コリアうめーや!!第49号

コリアうめーや!!第49号

<ごあいさつ>
春の訪れが感じられてきました。
花見の打ち合わせも熱を帯びてきています。
桜の開花予報ににらみをきかせ、
カレンダーの日付を指差し確認。
あれやこれやの予定調整が続いています。
こうしてわくわく待つのも楽しみなんですけどね。
さて、今号のコリアうめーや!!ですが、
全国うまいもの巡りの旅はまだまだ続いています。
ビビンバの里から偽ビビンバの里を経て、
一足飛びに海まで出てしまおうと思います。
日本は4方が海ですが、韓国だって3方が海の国です。
海の恵みをいっぱいに受けた、
韓国の食文化を紹介したいと思います。
コリアうめーや!!第49号。
時系列をぶったぎってのスタートです。

<母なる海から草堂豆腐!!>

――2000年8月 江原道江陵――

「うわっ、すんげえ海きれいじゃん。」
「あったりまえだろ。ここは西海岸とは違うんだからな。」
「きれいだなあ……。海が緑色してるよ。」
「はっはっは。西海岸は灰色だったけどな。」
「そうだねえ……。」

――2003年1月15日 江原道束草――

突然視界が開けて浜辺に出た。
おおっ、と僕は思わず声をあげた。

浜辺が雪で真っ白だったのである。
見ると夕方近い空は少し赤みがかかり、
その間に挟まれた海は抜けるようなブルーであった。

白い浜辺、赤みがかった空、ブルーの海。
それは呆然と立ち尽くしてしまうくらい美しかった。

冬の海なので、浜辺には誰もいない。
誰もいないのに、こんなにも美しい景色が存在しているのだ。
ふと、後ろを振り返ると、太陽が沈みかけている。

もうしばらくすれば、あたりは真っ赤な夕焼けに包まれるのだろう。
僕がこの景色を1人占めしてもよいのだろうか。
そう思った。

――2001年10月 東京新大久保――

「わははは、ハッタ! 草堂豆腐を知っているか?」

料理人志望の留学生が嬉しそうな顔で僕に言った。

「草堂豆腐? なにそれ。知らない。」
「そうかそうか。韓国で1番うまい豆腐だ。」

そう言うと彼はそばにあった紙に草堂豆腐とハングルで書いた。

「チョ・ダン・トゥ・ブ?」
「そうだチョダントゥブだ。江陵に行くことがあったら絶対に食えよ。」
「ふーん。」

――2002年某月 コリアうめーや!!HP掲示板――

「こないだ草堂豆腐ってのを食べたんだけど、これなにかな?
 なんだかとてもうまかったんだけど……。」

――2003年1月16日 江原道江陵――

ビールを飲みながら待っていると、ヨンヤントルソッパプがやってきた。
ヨンヤントルソッパプを日本語にすると「栄養釜飯」となる。
豆や銀杏、ナツメ、高麗人参などが入った栄養価の高い釜飯のことだ。

釜飯、チゲ、焼魚、キムチ、豆腐、その他に細々としたおかずが5品。
もともと皿数の多い韓国にしては、さほど多くない量である。

もちろんこれとて全部を食べきれる量ではないのだが、
釜飯という料理には、20皿以上のおかずがつくことも珍しくない。
それをつまみにビールを飲もうと思っていただけに、少し外された感じが残った。

焼いたサンマが1尾ついていたが、ずいぶん前に焼いたようで冷めきっていた。

「せっかくのビールなのに、つまむものがないなあ……。」

白菜のキムチ、大根のキムチ、ヒラタケのナムル、青唐辛子。
見渡したところ、あとつまめそうなのは豆腐くらいだろうか。

豪快にも1丁丸ごと皿に乗せられた豆腐には、
唐辛子、ネギ、ゴマなどを混ぜた薬味醤油がかけられている。

豆腐を一口食べてみると、ほんのりと温かかった。
口の中に入れて冷たくも、熱くも感じないくらい。
ちょうど人肌程度に温められているようだった。

「なるほど……。」

豆腐はちょっと温かいくらいのほうがうまいのかもしれない。
少し固めの豆腐は、ほんのりとした豆の甘さが感じられる。
気がつくと僕は、他のおかずそっちのけで豆腐を食べていた。

「この豆腐、妙にうまいなあ……。」

と独り言のように呟いたとき、僕はあることに気付きギクッとした。

「ま、まさか。この豆腐、草堂豆腐(チョダントゥブ)じゃ……。」

――2002年2月1日 コリアうめーや!!第22号――

<おまけ>
韓国の北東部に位置する江原道江陵というところには、
きれいな海水を用いて作った豆腐というのがあるそうです。
その名を草堂豆腐(チョダントゥブ)。
ぜひ一度食べてみたいものです。

――2003年1月17日 江原道江陵草堂洞豆腐村――

「サービスよ。これも食べなさい。」
おばちゃんが豆腐を1丁持ってきてくれた。
皿に1丁ぺろりと豆腐だけが乗せられている。

「あ、ありがとうございます。」

この豆腐が実に印象的であった。

豆腐の角をすくい取ると、普通の豆腐よりも固めで、
レアチーズケーキのようなしっかりした感触があった。
決して固くはないが、普通の豆腐のように崩れることもない。

豆腐は昨日と同じく人肌に温められていた。
口に含むと、豆腐の甘さがじわじわと広がっていく。

滑らかな舌触り、濃厚な味。
醤油に負けてしまわないくらいの力強い豆の味がする。
温度の感覚がないので、より味覚が強調されているようだ。

「うまい……。」

昨日もそうだったように、ついつい豆腐だけを連続して食べてしまう。
ごはん、チゲ、キムチなどをすべて置き去りにして、
豆腐、豆腐、豆腐、また豆腐の順番で食べすすんでいく。

豆腐だけを食べていても、まったく飽きがこない。
豆腐だけで夢中になる。こんな豆腐に出会ったのは正直初めての経験だった。

「この豆腐、ほんっとにうまいなあ……。」

僕は小さく呟いた。

――2000年10月15日 初版――

草堂村は全国にその名が轟く。松林の間に「草堂豆腐」の看板を掲げる食堂が10余ヶ所
を越え、「草堂」の文字を浮き彫りにした豆腐を大量生産している工場もある。草堂豆腐
の特徴は豆乳を煮た後に、豆腐として固めるためにニガリを使用せず、海水を入れるとい
う点である。

ファン・キョイク著
『マッタラカルカポダ(味について行ってみようか)』
発行所:デザインハウス

――2003年3月15日 東京自宅――

韓国の東海岸に面した町に江陵というところがあります。
ソウルから東へと伸びる嶺東線の終着駅であり、
夏場には海水浴客が大挙して訪れる有名な観光地です。

江陵の市街地から車で15分のところにあるのが草堂洞豆腐村。
ここで作られる豆腐こそが、食べる者すべてを魅了する草堂豆腐です。

草堂豆腐の特徴はニガリの代わりに海水を用いること。
これによって海の滋養分をたっぷり含んだ、最高の豆腐ができあがります。
普通の海水を使って作ることはできません。
抜けるように青い、美しい海だからこそできる芸当です。

豆腐そのもののうまさもさることながら、
僕が驚いたのは、この豆腐が普通に市場で売られていたことです。
また食堂のおかずとして、さりげなく豆腐が出されていたことです。
ソウルではまずお目にかかれない特別な豆腐ですが、
地元ではなんの変哲もないただの豆腐として扱われていました。

普通に食べる豆腐が、驚くほどうまい。
やけに高価な名物や、観光客しか食べない名物が氾濫する中、
これこそ真の名物と呼ぶにふさわしい姿なのではないかと思いました。

江陵の草堂豆腐。
機会があったらぜひ食べてみてください。

<おまけ>
草堂豆腐村には2種類の豆腐がありました。ひとつはスンドゥブ、もうひとつはモトゥブ
です。スンドゥブとは型に入れて押し固める前の豆腐のこと。モトゥブというのは型に入
れて押し固めた豆腐のことで、つまりは普通の豆腐です。ただスンドゥブというと韓国で
は普通チゲを連想しますが、豆腐村のスンドゥブはまったく違います。透明な汁に入れら
れた淡雪のようにもろもろの豆腐。ぐつぐつ煮えてもいないし、ゴマ油や卵など余計な具
は一切ない。ましてアサリや豚肉の姿などまったく見えない。ただただ豆腐。真っ白いの
が草堂豆腐村のスンドゥブです。これに薬味醤油をかけて食べるのが豆腐村のやり方。豆
腐のうまさを最大限に味わうことができます。

<お知らせ>
草堂豆腐の写真がホームページで見られます。
よかったらのぞいてみてください。
http://www.koparis.com/~hatta/

<八田氏の独り言>
コリアうめーや!!もついに2周年。
次号を記念の号といたします。

コリアうめーや!!第49号
2003年3月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com



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