コリアうめーや!!第81号

コリアうめーや!!第81号

<ごあいさつ>
韓国に来ています。
このメルマガは釜山からの配信です。
ソウルにしばらく滞在した後
東洋のハワイと呼ばれる済州島へ移動。
美しい自然の中で、観光を楽しむとともに、
黒豚や、刺身など島の名物料理を堪能しました。
その後、ここ釜山へと移動してきて、
明日からは大邱、水原、などを回り、
またソウルへと戻るつもりです。
帰国予定日は23日。
それまで、うまいもの探しに没頭する予定です。
あと、どれだけ食べられるかなあ……。
さて、今号のコリアうめーや!!ですが、
さっそくこの旅行中に出会った、
うまいものを紹介したいと思います。
ソウルの梨泰院(イテウォン)という町にある、
ちょっとかわった評判の料理。
コリアうめーや!!第81号。
雨の釜山から、スタートです。

<シチューのようなプデチゲとは何ぞや!!>

梨泰院にシチューのようなプデチゲがある。
という話を聞いて、

「なにいぃぃぃぃぃっ!!」

と、背骨が弓なりになるほどのけぞった。
のけぞりすぎて、思わず背骨を脱臼するくらい。
いやいや、危ない。危ない。

「聞いたことのない料理に驚いて、背骨を脱臼しました」

というような人生は、あまりお利口さんではない。
首の骨をゴキゴキならしていて、筋を違えた友人がいたが、
彼に匹敵するくらいの、お間抜けさんになってしまう。

「どうしてこんなところを痛めたんですか?」

と、医者に聞かれたその友人は、

「いや、その。柔道の練習中に受身をとり損ねまして……」

などと苦しい言い訳をしたそうだが、
背骨の脱臼となると、うまい言い訳すらも見当たらない。
ほどほどにのけぞっておいて、本当によかった。

などと、よくわからない話から始まってしまったが、
ともかく本題は「シチューのようなプデチゲ」である。

プデチゲとは、ハムやソーセージなどを入れて作ったチゲのこと。

純韓国風の味付けで作るチゲの中に、
ハムやソーセージといった洋風食材を投入するというのがミソ。
一見ミスマッチとも思えるこの両者が、意外なくらいによく合うのだ。

ハムやソーセージだけでなく、ランチョンミート(スパム)、
チーズ、ベーコン、インスタントラーメンなども入る。
とにかくごった煮感にあふれた料理である。

韓国のどこでも、ごく一般的に食べられる料理だが、
「シチューのような」という表現は初めて聞いた。

シチューといえば、どちらかというとまろやかな印象。
肉や野菜をとろとろになるまで煮込んだ、穏やかな味わいの料理である。
逆にプデチゲのほうは、唐辛子がたっぷり入った刺激的な味。
ごった煮感は同じにしても、味付けのベクトルはずいぶん違う。

この違和感を、日本料理に例えていうならば……。

「シチューのようなオデン」

くらいになるだろうか。
どちらもごった煮感のある料理ではあるが、
両者を一体化させるとなると、ちょっと想像がしにくい。

こってりと濃厚で、ちょっとどろっとしたオデン。

それはそれでうまそうではあるものの、
どう作ったら、そんなオデンができるのか、非常に謎である。
梨泰院にある、シチューのようなプデチゲも同様。

「一体、どんな料理なのだあ!」

というわけで、梨泰院の町まで足を運んでみた。

梨泰院は、ソウルの中部にある繁華街。
外国人が集まるインターナショナルな町として知られ、
その雰囲気はソウルの中でもかなり独特である。

目指す「シチューのようなプデチゲ」は、梨泰院のはずれ。
地下鉄6号線の梨泰院駅から、15分ほど歩いたところにあった。

大通りから、細い路地へと入った静かな場所。
あちこち人に聞きながら、やっとたどり着いたその店は、
食堂というよりも、ただの民家にしか見えなかった。

「え、ここなの?」

控えめな看板と、壁越しに聞える酔客の笑い声がなければ、
店だと気づかないくらいの外観である。

「こんなところで、本当にうまいものが食えるのだろうか……」

少し不安になりつつ、中に入った。

席について、壁に掲げられたメニューを見る。

・牛肉ソーセージ
・七面鳥ソーセージ
・Tボーンステーキ
・ポークチョップ

「むむ、なにかこう、ビアホールみたいだ……」

だが、あくまでも店内の雰囲気は普通の食堂。
キムチチゲやビビンバならいざ知れず、
これらの洋風メニューはあきらかに場違いに思える。

ざざっと見ていくと、「ジョンスタン」という文字にぶつかった。
これである。このジョンスタンこそが、今日の目指す料理。
「シチューのようなプデチゲ」の、正式名称だ。

書籍などによっては、ジョンスンタンとも表記されているが、
店のメニューに順じて、ここではジョンスタンと表記する。
このジョンスの語源は、アメリカの第36代大統領、
リンドン・B・ジョンソン氏に由来するという。

そのジョンスタンをさっそく注文。
ドキドキしながら待っていると、
ほどなくテーブルの上に大鍋が届けられた。

「き、き、きたあーーーーーー!」

さっそく鍋に顔を突っ込むようにしてのぞいてみる。

第一印象。

「うーむ、カラフル!」

赤いスープの中央に、黄色いチーズが敷かれ、
そこに緑と赤の唐辛子が、刻んでトッピングされている。

第二印象。

「うーむ、ボリュームたっぷり!」

2人前という小サイズを頼んだにもかかわらず、
大きな鍋の中に、どっさりの具が入っている。
ゴロゴロと大きな、ジャガイモ、ソーセージの姿も垣間見える。

第三印象。

「うーむ……って、もう我慢できない。食べるぞ!」

と宣言し、鍋の中にお玉を突っ込む。
自分の取り皿に、ざざざざっと具を放り込んだら、
今度は間髪入れず、口の中へと移動させていく。

太いソーセージが口の中でプリプリ。
大きく切られたジャガイモがホクホク。
ほのかに感じる甘みは、キャベツ? タマネギ?
野菜の甘さが、辛いスープに溶け出している。

「チーズを溶かして食べるとおいしいよ」

という店の人の言葉に、慌てて全体をよくかき混ぜる。
刺激的な赤色をしていたスープが、黄色いチーズと混ざり合って、
次第に朱色、オレンジへと変化していった。

「おお、ますますまろやかな感じに!」

オレンジ色になったスープをすすってみると、
まったり、のってりとした味わいが口中に広がった。
濃い。そしてクリーミーな旨味を感じる。

「まったりとして、それでいてしつこくない!」

なんてのは、すでに半ばギャグ化した褒め言葉だが、
そんな手垢のついた表現が、ピタリとはまる味になっている。
もともと辛いスープに、刻んだ青唐辛子がピリリと効いている。

また、普通のプデチゲよりもスープがとろっとしており、
これを「シチューのような」と表現するのは、まさに言い得て妙。
大きくごろんと切られた野菜も、確かにシチューっぽい。

素直な感想を言えば、プデチゲとは一線を画す味。

「シチューのような」までの表現には同意しても、
その後に続く「プデチゲ」という言葉は否定したい。

材料から調理法にいたるまで、確かにプデチゲと酷似しているが、
やはりこれは、似て非なる料理である。

それを別の角度から裏付けるのが、
プデチゲの具としては定番の、インスタントラーメンを入れないということ。
インスタントラーメンを入れると、余計な油が染み出し、
スープの味を損ねてしまうからだ。

プデチゲのイメージで、ラーメンを注文する客もいるそうだが、
店の方針として、絶対に応じないそうだ。

プデチゲにはない、まろやかで風雅な旨さ。
それがジョンスタンの真髄である。

食べる前、ちょっと多いな、と思われた2人前の鍋は、
食べた後、ちょっと少なかったな、という感想に変わった。

ふと気づくと、鍋はものの見事にすっからかん。
ぺろりとたいらげてしまった。

「シチューのようなプデチゲ」

という奇抜な表現に、好奇心から出かけて行ったが、
その期待は、よいほうに大きく裏切られた。
この新たな料理に出会えたことを、素直に喜びたい。

プデチゲのように全国各地で食べられる訳ではないが、
場所の不便を差し引いても、わざわざ足を運ぶにふさわしい料理。
僕はジョンスタンを、大きく評価したい。

梨泰院のジョンスタン。

「むちゃくちゃ、うまぁーいっ!!」

<おまけ>
ジョンスタンという料理の発祥について、店の人に尋ねてみました。ジョンソン大統領が訪韓した際、食事を担当した調理人が、親善の意味を込めて、アメリカの材料を韓国式にして調理したのが始まりだそうです。その料理のレシピを受け継いで出しているのが、梨泰院のこの店ということなのですが、もろもろ書籍などを見ると、信憑性は微妙という感じです。料理の起源はともかくとして、ジョンスタンが梨泰院の町で長く親しまれているのは事実。梨泰院にジョンスタンという珍しい名前の、うまい料理がある。それだけで充分ではないかと思います。

<お知らせ>
ジョンスタンの写真は帰国後にアップします。
帰国予定日は7月23日です。
http://www.koparis.com/~hatta/

<八田氏の独り言>
明日7月16日はホームページ開設の日。
いよいよ4年目に突入します。

コリアうめーや!!第81号
2004年7月15日
発行人八田靖史
hachimax@hotmail.com



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