コリアうめーや!!第205号

コリアうめーや!!第205号

<ごあいさつ>
9月15日になりました。
秋の気配も徐々に色濃くなっています。
夏の習慣から半袖を着て外に出ると、
予想外に空気が冷たく驚きますね。
寝ていても肌寒さで明け方に目が覚めたり。
季節の移り変わりを気温で感じる一方、
個人的には食欲の秋にも全力で邁進おります。
空に浮かぶ一面のイワシ雲には見向きもせず、
スーパーに出かけて特売のサンマをゲット。
居酒屋では戻りガツオに心をときめかせつつ、
脂の乗ってくる白身魚にも目移りしています。
魚の美味しい国に生まれてよかった!
と叫びつつ、肉も野菜も美味しく食べる日々。
まあ、毎年のことですけどね。
そんな僕の些細な日常はさておいて。
今号のコリアうめーや!!では少し趣向を変え、
日本の郷土料理をテーマに選んでみました。
うまく韓国の話題に結びついたらお慰み。
コリアうめーや!!第205号。
ちょっぴり見切り発車の、スタートです。

<韓食好きがドキドキする日本の郷土料理!!>

「じゃあ、今日は下呂まで行きます!」

車に乗るなり、運転席の友人がいった。
僕はそのとき下呂がどこにあるのかわからず、

「いいですねー!」

と脊髄反射のように言葉を返した。
助手席に乗り込んでシートベルトを締め、
後部座席の友人らとも挨拶を交わす。

9月上旬のとある土曜日。

僕は妻の実家である愛知県に帰省していた。
帰省といえば、家族とのんびりというのが普通だが、
ちょうど妻には地元で結婚式の予定があった。

「2次会も遅い時間からだから戻りは10時ぐらいかな」
「ずっとひとりで家にいるのもなんだよね」
「せっかくだから、どこかで遊んできたら?」

ということで隣県の岐阜に住む友人へ連絡。
ぽっかり空いた1日を、一緒に遊んでもらうことにした。
義母の運転する車で最寄り駅まで送ってもらい、
岐阜から来た友人の車へと乗り換える。

「じゃあ、今日は下呂まで行きます!」
「いいですねー!」

基本的に土地感のない僕だが、

「下呂=岐阜県内」

という認識ぐらいはあった。

「下呂って初めてですけど近いんですか?」
「120キロぐらいですね。片道2時間の距離です」
「え、2時間?」

友人の口調は、ちょっとそこまでという感じだったが、
片道2時間というのは、往復4時間である。

「下呂でぜひ食べて欲しいものがあるんですよ!」
「時間が余るようなら温泉に寄ってもいいんですが……」
「強行軍なので、たぶん食べて帰るだけです!」
「それだけのために行く、というのがいいですよね!」

ああ、この人は僕のことをよく知っている。

岐阜に行くことだけを伝えてノープランだった僕は、
そのセリフを聞いて涙が出る思いだった。

この日、僕らが目指したのは「鶏ちゃん焼き」。

下呂、高山、郡上を中心とする岐阜の郷土料理で、
料理名の「鶏」部分は「けい」と発音する。
「とりちゃん焼き」ではなく「けいちゃん焼き」。
場合によって「焼き」を省略し「鶏ちゃん」とも呼ぶそうだ。

名前が示す通り、鶏肉を焼いた料理なのだが、
「ちゃん」の部分にちょっとした魅力を感じる。

だれだれちゃん、という愛称に近いネーミングか、
あるいは北海道料理の「ちゃんちゃん焼き」に近いのか。
語源や料理の歴史も含めて、由来は諸説あるようで、
ネットなどでの情報では、どうも確証が得られない。

僕と岐阜の友人との間で、この料理が話題になったのは、
前回仕事で岐阜を訪れた2007年4月のこと。

東京に帰る直前に、友人が飛騨高山の土産として、
自宅で作れる手軽な「鶏ちゃん焼き」パックをくれた。
僕はそのときの経緯をブログに書き記している。

=========================
その名もケイちゃん焼き。鶏ちゃん焼きとも書くようですね。
飛騨高山といえば、まず朴葉味噌などを思い浮かべるところですが、
このケイちゃん焼きも、地元ではかなりメジャーな料理だとか。

これをくれた人曰く、

「韓国とも関係があると思うんですよ!」

とのこと。

確かに焼肉関係の用語にも近そうな語感ですよね。
コプチャン(小腸)、テッチャン(大腸)、のチャンが共通。
この日食べたケイちゃん焼きは胸肉とモモ肉だけでしたが、
店によっては鶏のモツも一緒に混ぜ込むことがあるそうです。

調べてみると、確かに韓国由来という説はある様子。
確かなことはわからないようですが、コチラの記事が詳しかったです。
http://www.keichanyaki.com/archive/19/108.html

韓食日記「自宅で飛騨高山名物のケイちゃん焼き。」より
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-469.html
=========================

日本の各地で、個性的な郷土料理に出会い、
それが、もしかしたら韓国と関係があるのでは!?
と考えてしまうのは韓食好きの常である。

特に唐辛子やニンニク、ゴマ油あたりが使われていると、
瞬間的にテンションがあがって大変なことになる。

ただその推測はまるで無関係の邪推かもしれないし、
安易に韓国と結びつけるのは作った人にも失礼である。
でも、ひょっとしたらと考え、調べていくプロセスは、
宝探しや謎解きをしているようで楽しい。

鶏ちゃん焼きのパックを土産をもらって以来、
僕らの間では、

「いつか本場で確認しよう!」

というのが合言葉だった。
その機会が、ついにやってきたのである。

目的とした店は、予想を超えて遠かった。
到着してみると出発してから2時間半。

往復5時間かけて鶏ちゃん焼きを目指した計算になる。

往復5時間といえば、新幹線での東京、大阪間と同程度。
東京から新幹線に乗って、大阪駅でたこ焼きを食べて、
そのまま戻ってくるぐらいのアホなスケジュールだ。

ただ最近でこそ、こういったアホ企画から遠ざかっているが、
数年前まではアホな企画にこそ情熱を燃やしていた。

「こういうことは自分からやらねば……」

企画を練ってくれた友人に感謝をしつつ、
助手席で僕はひとり、妙な反省に浸っていた。

そんな僕を横目に、車は目的地へと到着。

鶏ちゃん焼きの元祖格とされる「まるはち食堂」は、
国道からも外れた田んぼだらけの一帯にあった。

「この店の営業時間は17時までなんですよ」

時計を見るとすでに15時を回っている。
昼から営業を始めて、夕食前には終わるらしい。
飲む店ではなく、食事用の店なのだろう。
店内に入ると、もうほとんど最後の客だった。

座敷に陣取って、鶏ちゃん焼きを人数分頼む。
ほどなく、テーブル中央の卓上コンロに置かれたのは、
なにやら紙の敷かれたジンギスカン風の鍋であった。
使い込まれた鉄製で、中央部分がぐっと盛り上がっている。

「うむ、プルコギ鍋に似ていますね」

そんなセリフがつい漏れる。
だが、鍋に紙を敷いて焼くというのは独特。
見ると卓上にはメニューと並んで店からの注意書きがあり、
「まるはち規則」として6箇条の文言が並んでいた。

一、箸を持ったら離さない。
二、紙を破らない。
三、火の調節を常にする。
四、紙を破りそうな気がしたら箸で肉かキャベツを押さえながら混ぜる。
五、肉やキャベツが無くなる前に皿にある肉やキャベツを載せていく。
六、とにかく肉が来たらすぐ混ぜる。

なんでも紙は焦げ付きをなくすとともに、
タレの蒸発を防ぎ、肉を蒸し焼きにする効果があるとのこと。
よく考えられた上での「まるはち規則」なのだろうが、
初めての客には、ややハードルが高そうだ。

と思ったら……。

「紙を破っちゃいけないんだって!」
「よし、破った人が全員の会計を持つことにしよう!」
「えー、じゃあわたし手を出さない!」
「手を出さなきゃ食べられないじゃん!」

なんだかんだ盛り上がる規則でもあるようだ。

鍋の上に乗るのはせいぜい2人分程度で、
残りは大皿に盛られ、追加用として運ばれてきた。
ぶつ切りにした鶏肉とキャベツにタレが絡んでいる。
シンプルな料理で他の食材は入っていない。

むしろ具よりもタレが肝心なのだろう。

味噌をベースにニンニクの香りが効いている。
後々調べたところによると、自家製の特製味噌に加え、
醤油、砂糖、ニンニクなどを配合しているらしい。

もともと料理に関心の高いメンバーだけに、
味の分析などもしながら、どんどん肉を消費していく。
ほどよい塩気のタレ鶏肉とキャベツによく絡み、
なんともごはんによく合う料理であった。

「美味しいね!」
「うん、来てよかった!」

と盛り上がる一方、

「そこ、箸を置かないように!」
「そろそろ具を足したほうがいいんじゃない!?」
「火の調節もこまめにするんだよ!」
「ああっ、紙を破いた!」

など互いを牽制するセリフも飛び交う。

店の人に注意されたらプレッシャーだろうが、
身内で盛り上がりながら食べるには規則もなかなか楽しい。
実際、店の人が神経質に見ている訳でもなく、
美味しく食べるためのコツという程度のようだった。

あっという間に人数分がなくなって追加を注文。

鶏肉、キャベツもそれぞれ美味しかったが、
何よりも、鶏皮がとろとろになって口の中で溶ける。
脂とろとろのホルモンを食べているような食感。

「鶏皮ってこんなに美味しかった!?」

と身悶えするような感動であった。

追加分も含めて、ほぼ食べ終わった頃。
ややタイミングを逃しながらも、ひとつの発見があった。
テーブルの箸、調味料類が置かれている一群の中に、

「おや!?」

と興味をそそられるものがあった。
それは薬味として用意された粉末の唐辛子。
これがいわゆる日本の一味唐辛子ではなく、
見るからに粗挽きのコチュカル(粉唐辛子)である。

唐辛子に造詣の深い友人が少量舐めてみる。

「む!?」

と輝いた目がこの日最大の衝撃を語っていた。
辛味よりも甘味が強く、天日で干したとおぼしき風味。
本当に韓国産だったとしたらかなりの上物である。

もはや残り少ない鶏ちゃん焼きだったが、
振りかけてみると、キリッと味が引き締まった。

「これは本当に韓国と関係があるのかもしれない!」

来る前はおぼろげだった仮説が、
途端に本気度を帯びてきた瞬間だった。

ほかにも岐阜近辺では豚焼肉、または豚ホルモンを、
「豚ちゃん焼き」と呼ぶなど気になる点が多い。
ネーミングはそこから転じたとの説もあるようだ。

僕らも韓食好きとして似た匂いを嗅ぎ取ってきたが、
そこに確たる証拠はなく、まるで無関係という可能性もある。

店の人に聞けばはっきりするかもしれないが、
閉店間際ということもあって、今回は何も聞けなかった。
いずれ機会があったらぜひ質問してみたい。

だが、あえてそれをしない楽しみもあるような気がする。

郷土料理を味わう上では邪道かもしれないが、
韓食好きとしては、なんとも楽しい時間であった。

時代を分かたず、隣国同士は文化の往来があるもの。

日本の各地に伝わる郷土料理の中には、
時折、日韓を結ぶ食文化の足跡がちらほら垣間見える。
もちろんそこには複雑な歴史もあったりするのだが、
現代の日本が誇る食文化の一端に違いはない。

目に見えない過去の日韓交流を妄想しながら、
郷土料理を味わうという韓食好きならではの楽しみ。

友人の力を借りて、岐阜で満喫してきた。

<お知らせ>
仕事が忙しくHPの更新ができません。
落ち着いたら、まとめて更新したいと思います。
http://www.koparis.com/~hatta/

<八田氏の独り言>
テーマとしては暴投に近いボール球。
悪球打ちが得意な同好の士を求めます。

コリアうめーや!!第205号
2009年9月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com

登録解除用アドレス
http://www.melonpan.net/mag.php?000669



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

 

 
 
previous next