく出張予定がない。
読者諸氏においては、

「なんたることだ!」

という噴飯物の話であろうが、
このメルマガにおいてはよくある話でもあったりする。
過去には、ほぼ1年谷間ということもあったし、
何やら宣伝混じりという号もよく見かける。

「仕方ねえなあ……」

と生温かい目で見て頂ければ幸いだ。

とはいえ、谷間とてマイナスばかりではない。
例えば、谷間という表現は野球でもよく使用する。

日程の関係で5連戦、6連戦と試合が続くと、
主軸の投手だけでは、ローテーションを組めなくなる。
すると、普段は中継ぎで使っている投手を先発に回したり、
あるいは2軍からイキのいい若手を引っ張ったりする。

チームを率いる監督にとってはイチかバチかの勝負だが、
チャンスをもらった若手にとってもここは大勝負。

「やってやらぁ!」

と気合を入れて臨むため、
意外に好結果が出たりもするのだ。

翌日のスポーツ新聞には、

「新人の八田、谷間を埋める活躍!」

などと見出しが躍り、
監督もウハウハ顔でコメントを出す。

「いやあ、この勝利はチームにとっても大きいですね」
「ローテーションの谷間で、八田がよく投げました」
「今夜は美人のいる店で、胸の谷間に顔をうずめたいです」

と、最後は禁断の下ネタに走ってしまったが、
ともかくも、そのぐらいの可能性に満ちている。

谷間のメルマガも、大化けする可能性はあるはず。
というあたりから、今号では梁山を取り上げたい。

おそらく先にあげた5都市の中でも、
いちばん地味なのが梁山ではないだろうか。
普段は敗戦処理ばかりの地味な中継ぎを、
思いきって先発に起用したいと思う。

さて、その梁山。

観光の面では韓国三大名刹の通度寺を擁し、
釜山からのワンデートリップの場として人気が高い。
仏舎利を祀った金剛戒壇と大雄殿は国宝に指定。
テンプルステイも積極的に受け入れている。

前号では通度寺の入口に並ぶ飲食店から、
名物の山菜ビビンバを中心に紹介した。

通度寺の裏手にある鷲棲山でとれた山菜を、
ふんだんに盛り込んだビビンバは清涼かつ風雅。
素朴ながらも、豊かな滋味にあふれており、
通度寺を訪れる観光客からも高い人気を集めている。

嬉しいのは具だくさんで山菜が豊富なこと。

ワラビ、キキョウの根、ミツバを中心に、
チィナムル(シラヤマギク)は生と乾燥の両方を使用。
これが実に気前よく、どっさり入っているので、
ごはんよりも、山菜を食べている感覚に陥る。

味付け用のコチュジャンも自家製で秀逸だが、
できれば山菜の味を活かして、少量に留めるのがベスト。
身体の内側まで清々しさで満ちあふれる。

また、人数や胃袋に余裕があるのなら、
トドックイ(ツルニンジン焼き)を足しても可。

しっかり叩いて柔らかくしたツルニンジンに、
コチュジャンのタレを塗って炭火で焼いてある。
この炭火というのがキモで、

「え、何これウナギ!?」

といった味に仕上がる。

ツルニンジンにしては実に食感が柔らかく、
またタレに入ったゴマ油が濃厚さを演出している。
こちらもまた特筆物の逸品であった。

梁山をまず訪れるなら通度寺と入口前の食堂は必須。
ここを梁山美食巡りのその1と認定したい。

そして、その1があるなら2以降も必要。

その2は同じく通度寺近辺から淡水魚料理である。
韓国の内陸地域であれば、どこでも淡水魚は有名だが、
通度寺周辺にも、やはり専門店が集まっている。

店に入ってメニューを見ると、
さすが淡水魚を扱った料理がずらり。

・チャヨンサンメウンタン(天然淡水魚の辛鍋)
・メギメウンタン(ナマズの辛鍋)
・ミンムルジョリム(淡水魚の煮付け)
・ピラミティギム(オイカワのフライ)

といった具合である。

看板料理は天然淡水魚のメウンタン。

使う魚は仕入れによって違うとのことで、
その日に入ったよいものから選んで作ってくれる。
かつては近隣の洛東江でとれたものを使っていたが、
いまは江原道産などが主流になっているとのこと。

「今日、あるものは?」

と尋ねると、ひとつひとつ数えた指が、
どんどん折れていって壮観だった。
しかも、ほとんどが聞いたことのない魚である。

・ポドゥルチ(コウライタカハヤ)
・トンジャゲ(コウライギギ)
・ポングリ(コウライドンコ)
・シュリ(ヤガタムギツク)
・キルムジェンイ(ヤマトシマドジョウ)
・チュジョンゲ(スジシマドジョウ)
・カジェ(ザリガニ)

なんとか聞き取ったものを後で調べ、
日本語訳をつけたものの、和名すら馴染みがない。
名前に「コウライ」とついたものが多いのは、
それが固有種で、他地域に存在しないからだろう。

淡水魚としてもかなりマニアックな面々で、
さりげなくドジョウや、ザリガニまで入っている。

そして、驚いたのが4番目の「シュリ」。

ヤガタムギツクという和名は初めて知ったが、
これは映画「シュリ」の由来となった淡水魚である。
映画としては耳に馴染んだ単語ではあったが、
まさかこれが食用として出てくるとは思わなかった。

店の人曰く、

「この魚は水が清浄である証明」

とのこと。
きれいな川でとったというアピールから、
食材のひとつに加えているそうだ。

これらの淡水魚は、すべて丸ごと鍋に入れ、
ニラ、セリなどの香草と一緒に煮込めば出来上がり。
味付けは味噌を中心に、山椒で香りをつける。

山椒を効かせているので泥臭さも感じず、
ヒリヒリとした辛さが、食欲を引き立てる。
具にはスジェビ(すいとん)も入ってボリューム満点。
内陸部ならではのご馳走という感じであった。

さて、その3は淡水魚料理をもうひとつ。

「なんだ芸のない!」

と思われるかもしれないが、
先のメウンタンとはまた違った淡水魚料理に出会った。

それはなんと養魚場が直営する飲食店。

店の裏手に競技用プールのような池があり、
その至るところで、コイがビチビチ跳ねていた。

ここでは5年かけて丁寧に育てたコイを、
他へ卸すとともに、併設の飲食店でも提供している。
養殖がゆえに、寄生虫などの心配もなく、
健康的なコイを楽しめるというのが店の自慢。

また養魚場には黄土を溶かし込んでおり、
コイがそれを食べることで免疫力も高まるとのこと。
健康的なコイを育てるいちばんの秘訣だそうだ。

店のメニューは、

・インオフェ(コイの刺身)
・インオチム(コイの蒸し煮)
・インオティギム(コイの天ぷら)

といった感じ。

これに加えて、予約限定メニューに、
ヨンボンタン(コイと烏骨鶏の鍋)があった。
漢字で「龍鳳湯」と書く超高級料理で、
コイを龍に、烏骨鶏を鳳凰に見立てている。

残念ながら、ヨンボンタンは食べられなかったが、
刺身と蒸し煮の2品は立派なサイズで堪能してきた。
いずれも韓国らしくボリュームがすごい。

刺身は鮮やかなピンクの身を糸造り。
箸でわさっと取って、チョジャンで食べる。
コチュジャンに酢とゴマ油を混ぜたタレだ。

シコシコとした食感と驚くほど濃厚な甘味。

日本で食べるコイの洗いはあっさりが魅力だが、
こちらは切り方も食べ方も豪快で野趣にあふれる。
モリモリ食べる刺身という感じであった。

一方、蒸し煮のほうも立派なもので、
なんと1.5キロのコイが姿煮で出てきた。

見た目は唐辛子で真っ赤だが、身が分厚いので、
食べてみると、さほど辛さを感じない。
白身のしっかりした食感が煮汁と絡み、
上品、かつ気品のある旨味を引き出している。

いずれの料理もたいへん満足ゆくものであった。

広大な養魚場を作るような場所であるから、
交通は不便だが、それでも足を運ぶ価値のある店。
いずれ機会があれば、プライベートでも出かけ、
食べ逃したヨンボンタンにもチャレンジしたい。

コイと烏骨鶏で、どのようなスープができるのか。
想像しただけでも、ヨダレが出る思いだ。

さて、紹介する料理は以上である。

おそらく梁山の地はさらに探索することで、
今後、その4以降の美食も見つかることだろう。

その片鱗として、

・ヤクテンジャン(生薬入りの在来味噌)
・仙玉竹茶(ワニグチソウ茶)
・松葉酒(松葉を入れた米の醸造酒)

といった単語も耳にしている。
じっくり巡れば、面白いものに出会えそうだ。

しばらくは谷間のメルマガを続けつつ、
いずれの機会を虎視眈々と狙おう。

当面は妄想と反芻の美食旅行。

生温かい目でお付き合い頂きたい。

<店舗情報>
釜山食堂(山菜ビビンバ)
慶尚南道梁山市下北面芝山里4-4
055-382-6426

ムルソリミンムルメウンタン(淡水魚料理)
慶尚南道梁山市下北面蓴池里595
055-381-0035

干井公園(コイ料理)
慶尚南道梁山市下北面龍淵里801-1
055-375-6626

<お知らせ>
仕事が忙しくHPの更新ができません。
落ち着いたら、まとめて更新したいと思います。
http://www.koparis.com/~hatta/

<八田氏の独り言>
谷間と言いつつも力は込めたつもりです。
とかく地味な釜山近郊ですが、行けば魅力満載です。

コリアうめーや!!第227号
2010年8月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

 

 
 
previous next