コリアうめーや!!第207号

コリアうめーや!!第207号

<ごあいさつ>
10月15日になりました。
すっかり空気も冷たくなって、
秋から冬への移行期間を感じております。
冷たい風の吹く日は温かい酒が恋しくなりますね。
ここ最近、飲みに行けばマッコリばかりで、
焼酎や日本酒はすっかりご無沙汰。
ブームが加速していくのは嬉しい限りですが、
季節感のある生活も大事にせねばなりません。
熱燗と湯豆腐! 焼酎のお湯割りに馬刺し!
酒と料理の組み合わせは人生の豊かさでもありますよね。
以前はとりあえず泥酔するまで飲んでいましたが、
そろそろ大人の酒も覚えたい今日この頃ですね。
さて、そして今号のメルマガですが、
季節を戻して、夏の訪韓から紹介しそびれたネタ。
わざわざ酒の話題を冒頭で振ったのには訳があり……。
などと書いてしまうと、もうネタバレですね。
すみやかに本編へと進むことにしましょう。
コリアうめーや!!第207号。
千鳥足覚悟の、スタートです。

<韓国の登山客がザックに潜ませるものとは!!>

唐突ではあるが、ヒマラヤの魅力を語りたい。

大学時代、ワンダーフォーゲル部に所属していた僕は、
国内外のあちこちに出かけて野外活動を楽しんでいた。
といいつつも、実際は1年ちょっとしか所属していなかったが、
大学時代の体験としてはたいへん貴重な時間であった。

ある時は、高知県の四万十川を手製のイカダで下り、
またある時は、20キロ超のザックを背負って北アルプス縦走。
はたまた長野県からヒッチハイクで東京まで戻ってきたり、
逆に東京から青春18切符で丸1日かけて熊本に行ったり。

とにかく若さという元気を無駄にまき散らすのには、
うってつけとの部活動(サークルではない)であった。

1カ月間という長期日程でネパールに行ったのもこの頃。
山岳部ではないので、ヒマラヤにアタックをかけた訳ではないが、
4000mを超える高度でトレッキングを楽しんだ。
ウロウロ歩くだけで、富士山(3776m)をも超える高さだ。

その体験の中で、もっとも記憶に残る景色が2つある。

ひとつはプーンヒルという日の出スポットからの眺め。
そこではアンナプルナ、ダウラギリといったヒマラヤの名峰を、
ご来光とともに、大パノラマで拝むことができる。

暗闇の中から徐々に現れてくる、8000m級の山々は、
雄大であり、神秘的であり、なんとも幻想的な光景であった。

ちなみにそのプーンヒルは標高3194mの高さ。
ヒルというのは丘という意味なので、

「ネパールには3000m級の丘があるのだ!」

という事実にも気付いて感動した。
たぶんネパールでは3000mなど山とも思えないのだろう。
8000m級の山々に比べれば半分にも満たない。

そして、もうひとつの景色はポカラからみたヒマラヤ。

ポカラはネパール第2の都市にして、
湖畔に王族の別荘などが佇むリゾート地。
その優雅な雰囲気もさることながら、
ネパールの地にあって、標高が800mほどと断然低い。

夜中に到着して宿に泊まり、翌日窓を開けて驚いた。

「や、や、山があんなところに!」

800mから眺める、8000m級の山々。
日本的な感覚で見上げる山の位置よりも、はるかに高いところで、
真っ白い山脈が、まるで空に浮くかのように並んでいた。
美しいというより、思わず拝みたくなるほど神々しい姿であった。

あれからもう15年ほどが経過しているが、
2カ所で見たヒマラヤの姿はいまも色あせず記憶に残っている。
その景色と、ポカラで食べた絶品チーズクロワッサンの味は、
これからも一生僕の心の中で、大切な位置を占め続けるだろう。

と、ひとしきりヒマラヤ体験を語りつつ、
一気に6、7000mほど下って韓国の山体験話。

意外といっては失礼だが、韓国には登山好きが多く、
週末になると近所の山へ繰り出すという人はけっこう多い。

健康のため、運動のためという意識も強いようだが、
親しい仲間とわいわい登る楽しさもあるらしい。
中高年を中心に、身近なレジャーのひとつとして定着している。

韓国は最高峰こそ、済州島の漢拏山(1950m)と、
高い山こそ少ないが、ソウル近郊でもそれなりに登山気分は味わえる。
北漢山(834m)、道峰山(740m)、冠岳山(629m)など、
日帰りでさくっと行くのにちょうどいい山がいくつかある。

もちろんソウル以外にも魅力的な山は多い。
個人的には城壁が有名な釜山近郊の金井山(801m)や、
世界遺産に指定される慶州の南山(494m)が印象的だった。

そのうち機会があれば、済州島の漢拏山や、
江原道の名峰、雪岳山(1708m)にも登ってみたい。
これまでずっと食べることばかりに専念していたので、
韓国の美しい山々を制覇するのはほぼ手つかずだ。

だが先日。

ソウル近郊の清渓山(618m)に登る機会があった。
ソウルの瑞草区、京畿道の城南市などにまたがった山で、
市内から近いため、こちらも日帰りで訪れる人が多い。

訪れた理由は第202号でも書いたSBSのロケ。
マッコリ関連の撮影に際し、番組プロデューサーから、

「韓国の山はマッコリを飲みながら登るのだ!」

と聞かされ、その様子を撮影しに行ったのだ。
その話を聞かされたときは、一瞬なるほどとも思ったが、
よくよく考えてみると、とんでもない話である。

登山といえば、どんな高さでも危険と背中合わせ。
山道を酔っ払ってふらふら歩いていたら、
ケガをしたり、道に迷う可能性がぐっと高まる。

山小屋やテントで宿泊する際に飲むならいざ知れず、
登山中に飲むというのは、僕の短い山経験でもありえない。

「飲みながら登るんですか?」

僕が問い返すと、そのプロデューサーは、
さも当たり前という顔で答えた。

「マッコリはもともと農作業の合間に飲んだ酒だからな」
「栄養価もあるし、ほどよいアルコールはエネルギーになる」
「登山中には汗をかくから、水分補給の意味合いもある」
「酔っ払うほど飲んだら危ないけど、適度に飲むなら大丈夫!」

妙に説得力のある回答であった。

そして実際、現地に足を運んでみると。
そこには驚くべき、マッコリ天国が待っていた。

週末とあって、けっこうな人出の登山道。
僕に課された使命は、まず登山客へのインタビューである。
マッコリが好きそうな人を見た目でなんとなく判断し、
もしやザックに入っていませんか、と尋ねる。

僕も最初は半信半疑であったが、展開は早かった。

「あの、もしかしてマッコリ持ってます?」
「ん? ああ、今日は持ってないな」

やっぱりないか……。あれ、でも今日はってことは、
普段は持っているということの裏返しか?

「あの、ザックにマッコリ入っていたりしません?」
「あー、先に行った仲間のザックに入ってるよ」

げげ、本当に持っている人がいるんだ。

「あの、マッコリの取材なんですけど……」
「あはは、ごめんね。もう全部飲んじゃった!」

ザックから出てきたのは、なんとマッコリの空ボトル。
午前中の早い時間から登って、早くも下山の途だとのこと。
このあと麓まで降りて、食堂で本格的に飲むらしい。

「あの、マッコリ……」
「ん、飲むかい?」

声をかけ始めて、わずか4、5人目。
狙い通り、マッコリを背負っている人が現れた。
大学時代の仲間同士で来ているというオジサン方。
やはり韓国人はマッコリを背負いながら山を登るのだ。

せっかくなので少し開けた場所に集まってもらい、
大事に背負ってきたマッコリを見せてもらった。

すると、当然のごとく

「さあ、それじゃ1杯やろうか!」

と、その場でマッコリを飲むことになる。

「いやあ、本当にマッコリ持ってらっしゃるんですねぇ!」
「たくさん飲むと危ないからちょっとだけね」

声をかけたオジサンはにっこりお茶目に笑った。

ちなみに、たくさん飲むと危ないというセリフは、
この後も聞く人、聞く人、合言葉のように口から出てきた。
危険を承知で飲む、という禁断の味がいいのかもしれない。
あるいはつい飲み過ぎてしまう自分への戒めだろうか。

頂いたマッコリを山用のチタンマグカップで頂く。
それでは! と一同で乾杯などをしてみると、
小さなコッヘルやシェラカップなどがぶつかり合った。
コチッという軽い乾杯音は、山ならではの風景だ。

「これも食べるかい?」

と差し出されたのはタッパーに入ったキムチ。
奥さんが早起きして作ってくれたという弁当は、
なんと昼食用とマッコリのつまみ用に分かれていた。

「マッコリにはキムチとか生野菜が合うんだ」

白菜キムチ、大根キムチ、細ネギのキムチとともに、
ざっくり切ったキュウリとコチュジャンのセット。
すすめられるままに食べてみると、確かによく合う。
登山で喉が渇いているため、野菜の瑞々しさが嬉しい。

「いやあっはは、これが山の楽しみだよなぁ」

旧友と楽しげにマッコリを飲むオジサンたちは、
なんとも幸せそうな表情であった。

次の驚きは、やはり開けた休憩スポットにあった。

なんだか大勢の登山客が集まっていると思ったら、
ただ休んでいるだけではなく、みんなマッコリを飲んでいる。
ずいぶん大所帯だな、と思ったらそうではなかった。
なんとマッコリ専門の屋台が出ているではないか。

「さ、お客さん1杯飲んでいって!」

元気な声のお母さんがひしゃくを片手に、
道行く登山客へと声をかけている。
ひしゃくの下には、大きな金属製の容器が置かれており、
そこにはマッコリがなみなみと入っていた。

中をのぞくと、氷水を詰めたペットボトルが沈んでいる。
なるほど、これなら山の中でも冷たいマッコリを提供できる。

せっかくなので1杯もらってみた。

値段は2000ウォンと町中よりは多少高めだが、
下から背負ってくることを考えると妥当な値段だろう。
マッコリを専門に背負うポーターもいるらしい。
見ればマッコリだけでなく、簡単なつまみ類も充実していた。

キュウリ、青唐辛子、タマネギといった生野菜。
そして茹で卵、煮干、ピーナッツなども用意されていた。
野菜と煮干はコチュジャンをつけて食べる。
青唐辛子は醤油漬けにしたチャンアチもあった。

水分補給で栄養補給、そして心のガソリン補給。

頭や首にタオルを巻いた登山客たちが、
ぐーっと1杯あおっては、また元気に登り始める。
日本ではまず見られない独特の光景であった。

その後も、頂上までの間に似たような店が点々とあり、
やはり大勢の人がマッコリとともに休憩をしていた。
店の中には簡易テーブルを用意している場所もあって、
すっかりいい気分で、宴会をしているような人たちもいた。

2時間ほどかけて、ようやく頂上にたどり着くと、
そこにもマッコリを売る店があって賑わっている。

「たくさん飲むと危ないからちょっとだけね」

相変わらず、登山客の誰しもがいうセリフだが、
ここまでたくさん店が並んでいるとちょっと怪しい。
中には休憩地点ごとに、飲んでいる人もいるのではないか。

僕も取材と称してあちこちで飲んでしまったため、
下山するときは、いつもの倍ほど神経を使った。

だが、その下山ルートにもマッコリの店があり、
ついつい吸い寄せられてしまうからたまらない。

店ごとに、ウチは江原道洪川産のマッコリだとか、
あるいは粟で作ったマッコリを自慢にしているとか。
はたまたマッコリ売るとともに、店主がギターを弾き、
みんなで歌って踊るような店もあって違いが楽しめる。

もう登山というよりも、楽しいハシゴ酒である。

山好きで、マッコリ好きな人にはぜひおすすめしたい体験。
ただし、飲酒しながらの登山が危険であるのは言うまでもないので、
あくまでも自己責任と、飲みすぎない自制心が必要である。

要は、

「たくさん飲むと危ないからちょっとだけね」

という合言葉に尽きる。
山で出会う人が、口々にいうのは、
やはりそれが大事なことだからであろう。

どうしても飲みたければ下山してから飲めばいい。
登山道が終わった瞬間から、マッコリを出す店がたくさん並ぶ。
そこでしこたま飲めば、打ち上げ的な雰囲気もあって盛り上がる。

もちろんそこで飲みすぎても問題だけどね。

「家に帰るまでが登山」

そう心に誓える人は、ぜひ試してみて欲しい。

<お知らせ>
仕事が忙しくHPの更新ができません。
落ち着いたら、まとめて更新したいと思います。
http://www.koparis.com/~hatta/

<八田氏の独り言>
大自然に囲まれながら飲むマッコリは美味です。
東京でも高尾山とかでマッコリを売ればいいのに。

コリアうめーや!!第207号
2009年10月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com

登録解除用アドレス
http://www.melonpan.net/mag.php?000669



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