コリアうめーや!!第176号

コリアうめーや!!第176号

<ごあいさつ>
7月になりました。
今年もいよいよ下半期に突入です。
1年は早いもの、と最近しみじみ思いますが、
2008年も折り返し地点とは信じられませんね。
個人的にも激動の1年を過ごしている関係で、
より毎日の流れが速く感じるようにも思います。
振り返れば充実した日々……だといいなと願いつつ。
目先のことをバタバタと片付ける毎日です。
さて、そんな中、今号のメルマガですが、
4月に出かけた全州取材の話を書こうと思います。
3ヶ月遅れでいまさら感もありますが、
仕事としては、形になったばかりでタイムリー。
宣伝も兼ねてということでの裏幕暴露です。
コリアうめーや!!第176号。
多くの人に感謝する、スタートです。

<全州ビビンバ取材とハプニングの裏幕!!>

仕事にハプニングはつきものである。
おそらくどんな仕事にもいえることだろうが、
僕らの行う「取材」というのも波乱含みだ。

特に韓国料理店というのはハプニングが多い。

アポイントをすっかり忘れられている。
肝心の担当者にまるで話が伝わっていない。
足を運んでみたら店がつぶれている。

予想だにしないことがしょっちゅう起こる。

特にアポイントを取る、という行為が微妙で、
ひと昔前などは飛び込み取材のほうがうまくいった。
アポイントを取れば取るほど予定が狂う。

スケジュールをきっちり組みすぎることで、
余裕をなくし、ハプニングに対応できなくなるのだ。

「アポを取るぐらいなら予備日を作れ!」

僕らが経験的に学んだある種の標語である。

しかしここ数年、韓国でも日本の韓国料理店でも、
そうした格言が少しずつ通用しなくなってきた。

どこでもきちんとしたアポイントや書面が求められる。
どうやら韓国の飲食店にもビジネスの波が到来したらしい。
いまでは逆にスケジュールを固めたほうが効率的。
アポイント関連のドタキャンはずいぶん減った。

今年4月に出かけた全州取材も順調だった。

指定された時間に、きちんと担当者が待っている。
取材にも慣れており、どこも協力的であった。

ひとつ予想外だったのは、機材トラブルが起こったこと。

原因不明のアクシデントで、僕らとしても不測の事態。
日本ならば対応もできるが、地方遠征中では限界がある。
カメラマンさんと、知恵を絞ってリカバリーを行い、
なんとか取材続行のメドはたったが、問題がひとつ残った。

「バッテリーの予備をひとつ確保したい」

応急処置なので、長時間の取材に不安が残る。
あいにく今回の取材は韓国の地方を巡っているため、
移動が多く、中間での充電作業がしにくいのだ。

そのため僕らは取材スケジュールの合間を縫って、
カメラ専門店か、大手家電ショップを探すことにした。

幸いにも僕らが訪れた全州は全羅北道の道庁所在地。

取材の趣旨は「韓国の田舎を訪ねる」であったが、
田舎とはいいつつも、それなりに人口も多い。
これぐらいの町ならカメラの専門店もあるはずだ。

そう踏んで、取材先の人や、ホテルマンに話を聞いてみると、
異口同音に某大手家電ショップの名前があがってきた。

曰く、電化製品だったらまずそこに行けば大丈夫!
曰く、そこでは大手カメラメーカーの商品を全部扱っている!
曰く、カメラ本体からレンズ、部品までないものはない!

「大丈夫、大丈夫! 後で行ってみなさい」
「そうですか、よかった!」

と安心した僕らが愚か者だった。

長く韓国に携わった人の間ではよく語られることだが、
韓国人の「大丈夫!」は、えてして大丈夫でないことが多い。

その日の取材を終えて、ノコノコ行ってみると、

「その機種のバッテリーはありません」
「そのメーカー専門の代理店でないとダメですね」
「全州にはそのメーカーの代理店はありません」

という驚愕の事態が待ち構えていた。
目の前が真っ暗になりながらも僕らは冷静に考える。

「むむ、韓国はこれがあるんですよね」
「ですね。韓国人の大丈夫を当てにしてはいけない」
「情報を鵜呑みにした僕らが間違いでした」

僕もカメラマンさんもお互い韓国キャリアは長い。
素直に信じていたのは、どこか浮足だっていたのだろう。

だが、韓国キャリアはここから発揮すればよい。
韓国人の大丈夫を鵜呑みにしないのなら、その逆もあって然り。

「そのメーカーの代理店は全州にない」

という情報も、まずは疑ってかかればいのだ。
と書くと、韓国人のすべてが嘘つきのようにも聞こえるが、
決してそういう意味ではなく、あくまでも国民性の問題である。

日本人であれば自分のよく知らない情報については、
相手に損害を与えないようにと、できるだけ伏せるかぼやかす。
韓国人は相手のために少しでも役に立てばよいと、
自分の知っている情報はどんどん教えてくれる。

ただそれが、たまに(往々にして)間違っているだけなのだ。

ありがたいこともあるが、真実を知って慌てることも多い。
僕らはそれを骨身に染みて体験しているので、
電化ショップの店員さんのセリフが誤解であることを信じ、
さらなる聞き込み、捜索を続けることにした。

だが、我々の努力に比して、結果は芳しくなかった。

何人もの人に尋ね、いくつもの情報に裏切られ、
やはり全州では入手できないのか、と諦めかけた頃。
たまたま乗った、タクシーの運転手さんに問いかけてみた。

「全州にカメラの代理店ってないですよね?」
「カメラ? あるある。繁華街のド真ん中!」
「え、まじっすか!?」

ダメモトでも聞いてみるものだ。
僕らは素早く降りる予定を変更し、その場所に急行してもらう。
道すがら話を聞いてみると、なんとその運転手さんは、
アマチュアの写真家だとのことだった。

僕らは土壇場で最高の人材を引き当てたことになる。

その運転手さんは店まで向かう間、
自分で撮った写真を自慢気に見せてくれた。

全州で撮影するにはどこどこの湖が最高。
この前はあそこの山に行って写真を撮った、などなど。
いきなり饒舌になって、あれこれ語ってくれた。

僕らはその話に耳を傾けつつ、

「さらなるどんでん返しはありませんように」

と祈るような気分で、到着を待った。

果たして。

その代理店は確かに繁華街のド真ん中にあった。
狂喜。歓喜。大喜び。やんやの拍手喝采。
やはり信じるものは報われるのだ。

「全州に代理店はない!」

ときっぱり言い切った電化ショップ店員の顔を思い浮かべ、
ふははははは、ざまあみろ! と心の中で叫んだ。

だが、喜びに浸れたのもつかの間。

せっかく訪れた代理店は、無常にも閉店時間を過ぎていた。
店に近づきつつ判明した、閉ざされたシャッターの存在。
明日また来ればよいのだが、明日は早朝から町を移動して取材。
アポイントもあるため、店の開くだろう時間には来られない。

喜びから一転。再び奈落の底である。

困った。どうしたものか……。
一縷の望みをかけて、店の番号に電話をしてみる。
ルルルル、ルルルル、ガチャ、ルルルル!ルルルル!
店の電話番号から携帯電話へと転送される。

「はい」
「あ、あの今店の前にいるのですが……」

といいかけた瞬間。
運転手さんがさっと僕の携帯を取り上げた。

「もしもし! 日本からの客を乗せたタクシー運転手ですが!」
「機材の不足でどうしても今夜中に必要なものがあるそうです!」
「ぜひ今からでも戻ってきて店を開けてくださいませんか!」

僕らだったら、とても遠慮していえないセリフ。
それを運転手さんは自分のことのように語ってくれた。

運がよかったのは、店のご主人が徒歩5分の場所に住んでいたこと。

話はあれよあれよという間にうまくまとまり、
緊急事態ということで、わざわざ店まで駆け戻ってきてくれた。
あまりの展開に興奮しつつも、どこか茫然としている僕ら。

放心状態のまま、店を開けてくれたご主人に頭を下げ、
求めていたバッテリーを無事に購入することができた。

「ありがとうございます!」
「外国から来てくれたんだ。このくらい何でもないよ」
「本当にありがとうございます!」

ただただ、ありがとうというセリフしか出てこない。
おかげで翌日の取材は、極めて順調に進行した。

以上、全州取材でのちょっとした裏幕である。

正直あのタクシーの運転手さんに出会えなかったら、
翌日の取材がどうなっていたかはわからない。
ひとつのハプニングが、さらなるハプニングを呼び、
より困難な状況に追い込まれていたかもしれないのである。

また、閉店後にわざわざ戻ってきてくれた、
カメラ代理店のご主人にも深く感謝せねばならない。

もちろんこれ以外にも、たくさんの人の世話になりつつ、
僕らの取材というのは結果になっていくものだ。
裏幕は裏幕として、正式な記事にはならないけれども、
なんらかの形で書き残したく、今回メルマガのネタにしてみた。

コリアうめーや!!といいつつ料理の話が出てこなかったが、
それは正式な記事へと続く、ということでご勘弁頂きたい。

媒体は6月21日発売の『韓国語ジャーナル25号』。
すでに発売されており、全国書店で扱っている。

この中で僕は全州ビビンバの魅力を全力で書き綴った。
記事のテーマは「全州ビビンバはなぜ美味しいのか」。
多くの人の助けを得て書いた原稿だけに、
ぜひとも多くの人に読んで欲しいと切に願う。

<お知らせ>
仕事が忙しくHPの更新ができません。
落ち着いたら、まとめて更新したいと思います。
http://www.koparis.com/~hatta/

<お知らせ2>
全州の記事が『韓国語ジャーナル25号』に掲載されています。
全国書店にての販売です。ぜひご笑読頂ければ幸いです。

また、その全州取材を旅行ツアーにする企画があります。
僕が体験してきた、ビビンバの魅力を記事に沿ってなぞる旅。
美味しいビビンバを食べ、コチュジャンの里を巡り、
飲んで食べて遊んで、酔っ払ったりもするツアーです。

僕も案内人兼、参加者として全日程に同行します。
一緒に全州で飲み食いしたいという方、ぜひご参加ください。
詳細な日程、要項などは下記ページにまとめてあります。

<八田氏の独り言>
全州のビビンバは本当にうまいです。
ぜひみなさん一緒に食べに行きましょう。

コリアうめーや!!第176号
2008年7月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com



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